レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2013年9月1日
- 登録日時
- 2013/10/26 13:32
- 更新日時
- 2014/02/08 11:25
- 管理番号
- レファ演96
- 質問
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解決
「グリム童話集」の中のお話とほぼ同じあらすじの古典落語とイタリア歌劇があるらしい。①そのお話が載った本はあるか。②その落語の題名と作者がわかる本はあるか。噺家は誰でもいいがCDの所蔵はあるか。③その歌劇について書かれた本はあるか。全曲でなくてもよいのだがCDの所蔵はあるか。
- 回答
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①について
「死神の名付親」「名づけ親の死神」「しにがみは名づけ親」などの題名で翻訳されているので、所蔵している『グリム童話集』から提供する。
『グリム童話集 4』(学習研究社、1970)など多数あります。
②について
『三遊亭円朝全集 第7巻』(角川書店、1975)、『落語『死神』の世界』(西本晃二/著、青蛙房、2002)など。
CDでは落語の「死神」は多数あります。噺の落(サゲ)によって二つの系統が伝えられており、「死神」を翻案した「誉れの幇間(たいこ)」の所蔵はないのですが、翻案系統(円遊系)の三代目金馬の「死神」があり、解説書に普通の「死神」と異なると記載されています。
③について
図書では『オペラ名曲百科 上』(永竹由幸/著、音楽之友社、1980)の218p「クリスピーノと死神(Chrispino e la Comare)
『オックスフォードオペラ大事典』(平凡社、1996)の212p「クリスピーノと妖精(Chrispino e la Comare)など。
CDでは、『藤原義江全集:我等のテナー:全66曲』の「綺麗な娘:夢幻歌劇「クリスピーノ」より」、『ベル・カント!/スミ・ジョー』の「私はもう本売りのアンネッタではない (歌劇《クリスピーノと死神》より」を所蔵しています。
- 回答プロセス
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当館契約データベース「ジャパンナレッジ」で検索語を「古典落語」and「グリム童話」and「オペラ」として「全文検索」をすると「デジタル大辞泉プラス」に「初代三遊亭圓朝が、グリム童話『死神の名付け親』またはオペラ『クリスピーノと死神』を翻案…初代三遊亭圓遊によって改作されたものは「誉れの幇間(たいこ)…」と出てきます。
ここまでわかれば、後は業務端末で検索、あるいは参考図書等のブラウジングで回答可能と思われます。
- 事前調査事項
- NDC
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- 大衆演芸 (779 9版)
- 参考資料
- キーワード
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- グリム童話
- 古典落語
- 歌劇
- オペラ
- 死神
- クリスピーノと死神
- 椿説蝦夷訛
- ジャパンナレッジ
- 照会先
- 寄与者
- 備考
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作品名が判明すれば、あとは順を追って調査していくだけなので、簡単な問題だったと思いますが、調べれば調べるほど、落語もグリム童話の世界も奥が深いです。落語「死神」が、グリム童話の翻案か、歌劇からの翻案か、歌劇もグリムの歌劇化なのか、創作なのか等、諸説あり、現在も研究されているようで、雑誌記事や論文も数多くあります。
初代三遊亭圓朝(1839-1900)については、関係資料が多くあり、丹念に追っていけば、まだまだあると思いますが、「死神」の由来について書かれたものとしては、下記のような資料があります。
①『三遊亭円朝全集 第7巻』(角川書店、1975)解題は725p
②『落語『死神』の世界』(西本晃二/著、青蛙房、2002)
③『三遊亭円朝 青蛙選書 新版』(永井啓夫/著、青蛙房、2011)270p
④『古典落語と落語家たち』(興津要/著、参玄社、1974)189p
⑤『口演速記 明治大正落語集成 第6巻』(講談社、1980)477p
⑥『古典落語大系 第2巻』(三一書房、1979)160p
⑦『落語のふるさと』(宇井無愁/著、朝日新聞社)249p
⑧『円朝の世界』(岩波書店、2000)14p
「死神」は落(サゲ)によって二系統に分かれるようです(参考文献:①②④⑤⑥)。円朝の作ですが、口演を始めたのは初代円左(1848-1909)であり、この円左系を伝授されたのが二代目金馬(1858-1923:後の二代目小円朝)、後に落の部分を「ああ消えちまった」から「ああ消える」と言葉を直し、しぐさおちにあらためて演じたのが六代目円生(1900-1979)。この円左系(命の蝋燭が消えてしまう陰気なスタイルのもの)を基調に構成さりたミュージカル「死神」もあるそうです。十代目柳家小三治(1936-)も自分のくしゃみで蝋燭を消してしまうという新演出を試みている等、噺家によって様々な脚色があるようです。
別の系統が、初代(実際は三代目)円遊(1850-1907)が「誉れの幇間」又は「全快」と改題したもの(蝋燭を継ぎ足してハッピーエンドになるもの)で、三代目金馬(1894-1964)、四代目金馬(1929-)が伝えています。
余談ですが、初代三遊亭圓朝は、当時の外務大臣井上馨、内務大臣山形有朋、大倉喜八郎らと共に明治19年(1886年)に北海道に視察旅行をしており、『北海道文学全集 第1巻』(立風書房、1979)の先頭に、その時の作品の1つ「椿説蝦夷訛」が所収されています(参考文献③及び『円朝ざんまい』(森まゆみ/著、平凡社、2006)。
最後にCDの検索ですが、作品名、作曲者などキーワードをいろいろ変えて検索してみてください。「クリスピーノと死神」だとCD1件ですが、「クリスピーノ」「リッチ」だと2件ヒットします。
※インターネット情報について:参照(2013-9-1)
- 調査種別
- 文献紹介 所蔵調査 文献紹介 所蔵調査
- 内容種別
- 質問者区分
- 係内演習 図書館
- 登録番号
- 1000139600