レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2001/5/20
- 登録日時
- 2011/02/23 02:02
- 更新日時
- 2015/03/29 15:44
- 管理番号
- 愛知県図-01509
- 質問
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和紙がなぜ劣化しにくいか知りたい。
- 回答
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和紙(585.6)や資料保存(014.6)の分野で調べてみると、【資料1~5】が見つかりました。
これらの資料によると、伝統的な手漉き和紙の特徴として、以下のようなものがあげられます。
・原料の繊維が長くて丈夫
・穏やかな製法のため紙の主成分であるセルロースが破壊されない
・楮(こうぞ)などの材料に不純物(リグニンなど)が少ない
・不純物の除去などにあまり薬品を使わないため、薬品の影響で酸化していない
また、紙が劣化する主な原因としては、
・物理的ストレスによる破壊
・熱や光による劣化
・セルロースの酸化による劣化
・酸性の薬品による劣化
などがあげられます。
以上のことなどから、伝統的な和紙は、紙が劣化する原因が起こりにくい製法で作られているため、劣化しにくいようです。
なお、全国手すき和紙連合会のホームページ(http://www.tesukiwashi.jp/p/chigai.htm)を見ると、最近の和紙は、外国産の靭皮原料や過剰に漂白された楮パルプの使用が増えたりして、古来からの手法で作られた和紙を除き、すべての和紙が保存性が良いとはいえないようです。
- 回答プロセス
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【資料1】「Ⅱ紙の劣化」p.42~66によると、紙の劣化は「物理的原因」と「化学的原因」と「生物的原因」の三つに大別できるとある。【資料2】「紙の保存性」p.189~190には、「和紙は始終一貫して温和な作業で作られ、セルロースの損傷は少なく、分子量は高く(つまり分子が長く)、還元性末端基が少なく、それにリグニンもほとんど含まれず、中性か微アルカリ性である。」とある。【資料3】「和紙の科学」p.37~53では、和紙の保存性を機械的な強さと化学的な強さの両面から説明している。【資料4】「和紙の丈夫さ」p.263~266によると、「紙の耐用性は、繊維自身の強さと、それが絡み合った物理的な強さと、繊維間の水素結合による化学的な強さによる。」とあり、和紙はその点について高く評価されている、とある。【資料5】は児童図書で、和紙の保存性や強さについて簡単にわかりやすく説明されている。
また、インターネットを調べると、全国手すき和紙連合会のホームページ(http://www.tesukiwashi.jp/p/chigai.htm)に「和紙と洋紙のちがい」として、和紙が洋紙より永く保存できる理由の説明と、最近の和紙は外国産の靭皮原料や過剰に漂白された楮パルプの使用が増えたりしているため、古来からの方法で作られた和紙を除き、すべての和紙が保存性が良いとはいえないという注意書きがある。
- 事前調査事項
- NDC
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- パルプ.製紙工業 (585 9版)
- 情報資源の収集・組織化・保存 (014 9版)
- 参考資料
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- 【資料1】『紙の劣化と資料保存』鈴木 英治/著 日本図書館協会 1993.7 , ISBN 4820493078 (1106350109)
- 【資料2】『紙と日本文化』町田 誠之/著 日本放送出版協会 1989.11 , ISBN 4140030402 (1105100836)
- 【資料3】『紙!未来に遺す』国立国会図書館/編 日本図書館協会 1998.10 , ISBN 4820498207 (1107622419)
- 【資料4】『和紙の道しるべ』町田 誠之/著 淡交社 2000.4 , ISBN 4473017397 (1107809552)
- 【資料5】『和紙の絵本』とがし ろう/へん,もり えいじろう/え 農山漁村文化協会 2008.3 , ISBN 454007279X (1110223944)
- 全国手すき和紙連合会(http://www.tesukiwashi.jp/p/chigai.htm )(2015.227最終確認)
- キーワード
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- 和紙
- 紙漉き
- 酸性化
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 内容種別
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000079158