レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2016年09月21日
- 登録日時
- 2019/01/29 11:01
- 更新日時
- 2019/01/29 11:08
- 管理番号
- 9000022633
- 質問
-
江戸幕府の役職で「使番」というのがある。当初28人で幕末には112人いたことや、江戸・甲府・駿府に派遣されていることなどをインターネットで見た。寛政以降から幕末にかけてこの役職についた人は分かるか。特に、甲府に来た使番を知りたい。
- 回答
-
「駿府目付」は「毎年使番が年間百日を限って駿府・甲府に出張し行政監督にあたる役職」(『江戸幕府大事典』)で、甲府への派遣は享保10(1725)年から。『甲府城総合調査報告書』には、「駿府御目付名前」(享保10年~安政2年)がある。『静岡市史』2巻には「駿府目付其他」の項目があり慶應3(1867)年までの名前が見られる。『柳営補任』には「御使番」で一覧があり、駿府目付は各人の履歴中に役職名で見られる。
使番は将軍の代替わりの際の臨時の役職「諸国巡見使」にもなったが、天保9(1838)年まで。各回の就任者は『徳川林政史研究所研究紀要』昭和48年度「江戸幕府の諸国・御料巡検使について」を参照。天保9年の巡検使は、甲州文庫の史料料「諸国巡見上使御使番名簿」(マイクロフィルム収録)もあわせて参照。
- 回答プロセス
-
1.『江戸幕府大事典』(大石学/編 吉川弘文館 2009年)で巻末の索引から「使番(幕府)」の掲載箇所を見ていく。
「使番」(p.307-309)に「将軍の指令を受け諸所に上使として派遣された役職」とあり、将軍代替わり時の諸国の巡見使や、幕府直轄地の目付として派遣されていたことがわかる。
「駿府目付」(p.276)は毎年使番が就いて駿府・甲府に巡回している。甲府派遣は享保10(1725)年から。
「巡見使」(p.907)は臨時職で、全国を監察する諸国巡見使に使番が書院番・小姓組との三人一組で就任している。天保9(1838)年まで。
2.国立国会図書館サーチで「駿府目付」を検索すると、『静岡市史』第2巻(静岡市 1931年)がヒット。国立国会図書館デジタルコレクションで図書館送信参加館内公開資料になっている。閲覧すると、第2章第3節「駿府目付其他」に、慶応3(1867)年までの名前があった。
3.『江戸幕府大事典』の「駿府目付」の項に見られた資料「柳営補任」の所蔵があったので(『大日本近世史料 柳営補任』1~6、索引上・下(東京大学史料編纂所編纂 東京大学出版会 1963~1970年))、索引上の「役職名索引」から「使番」で引くと、3巻に「御使番」で名前の一覧がある(p.151-250)。駿府目付での一覧はなく、各人物の履歴中にある役職で見られる。
4.『県指定史跡甲府城跡』下巻(山梨県埋蔵文化財センター編 山梨県 2005年)には駿府目付の一覧はない。「甲府城関連人名索引」(Ⅳ-p.214~251)の分類に「駿府目付」が見られる。出典資料は「駿府御目付名前」で、その刊本は『甲府城総合調査報告書』(Ⅳ-p.6)。
5.『甲府城総合調査報告書』(甲府城総合学術調査団編 山梨県教育委員会 1969年)の「駿府御目付名前」(p.308-310)は史料の翻刻。享保10(1839)年から安政2(1855)年までの名前。
6.『江戸幕府大事典』の「巡見使」の参考文献のうち所蔵があった『徳川林政史研究所研究紀要』昭和48年度(徳川黎明会 1974年3月)所収「江戸幕府の諸国・御料巡検使について」(大舘右喜著)を見る(p.219-236)。実施年ごとの巡見使の名前と国名の表がある。天保9年は諸国巡見使の名前のみ記載(関東9か国の巡見使の行程図はあり)。調査範囲の寛政以降では、天保9年の巡見使が対象となるが、甲斐国に来たか分からない。
7.山梨県立博物館ホームページの「収蔵資料検索」で「使番」で検索すると、「諸国巡見上使御使番名簿」(1837(天保8)年、甲州文庫)がヒット。甲州文庫マイクロフィルムで該当資料を見ると、「土屋一左衛門」の名の上の国名に「甲斐」が含まれる。
- 事前調査事項
- NDC
-
- 日本史 (210 9版)
- 参考資料
-
-
甲府城総合学術調査団 編 , 甲府城総合学術調査団. 甲府城総合調査報告書. 山梨県教育委員会, 1969.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I077389645-00 (pp.308-310) -
山梨県埋蔵文化財センター/編 , 山梨県埋蔵文化財センター. 県指定史跡 甲府城跡 : 舞鶴城公園整備事業に伴う総合調査・整備報告書 下巻. 山梨県, 2005. (山梨県埋蔵文化財センター調査報告書 ; 第222集)
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I005559786-00 (Ⅳ-p.6、pp.214-251) -
東京大学史料編纂所/編纂 , 東京大学史料編纂所. 大日本近世史料 [7−3]. 東京大学出版会, 1964.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I005597893-00 (p.151-250) - 徳川黎明会, 1974.03.30. 徳川林政史研究所研究紀要 昭和48年度 (pp.219-236)
-
大石学 編 , 大石, 学, 1953-. 江戸幕府大事典. 吉川弘文館, 2009.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000010641662-00 , ISBN 9784642014526 (pp.276、307-308、907) - 諸国巡見上使御使番名簿(甲州文庫マイクロフィルム) (km118-168)
-
甲府城総合学術調査団 編 , 甲府城総合学術調査団. 甲府城総合調査報告書. 山梨県教育委員会, 1969.
- キーワード
-
- 使番
- 駿府目付
- 巡見使
- 甲府城
- 照会先
- 寄与者
- 備考
-
国立国会図書館デジタルコレクション(図書館送信参加館内公開)『静岡市史』第2巻(65,68-71コマ)
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/3013769
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000250751