ツルカンジキの寸法や形態について比較的詳しく説明がある資料は以下のとおりでした。
1. 『奥会津南郷の民俗』 会津民俗研究会/調査 福島県南会津郡南郷村教育委員会 1971
p303に「ツルカンジキ(雪踏みかんじき)」として20行弱の説明がありました。
「普通の輪かんじきより少し大きく、三〇センチメートル~六〇センチメートルくらいの卵型で、その両端に縄紐をつけて足を固定し、さらに前方に一本の縄を結びおき、それを左右各々片手で持ち支えて歩く形式のものである。」
「また円型のものも見受けられる」
「輪は主にしば、または山竹を使用し、横に四本の縄を張り、縦に二本の縄を張ったもので、前後の一部を残して、輪の左右は縄で巻き包んで抵抗を大きくもたせる構造で、その上に足を固定するしかけである。」
2. 『会津只見の生産用具と仕事着コレクション説明資料 [1]』 只見町教育委員会/編 只見町教育委員会 [2003]
p24に「ツルカンジキ(鶴樏)」の説明あり。
「大きな楕円形をしたカンジキで」
「単独では用いられず、その上にコカンジキという二回りほど小さなカンジキを装着して使われる」
「只見地方のものは長径60センチぐらいの大きさだが、隣の南郷村や金山町にいくと一回り小さくなる。新潟県側では、只見地方よりも大きいものが多く、スカリと呼ばれている」
以下は寸法についての具体的な記述がないものの、写真等参考になると思われる記述のあった資料です。
3. 福島県立博物館HP
http://www.general-museum.fks.ed.jp/03_gallery/06_minzoku/06_minzoku.html「ツルカンジキ
南会津郡と大沼郡の山間部は「丈余りの雪」と呼ばれる豪雪地帯で、雪道確保は冬の重要な作業でした。当地方ではツルカンジキやツルという楕円形の大きなカンジキがあります。前方部に綱をつけカンジキを吊り上げて歩くことからこの呼称があると思われます。只見地方には、大雪で進軍できなかった八幡太郎義家が木の枝に舞い降りた一羽の鶴を見てカンジキを考案し、兵士に履かせて敵を破ったという「鶴かんじき」の伝説もあります。」
HPでは写真も公開されています。
4. 『会津の狩りの民俗』 石川 純一郎/著 歴史春秋出版 2006
「ツルカンジキはコカンジキを二周り大きくした装具で、軟らかい雪に足を取られないためにコカンジキの下につけて履く。」
5. 『奥会津地方の山村生産用具 2』 田島町民具研究会/編 田島町民具研究会 1981
p32
図37 図38 がカンジキ。 図37は円形に近いかたちで、縦361[mm] 横342[mm]。材料はタケ、マニラ[紐を指しているようなのでマニラ麻かと推定]、銅線、はりがね、アサ。 図38は楕円形で縦337[mm] 横224[mm]。 材料はジシャガラの木(アブラチャン)、くりの木、マニラ[こちらも紐部分に矢印]、はりがね。
※ツルカンジキの図は見つかりませんでした。
6. 『会津の民具』 鷲山義雄/著 〔鷲山義雄〕 1982
p187
「南会津郡一帯の豪雪地帯では、ゲンベイに樏を履いて雪道を歩き易くしている。雪の浅い時には普通の樏で、雪が深くなれば普通の樏にツル樏を履き、さらに雪が深くなったり、新雪の時は亀樏などを用いた。(伊南)」
「長円形は一般に用いる樏とツル樏と呼ばれる大型で、紐で吊り上げながら使用するものである。これは主に雪踏み用で、遭難や行き倒れなどでどうしても深雪の山に登る時は、最初にツル樏であるいて雪を踏み固め、その後を樏で歩く。」
7. 『会津舘岩村民俗誌』 石川純一郎/著 舘岩村教育委員会 1974
p88 狩猟の解説中にカンジキあり。
「雪中を歩くのでカンジキは離せない。新雪の時は余計ぬかるのでカンジキにツルカンジキという大きなガワ(側)をかける。」
