レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 登録日時
- 2021/04/30 15:16
- 更新日時
- 2021/04/30 15:18
- 管理番号
- 福参-1170
- 質問
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解決
近代以降、正義という言葉が使われ始めたのはいつ頃で、誰が言い始めたのか。
- 回答
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◆参考資料1『日本国語大辞典 7』p1155に下記記載あり。
「せい-ぎ【正義】(1)『名』正しい道理。正しいすじみち。人として行うべき正しい道義。しょうぎ。
*愚管抄(1220)六・土御門「わが御心には是を正義とのみ思召けるなるべし」の記述あり。<中略>
(2)正しい意義。正しい釈義。しょうぎ。<中略>
(3)プラトン哲学で、国家の各部分がそれぞれに割り当てられたふさわしい役割を果たすこと。アリストテレスでは、広義には合法的であること、狭義には公平であることを言う。<後略>」
◆参考資料2『哲学・思想翻訳語事典』p173に下記の記載はあるが訳者の記載はなし。
「正義 正義とは元来は儒学の用語で、人として踏み行うべき正しい道理の意味である。これがjustice(英)の翻訳語として使用されると、justiceが元来持っていた「裁判」や「公正・平等」という意味がはっきりしなくなってくる。<中略>【翻訳語の意味】『英和対訳袖珍辞書』(1862)には、「justice 正直ナルコト、神妙ナルコト、公事ノ捌キ、捌く人、裁判役人」としてあり、幕末にはまだ「正義」の訳語は確立していなかった。<中略>明治文献では「正義」は、与謝野鉄幹歌集『紫』(1901)の「日本を去る歌」に「能く英国の暴虐に抗して立ち、正義を叫んで二年を戦へり」と表現されている。」
◆参考URL1『あいまいな言葉』朝日新聞社学芸部/編 1957年出版 国立国会図書館デジタルコレクション(https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2484184 74-78コマ 2021.3.5最終確認)に正義についての記載あり。
p146に「正義という概念は、以上に見た通りヨーロッパ風の概念のようである。といっても、日本にないわけではない。しかし、日本人の正義についての考えは(きわめて当然だが)実に日本的な性格を持っている。日本思想史研究者、家永三郎氏(東京教育大学教授)によれば、このことばが英語でいうジャスティスの意味に使われだしたのは、おそらく明治以後だろうとのことだ。むろん、「正義」ということばはあったが、それはたとえば『五経正義』という場合のように「正しい解釈」とか「注釈」という意味である。」の記述あり。
◆参考資料3『経営の正義』
p298-319に正義ということば、ギリシャの正義、プラトンの正義論、正義と東洋思想について記述あり。
p298に「この正義ということばが日本語に熟しましたのは、どうも明治になってからではないかと思います。日本の近代化がはじまりまして、明治の先輩たちが苦心したことの一つは、いろいろの学問に使われている術語をいかにいかに日本語に表現するかということだったと思います。正義という用語も、じつはその一つであると思います。英語の「ジャスティス」(その語源がギリシャ語の「ディケー」でありますが)、これを正義と訳したものであります。」
◆参考資料4『和漢漢語』p23-36に明治期の漢語について記載はあるが、「正義」についての記載なし。
◆参考資料5『翻訳事始』p196
「哲学・倫理学関係の訳語 この方面の訳語は西周と井上哲次郎の創造したものが非常に多い。」の記述あり。
◆参考資料6『哲学字彙 訳語総索引』
明治14年刊の『哲学字彙』井上哲次郎/編の本文と索引、解説がある。
本文p47に「Justice 正義」の記載あり。
◆参考資料7『講座日本語の語彙 近代の語彙』
「開化期翻訳書の語彙」森岡健二/著の中で、西周の訳語について数多く紹介してあるが、「正義」について記載なし。
井上哲次郎の『哲学字彙』について、訳語採用の基準が三つ掲げているとされ、(1)先人の用語から探す(2)古典に典拠を求める(3)他の専門分野の用語を参考にすると記述あり。(1)で、「哲学の場合には、開化後の新しい学問であったため、専門家が少なく、結局は「先輩之訳字」として西周の用語と『英華字典』の用語が多く採用されたと見られる。」の記述あり。
- 回答プロセス
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参考資料1で基本的な意味を確認。
哲学用語として使われていることがわかったため、参考資料2を確認。
「正義」でインターネット検索し、参考URL1が見つかる。
自館検索「正義」で参考資料3が見つかる。
明治時代の翻訳語関係の資料を確認し、参考資料4-7を確認した。
- 事前調査事項
- NDC
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- 辞典 (813 10版)
- 参考資料
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- 小学館国語辞典編集部 /編集. 日本国語大辞典 第7巻 第2版. 小学館, 2001.7. p. 1,155 (当館請求記号 1104689351, 当館資料番号 /813/1R/96-7)
- 石塚 正英 /監修, 柴田 隆行 /監修. 哲学・思想翻訳語事典 増補版. 論創社, 2013.5. p. 173 (当館請求記号 /103/3R/31, 当館資料番号 1107863908)
- 新井俊三 /著. 経営の正義. 六芸書房, 1971. p. 298-319 (当館請求記号 /335//86, 当館資料番号 1100312333)
- 文化庁 /編集. 和語漢語. 大蔵省印刷局, 1980. p. 23-36 (当館請求記号 /C/57/46B, 当館資料番号 1104449628)
- 吉武 好孝 /著. 翻訳事始. 早川書房, 1967. p. 196 (当館請求記号 /801/7/2, 当館資料番号 1100828112)
- 飛田 良文 /編. 哲学字彙 訳語総索引. 笠間書院, 1979.10. p. 47 (当館請求記号 /103/1R/3, 当館資料番号 1102561028)
- 佐藤 喜代治 /編. 講座日本語の語彙 第6巻. 明治書院, 1982.2. p. 63-82 (当館請求記号 /814//14-6, 当館資料番号 1100837820)
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あいまいな言葉.
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2484184 (74-78コマ(2021.3.5最終確認))
- キーワード
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- 正義
- 訳語
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介 事実調査
- 内容種別
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000297729