レファレンス事例詳細(Detail of reference example)
[転記用URL] https://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=ref_view&id=1000196800提供館 (Library) | 島根県立図書館 (2110035) | 管理番号 (Control number) | 島根参2016-08-006 | ||||||||||||
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事例作成日 (Creation date) | 2016年08月28日 | 登録日時 (Registration date) | 2016年09月11日 10時04分 | 更新日時 (Last update) | 2019年11月14日 10時25分 | ||||||||||
質問 (Question) | 「食べれる」「見れる」などの「ら抜き言葉」は日本語として正しいのですか。 | ||||||||||||||
回答 (Answer) | 【資料1】『中高生からの日本語の歴史 ちくまプリマー新書 323』(筑摩書房 2019)に以下のように書かれています。 p201~203「文法・語法:ら抜き言葉が広がる」 ・・・この言い方は一九二八(昭和三)年に、東京生まれの人の一部で使われたという記録があります。どうやら大正の末ごろから始まったようですが、これが広まったのは、一九五〇年代からのことでした。ら抜き言葉が広まると、これは日本語を乱しているとして批判されるようになりました。・・・(中略)・・・ しかし、「見る」の場合「見られる」は、受け身・尊敬・自発・可能を同じ語形で表現するので、文章の意味に従ってどの意味なのか判断するしかありません。ここで、可能を表す「見れる」が独立すれば、可能表現であることがはっきりします。 ら抜き言葉は、五段活用動詞で「読む→読める」のように下一段活用の可能動詞形ができたのと同じ変化が、一段活用動詞とカ行変格活用動詞でも起きたのだと説明することができます。ですから、ら抜き言葉は日本語を乱れさせている、と一方的に批判することはできないともいえます。 しかし、そのように説明はできるのですが、まだ本来の規範に沿った形ではないと考えている人もいます。 「ら抜き言葉の現状」(文化庁「国語に関する世論調査」平成二七年度)によると「食べられる」と「食べれる」、「来られる」と「来れる」、「考えられる」と「考えれる」では従来の「られる」型を使うと答えた人の方が多かったのですが、「見られる」と「見れる」、「出られる」と「出れる」ではら抜き型を使うと答えた人の方が多かったと述べています。 また、ら抜き型を使う人の割合が、平成七年度では二七・二%でしたが、年度を追ってじりじりと割合が増えて、平成二七年度では三二%だったとも報告しています。ら抜き言葉が徐々に勢力を強めていることがわかります。・・・ ほかにも、以下の資料に「ら抜き言葉」の定義や解説が書かれています。 【資料2】『辞典<新しい日本語>』(東洋書林 2002) p235~237「ラ抜きことば」 一段活用動詞の可能動詞(渋谷1993)の俗称。東京では使用頻度数の多い、短い動詞から先に普及している。(国広他1984)・・・(後略)・・・ 【資料3】『なぜ言葉は変わるのか』(ナカニシヤ出版 2003) p69-71「ら抜き言葉について」 本章では、文法の変化について扱うことにするが、まず、現代日本語の乱れとして取り上げられる「ら抜き言葉」について考えてみたい。現行の国語表記の基準では認知されていない「ら抜き言葉」も(現在のワープロでも、ら抜き言葉を書くと、丁寧にも波線部が現れるような機能がついている)、言語学的観点からは、次のような理由から、本当にこの表現を、単なる「言葉の乱れ」と考えて良いものなのか、再考の余地があるといえるであろう。・・・(後略)・・・ 【資料4】『日本語文法がわかる事典』(東京堂出版 2004) p286-287「ラ抜き言葉」 定義:本来可能の助動詞「られる」が付くはずの動詞に「れる」を付けて用いる言い方。 補説:(1)ラ抜き言葉はすでに大正時代、地方で用いられていて、昭和初期には東京の山の手で用い始められていた。一九五〇年代以後急速に広まり、「着れる」の使用率は、一九八〇年代生まれの中学生では、全国平均ほぼ五〇%に達していて、地方の使用率は高い。(2)一九九五年版の国語審議会の中間報告にラ抜き言葉が取り上げられているが、解説(3)で説明した利点は認めるものの、「現時点ではラ抜き言葉は認めない」とされた。 