レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2019.7.17
- 登録日時
- 2019/07/17 13:52
- 更新日時
- 2019/08/09 18:35
- 管理番号
- 2019.7-5
- 質問
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解決
「安達太郎」という季語があり、積乱雲の意味だそうだ。なぜ、積乱雲のことを「安達太郎」というのか。
- 回答
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■「安達太郎」の意味のみ記載があったもの
〇『季語季題よみかた辞典』(日外アソシエーツ株式会社/編集 日外アソシエーツ)P142
「積乱雲の地方称。」
〇『季節のことば辞典 四季別・50音順』(復本 一郎/監修 柏書房)P110
「積乱雲の一種で、山の峰のようにそびえ立ったものの異称。入道雲。」
〇『絶滅寸前季語辞典』(夏井 いつき/編 東京堂出版)P79
「「雲の峰」の副題。積乱雲の異名。…ほかにも「坂東太郎・丹波太郎・比古太郎・信濃太郎・石見太郎」のお歴々が勢揃いしていらっしゃる…」
〇『カラー図説 日本大歳時記』(講談社)P436「雲の峰」
「…地方によって固有な名称がついている。武蔵地方の坂東太郎、大阪地方の丹波太郎、九州の比古太郎、その他信濃太郎・石見太郎・安達太郎などである。」
〇『俳句の中の気象学』(安井 春雄/著 講談社)P124
「日本の雷の多発地域は北関東、これを坂東太郎といい、季語にもなっている。このほか丹波太郎の丹波地方、比古太郎の筑後川上流域を中心とする九州北部、信濃太郎の信濃川上流域、石見太郎の中国山岳地方、安達太郎の東北地方山岳部…」
■由来と思われる考察が記載されているもの
〇『積乱雲』(梶山 美那江/編 季節社)P339
「積乱雲はまた各地で坂東太郎、信濃太郎、丹波太郎などと呼ばれてきた。男性的な勢いの強さからいった名前であろう。」
〇『花鳥風月の日本史』(高橋 千劔破/著 黙出版)P245
「…日本人は「入道」のごとく、人格化して親しんでもきた。例えば江戸の方言では利根川の異称と同じく坂東太郎といった。大阪地方では丹波太郎、九州では比古太郎、またそれぞれの地方で信濃太郎、石見太郎、安達太郎などという。」
〇『地名語彙の開く世界』(上野 智子/著 和泉書院)P94-105
「旧国名+太郎」という語形式は、…入道雲の現れる方角を指す」
「入道雲そのものが積乱雲の擬人表現であり、現代共通語ではこの語が一般的であるが、方言として見出される擬人表現法の個別性は場所によって細かく隣接地名を被せるという形式で貫かれている。」
「旧国名+太郎」の命名法は積乱雲を擬人化した呼称である。しかも、生活、とりわけ農業や漁業、瀬戸内海域に特有の塩業など、降水量に大きく左右される生業に携わる人々が突然の雨をもたらす積乱雲を身近に言語表象化したものと考えられる。」
「積乱雲の擬人化は、白い色より、人体にも喩えられる雲の形に着眼点がある。国際雲形符号表によると、積乱雲は部分的に特徴ある形の雲の種類が最も豊富であり、「太郎」の名に似つかわしい。」
〇『地域と伝承』(千葉 徳爾/著 大明堂)P112
「イヨタロウ」→「山口県屋代島で東南方の四国山地に立つ積乱雲をさす。巨大なものに成長するからであろうか。タロウとは長男のことであるが、雲の擬人化によく用いられる。」
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
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- 詩歌 (911)
- 参考資料
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日外アソシエーツ株式会社 編 , 日外アソシエーツ株式会社. 季語季題よみかた辞典. 日外アソシエーツ, 1994.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002341322-00 , ISBN 4816912509 -
復本一郎 監修 , 復本, 一郎, 1943-. 季節のことば辞典 : 四季別・50音順. 柏書房, 2004.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000007457673-00 , ISBN 4760125698 -
夏井いつき 編 , 夏井, いつき, 1957-. 絶滅寸前季語辞典. 東京堂出版, 2001.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000003010425-00 , ISBN 4490105800 -
山本健吉 編 , 山本健吉. カラー図説日本大歳時記 : 座右版. 講談社, 1983.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I066564986-00 -
安井春雄 著 , 安井, 春雄, 1921-. 俳句の中の気象学 : 名句でつづる日本の四季. 講談社, 1987. (ブルーバックス)
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001841259-00 , ISBN 4061326740 -
梶山美那江 編 , 梶山, 美那江. 積乱雲 : 梶山季之-その軌跡と周辺. 季節社, 1998.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002671503-00 , ISBN 4877380337 -
高橋千劔破 著 , 高橋, 千剣破, 1943-. 花鳥風月の日本史. 黙出版, 2000.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002952677-00 , ISBN 4900682551 -
室山敏昭/編 , 野林正路/編 , 室山‖敏昭 , 野林‖正路 , 上野‖智子. 生活語彙の開く世界 2. 和泉書院, 2004.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I028087312-00 , ISBN 4757602405 -
西村 嘉助. 千葉徳爾, 地域と伝承, 1970, 大明堂, 199頁. 1970. 地理科学 14(0) p. 49
http://iss.ndl.go.jp/books/R000000016-I004788574-00
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日外アソシエーツ株式会社 編 , 日外アソシエーツ株式会社. 季語季題よみかた辞典. 日外アソシエーツ, 1994.
- キーワード
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- 安達太郎
- 坂東太郎
- 丹波太郎
- 比古太郎
- 信濃太郎
- 石見太郎
- イヨタロウ
- 積乱雲
- 入道雲
- 雲の峰
- 季語
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介 事実調査
- 内容種別
- 言葉
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000258800