レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2019/2/19
- 登録日時
- 2019/03/21 00:30
- 更新日時
- 2024/03/29 00:33
- 提供館
- 金沢市図書館 (2310230)
- 管理番号
- 玉川-000731
- 質問
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解決
【桂離宮と加賀奉書の関わりについて】 調べ物をしていて、桂離宮の松琴亭に加賀奉書が使われているという情報を得たが、その根拠となる資料はないか。
- 回答
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館内の資料を調べたが、桂離宮(松琴亭)の工事のために加賀奉書が贈られた/使われた根拠となるような一次資料は見つけることができなかった。
以下に調べる過程でわかったことを記録する。
◆加賀奉書について
一般的に、藩政時代に二俣(ふたまた)村で漉かれていた上質紙のこと。加賀藩の御料紙・献上紙として庇護を受けていた。
『金沢美術工芸大学紀要 第36号』(119379514)p.1「加賀奉書における擣紙の研究」
二俣が前田氏指定の御料紙漉き場となった根拠として知られる『御献上紙等御料紙由緒覚書』が引用されている。また、『雍州府志』には越前鳥子紙と並んで最上級の紙だと記述があるとのこと。
→『石川県史 第3編』(118587399)p.931-936二俣の製糸、藩の料紙製造、御料紙由緒(「御献上紙等御料紙由緒覚帳」)について書かれており、文禄元(1592)年に御料紙製造の御用を命じられたことも記載されている。
『和紙 風土・歴史・技法』(11033718)p.64「加賀奉書」
なお、『金沢市史 資料編10 近世8 生産と生活』(119795743)p.137-161に、二俣地域の製紙業に関する史料がまとめられている。
その他加賀奉書(二俣和紙)に関する資料として以下のものがある。
『北陸産紙考』(上下巻)(118400328)(11800685)
『石川県の伝統産業』(119549777)p.265~296「石川の和紙」
『石川県の伝統工芸品産業』(11930353)p.93~98
『加賀の紙』(11824957)
◆桂離宮と前田氏との関わりについて
桂離宮の工事の指揮をとっていた八条宮智忠親王に前田利常の娘・富姫が嫁いでいる。
八条宮に前田氏が財政的な援助をしていたそうなので、その縁で加賀奉書が使用されたかと推測はできるが、根拠となる一次資料は見つけられなかった。
『加賀藩史料 第3編』(11801626)
p.43「(寛永十九年)八月十八日。徳川家光、前田利常の女富姫の将に八條宮に嫁せんとするを以て物を賜ふ。」
p.44「(寛永十九年)八月廿七日。前田利常の女富姫八條宮に嫁せんが為江戸を発す。」
p.827「(萬治二年)十一月十七日。加賀藩より八條宮に贈る物資の支出方法を規定す。」
『百万石の旅』(109234353)p.217-218「桂離宮」
…「さて桂離宮は、元和六年頃から寛永一・二年頃までかかって智仁親王が最初の工事を、寛永十九年から明暦の終頃にかけて、智忠親王が二・三度目の工事を行われました。」「現在のような庭になったのは、前田家の莫大な財政援助を得た智忠親王の意匠力によったものだと云われています。」
『茶室露地大事典』(113631940)p.162「桂離宮」
…「寛永十九年には、智忠親王は加賀藩第三代藩主前田利常の娘富子姫(富姫)と結婚し、前田家からの経済的な助力も得て、再興も進められたのであろう。」
『市史かなざわ 第7号』(119728535)p.85~114「成巽閣蔵「今枝民部留帳之内」について」に、富姫の輿入れと新御殿の造営における前田家の援助についての記述がある。
『熊倉功夫著作集5 寛永文化の研究』(113581973)p.155に御殿造営における前田家の財政援助の可能性について記述がある。
また、前田利常と小堀遠州との関わりから桂離宮について述べた以下の資料もある。
(上記の事典からも、現在では桂離宮は遠州作ではないというのが一般的なようである。)
『加賀百万石と江戸芸術』(118372902)p.108「金沢城本丸茶室」
…ここで著者は、松琴亭の青白市松模様の襖について、「前田家から贈られた加賀奉書紙で造られており、遠州好みと言われる。」と述べている。
『熊倉功夫著作集5 寛永文化の研究』p.156~157に八条宮家の今出川本邸に関しては遠州の指導があったと書かれている。
p.199~216に、小堀遠州と前田利常・光高父子の茶の湯をめぐる交友や関係性について記されている。
◆桂離宮関係の資料(2019.3追記)
『桂離宮』(129652628)p.153~154
『桂離宮』(129295365)p.225~227『三壺記』の記述内容を引き、工事が前田家の後援のもと行われていたことに言及されている(『三壺聞書』(118511630)p.262に該当箇所あり)。
『桂離宮修学院離宮』(129293100)p.128~129「この山荘を作るにあたっては、将軍・家光のお声がかりもあって、加賀の前田家からも相当の資金援助を受けていた。加賀特産の奉書が、うまくインテリアに応用されたわけだ。」とある。
『桂離宮修学院離宮』(112601454)p.86
…「大柄な加賀奉書を貼り合わせたもので、加賀・前田家から婦人を迎えた智忠親王の創意とされるが定かではない。」
『桂離宮茶室整備記録 本文編』(当館に所蔵なし、石川県立図書館に所蔵あり)に、桂離宮の昭和の修理の際の調査記録及び工事記録がまとめられている。P.59の現状調査記録に、「越前奉書を藍染めした紙と、漉いたままの越前奉書を石畳(市松)模様に貼付けており」とある。なお、これらは昭和34年に貼り替えられたものと記されている。P.114の障壁・襖の工事仕様書には、上貼り本紙は越前奉書と記されている。
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
- 参考資料
- キーワード
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000253371