8. 『舘岩村史 第4巻 民俗編』 舘岩村史編さん委員会/編 舘岩村 1992
p258 第5章 第3節 狩猟
「雪中の歩行用具としては、カンジキを携帯する。新雪の際はカンジキの下にさらに大輪のツルカンジキをかける。」
p710 第11章 民具
ツルカンジキの写真がありますが、寸法はありません。
9. 『只見町史 第3巻 民俗編』 只見町史編さん委員会/編 只見町 1993
p70 第1章第2節 4.雪と生活
24道踏み という写真があり、成人がツルカンジキをはいて道踏みをしている写真があり。
p351
第2章第6節 2-(4) 雪の用具
「雪道をつけるツルカンジキ」として6行の説明があります。「だ円形の大型のもので前方にひもをつけ」とありますが、寸法はありません。
10. 『金山の民俗』 金山町教育委員会/編 金山町 1985
p152 衣食住の習俗 の項にカンジキの説明あり。
「あまりにも雪が一時に積もった時は、かんじきだけで雪こぎが出来ないことがある。この時は「つるかんじき」といって、普通のかんじきより遥かに大きな円形に近いものを作り、その前方に長いナワ紐をつけ、これを持ってかんじきを持ち上げるようにして、一足一足雪をこぐのである。」
p151
カンジキの写真が3点あり円形にちかいものもありますが写真ごとに説明がないためツルカンジキかは不明です。
11. 『栗生沢民俗誌』 石川 純一郎/著 南会津町教育委員会 2010
p107-108 ツルカンジキの由来
この項の冒頭に「新雪用のマルカンジキを当地方では広くツルカンジキとも称している」とあります。
p104-106が「雪中の歩行具」となっており、マルカンジキについてふれていますが、寸法や形態の説明、写真はありません。
12. 十日町市博物館HP
http://www.tokamachi-museum.jp/information04.html十日町の積雪期用具(重要有形民俗文化財)としてスカリ(ゴカリ)の写真あり。
13. 『日本常民生活資料叢書 第1巻』 日本常民文化研究所/編 三一書房 1972
この中に収録された「民具問答集」(原本は1937年発行)中にスカリの項あり。
p152に写真があり、長径70cmとなっています。
以下は調査したものの、ツルカンジキの寸法等に関する記述が見つからなかった資料です。
・『図録・民具入門事典』 宮本馨太郎/編 柏書房
p59 カンジキ 2点 千葉県のカンジキ(ハコカンジキ)と山形県のカンジキ(ナンバ)
・『日本民具の造形』 川村 善之/著 淡交社
p149 6.雪踏・かんじき 「ツルカンジキ」はなし。
・『図鑑ふるさとの民具』 小林源重/著 歴史春秋社(製作)
カンジキは見つからず。
・『山に生きた人々』 遠藤輝之助/著 福島出版社
p106 山ことば としてツルカンジキあり。 “雪の時に履く履物 熊狩り 舘岩村”
・『只見おもしろ学ガイドブック』 只見町教育委員会/編 只見町
カンジキ見つからず。
・『伊南村史 第6巻』 伊南村史編さん委員会/編 伊南村
履物 狩猟 林業の項みるもカンジキについての記述みつからず。
・『会津の民俗』 会津民俗舘/編 会津民俗舘
カンジキはあるがツルカンジキなし。カンジキの寸法なし。
・『田島町史 第4巻』 田島町史編纂委員会/編 田島町史編纂委員会
民具の項にカンジキあるが、ツルカンジキなし。
・『桧枝岐村史』 桧枝岐村
カンジキ見つからず。
・『福島県の民俗』 福島県教育委員会/編 福島県教育委員会
p54 仕事と用具の叶津の項につるかんじきあるが詳しい説明なし。
・『雪山川 豪雪地帯の民俗』 足立区立郷土博物館/編 足立区立郷土博物館
カンジキについての項目見つからず ※新潟県についての調査資料です。