以下の資料から関連の記述を確認しました。
1 所在地について
・『日本の金銀山遺跡』(萩原三雄/編 高志書院 2013)
この資料は、「総論」「第1部 金銀山遺跡の研究」「第2部 甲斐・佐渡・越後」「第3部 東日本」「第4部 西日本」という構成です。
第1部は論文集、2~4部はそれぞれの地方の金銀山の概要や近年の研究成果がまとめられています。
お探しの「しらぎ屋敷」については、第3部「高倉鉱山」の項(p.272-275)にわずかに関連記述が見られました。
『那須のゆりがね』同様の説明とともに、位置の特定に役立つと思われる地理的な記述があります。(p.275)
2 設置時期、技術について
前出の『日本の金銀山遺跡』所収論文で、下野の古代産金一般における時代や渡来人との技術的な関りについて考察されています。(しらぎ屋敷の設置時期について具体的に考証するものではありません。)
p.31-46「古代産金遺跡」(眞保昌弘/著)
p.34‐41「2.下野国の産金」
p.43‐46「5.古代金属生産における特質」※「(2)金属生産と渡来系技術者」の項があります。
なお、『日本の金銀山遺跡』『那須のゆりがね』より、しらぎ屋敷は古代那須郡役所「那須官衙」から派遣された人々の史跡とのことでしたので、この史跡の成立時期についてお調べいただくと時代考証の参考となると思われます。
・『那須官衙の時代 律令期地域社会の移り変わり』(大田原市なす風土記の丘湯津上資料館/編、発行 2015)
なす風土記の丘特別展「第23回 那須の歴史をひもとく」の図録です。
p.18-24「那須官衙の出現」で、成立期について考証されています。
「那須官衙」については、『那須官衙跡関連遺跡発掘調査報告』(栃木県教育委員会 1985)等、埋蔵文化財調査報告書等も多数所蔵しています。
当館ホームページの蔵書検索より「那須官衙跡」で検索いただき、タイトルをご確認ください。
この他、調査の過程で以下の資料を確認しました。
いずれも具体的な技術に触れるものではありませんが、那須地域における産金と渡来人の関係を示唆する記述もありましたので、ご参考までご紹介します。
・『那須の産金を考える』(栃木県教育委員会,栃木県立なす風土記の丘資料館/編 栃木県教育委員会 2011)【館内】
事前調査済みの『那須のゆりがね』の関連資料で、企画展の記念講演会・シンポジウムの報告書です。
各発表者の報告が掲載されています。
p.1-9「地域と時代の画期-那須の産金-」(眞保昌弘氏、なす風土記の丘資料館学芸員)の発表中で、那須の産金に関する渡来系新羅人の影響について、日本書紀の記述や那須周辺からの出土品をもとに考察されています。
他の発表者からの報告でも古代産金一般に関する情報が得られます。
・『日本に残る古代朝鮮 関東編』(段煕麟/著 創元社 1978)
p.147-174「四、下野国における渡来人」にて、下野に入植定着した渡来人について「日本書紀」(※文中では「紀」と表記)の記述をもとに、入植地を古地名から考証しています。
このうち「4.下野国の渡来文化」の項(p.168-174)に、那須郡と寒川郡の渡来文化について記述があり、那須郡の方では冶金を行ったことなどが推測されています。
3 その他
以下の資料は、お調べしましたがお求めの情報を確認できませんでした。
・『日本の中の朝鮮文化 5』(金達寿/著 講談社 1975)
・『古代日本文化と朝鮮渡来人』(権又根/著 雄山閣出版 1988)
・『よみがえる黄金のジパング』(井沢英二/著 岩波書店 1993)
・『古代の鉄生産と渡来人 倭政権の形成と生産組織』(花田勝広/著 雄山閣 2002)
・『冶金考古学概論』(神崎勝/著 雄山閣 2006)
・『日本の金』(彌永芳子/著 東海大学出版会 2008)
・『侍塚古墳と那須国造碑 下野の前方後方墳と古代石碑』(眞保昌弘/著 同成社 2008)
・『渡来の古代史 国のかたちをつくったのは誰か』(上田正昭/著 角川学芸出版 2013)
・『古代の開発と地域の力』(天野努,田中広明/編 高志書院 2014)
・『ブックレット那須をとらえる 4』(那須文化研究会/編 随想舎 2016)
・『東国の古代地域史』(関口功一/著 岩田書院 2016)
・『古代の東国 2 坂東の成立 飛鳥・奈良時代』(川尻秋生/著 吉川弘文館 2017)
・『土木技術の古代史』(青木敬/著 吉川弘文館 2017)
・『モノと技術の古代史 金属編』(村上恭通/編 吉川弘文館 2017)
・『新しい古代史へ 1』(平川南/著 吉川弘文館 2019)
・『渡来系移住民 半島・大陸との往来』(吉村武彦/編 岩波書店 2020)