①『教育法規スタートアップ』には、いじめ防止対策推進法制定の経緯と趣旨についての記述がある。「2013(平成25)年、いじめ防止対策推進法が成立した。(同年6月28日公布、9月28日施行)。同法が成立したきっかけとして、2011(平成23)年に大津市で起きた中学生のいじめ自殺事件がある。当該事件において、学校および教育委員会の調査およびその結果の公表のあり方が世間から厳しい批判を受けたことが誘因となり、2012(平成24)年の衆議院議員選挙にて各政党がいじめ防止政策を公約として掲げることとなった。その後、安倍内閣のもとに設置された教育再生実行会議が2013(平成25)年2月に公表した第一次提言にて「社会総がかりでいじめに対峙していくための法律の制定」が提言され、いじめ防止対策推進法の成立へとつながった。」
②『大津中2いじめ自殺』には、当時の学校および教育委員会、滋賀県警等の対応についての記述がある。
〈学校・教育委員会〉
・被害者が飛び降りて亡くなった日、父は学校に「そっとしておいて」と伝えた。その言葉を受けて学校や市教育委員会は、「今回は家庭の問題だから」と静観すると決め込んでしまった。
・被害者が亡くなった2日後、いじめをしていた少年の内の一人(A)が、「被害者の親には直接会って話をしたい」と担任に申し出たが、それを制止したため、遺族といじめた生徒や保護者の関係が前に進めなくなった。
・真相解明のために設置された第三者委員会は、いじめをしていた少年の内の一人(B)について、「被害者との間に力関係の差はなく、心理的・物理的攻撃も少ない。被害者が精神的苦痛を感じているとの要件にも当てはまらず、いじめではなかった」として、学校側の認定を「誤り」と批判した。
・市教育委員会は、「自殺の練習をさせられていた」との情報を全校生徒へのアンケートで得ながら、調査を打ち切った。「隠したとはとらえていない」と釈明したが、世間からは「隠蔽」「お粗末な対応」と厳しく批判された。
〈滋賀県警〉
・当初、自殺した被害者の父親の被害届を受理しなかったが、報道で騒ぎが大きくなると中学校と大津市教育委員会を家宅捜索し、生徒二人を書類送検、一人を児童相談所に送致した。県警本部は「市教委の調査に一抹の不安があった」と捜査に踏み切った理由を説明。だが、教育専門家からは「父親が3回も相談していたのに、事件として取り扱わなかった警察の責任は大きい。遅きに失した対応だと言わざるをえない」との批判の声もあがった。
・一方で県警は、容疑と自殺の因果関係について「結論は出ていない」とした。「自殺の練習」については、十分な裏づけができていなかったとしている。