【資料5】『世界に通じるマナーとコミュニケーション 岩波ジュニア新書 857』(岩波書店 2017) p78~92「言葉づかいと敬語」に「ラ抜き言葉」として、「これは食べれます」を「これは食べられます」と言い換えるよう書かれています。 文化庁HPに「第20期国語審議会」の記録があり、ラ抜き言葉について以下のように書かれています。 HOME>国語施策・日本語教育>国語施策情報>第20期国語審議会>新しい時代に応じた国語施策について(審議経過報告)>I 言葉遣いに関すること http://www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/sisaku/joho/joho/kakuki/20/tosin03/09.html (最終確認2019/10/11) いわゆる「ら抜き言葉」とは可能の意味の「見られる」「来られる」等を「見れる」「来れる」のように言う言い方のことで,話し言葉の世界では昭和初期から現れ,戦後更に増加したものである。「ら抜き言葉」 (例:「見れる」)を専ら可能の意味に用い,受身・自発・尊敬(「見られる」)と区別することは合理的であり,五段活用の動詞(例:「読む」) における可能動詞(「読める」)と同様に可能動詞形と認めようとする考え方や,「ら抜き言葉」の増加は可能表現の体系的な変化であり,話し言葉では認めてもよいのではないかという考え方もある。書き言葉においても分野によってはその使用例が報告されている。 しかしながら,この言い方は現時点ではなお共通語においては誤りとされ,少なくとも新聞等ではほとんど用いられていない。世論調査(平成7年文化庁) においても,「食べられない/食べれない」「来られる/来れる」「考えられない/考えれない」についてどちらを使うかを聞いたところ,3例とも本来の言い方(「食べられない」「来られる」「考えられない」)を使うという答えが,平均7割を上回った。 国語審議会としては,本来の言い方や変化の事実を示し,共通語においては改まった場での「ら抜き言葉」の使用は現時点では認知しかねるとすべきであろう。さらに, 「ら抜き言葉」については,次のような観点から今後の動向を見守っていく必要があろう。 ① 話し言葉か書き言葉かによっても,違う面があること。 ② 一段動詞全体のどこまで及ぶか。語形の長さや使用頻度,また,活用形によって,「ら抜き」化の程度が異なると思われること。 ③ 北陸から中部にかけての地域及び北海道など,従来「ら抜き言葉」を多く使う地域があるといった地域差の問題を考慮する必要があること。また,近年は東京語自体も様々な地域の言葉の流入によって変化しており,「ら抜き言葉」の方がリズムやスピード感があってよいとする声もあること。 <参考に> 【資料6】『国語に関する世論調査 平成27年度』(ぎょうせい 2016) p95~106 Ⅱ.調査結果の概要>21.「二つの言い方(「れる/られる」「せる/させる」など) 概要版については、インターネット公開されています。 『「国語に関する世論調査」の結果の概要. 平成27年度』(文化庁) http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/11125669 (最終確認2019/11/13) | ||||||||||||||
回答プロセス (Answering process) | |||||||||||||||
事前調査事項 (Preliminary research) | |||||||||||||||
NDC |
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参考資料 (Reference materials) |
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キーワード (Keywords) |
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照会先 (Institution or person inquired for advice) | |||||||||||||||
寄与者 (Contributor) | 備考 (Notes) | ||||||||||||||
調査種別 (Type of search) | 文献紹介 | 内容種別 (Type of subject) | 質問者区分 (Category of questioner) | 社会人 | |||||||||||
登録番号 (Registration number) | 1000196800 | 解決/未解決 (Resolved / Unresolved) | 解決 |