レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2019年02月05日
- 登録日時
- 2019/06/06 17:09
- 更新日時
- 2019/06/13 13:03
- 管理番号
- 0000110776
- 質問
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解決
幕末に高杉晋作が海上航路による以下の移動を行っているが、その所要時間や行程がわかる資料があるか。高杉の動向がわからなければ、一般的な日程・航路でもよい。
山口県から大阪方面(往復)
山口県から讃岐
四国川之江から下関
下関から松山
- 回答
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高杉晋作が瀬戸内海の航路を使って移動した際の動向について、下記資料1~4の巻末年表等を調査したところ、資料1の年譜により発着の日付が確認できたものは、以下のとおり。
万延元年4月20日:馬関発-5月2日:讃州多度津着(到着日は下記「東帆録」による)
文久元年7月11日:富海発-7月17日午後:大坂着
文久2年8月16日:富海発-8月22日:大坂着
このうち、万延元年4月の動向については「東帆録」という日記があり(資料1に収録)、寄港地など途中の様子も詳しく記載されている。(p38-40)
高杉関連以外の資料では、資料5に『南海瀬戸日記』(嘉永3年)として記された北前船伊勢丸の航程がまとめられて記述されているが、これによれば、5月18日に下関を出て、26日に丸亀港、29日に兵庫に着いている。これにも途中の行程が記載されている。
その他、資料6の飛脚問屋の説明にある記述によれば、下関-大坂間は通常は10日間前後かかっていたが、飛脚問屋の早舟であれば3、4日で連絡した、とあり。
また、資料7で紹介されている古河教泰の日記(享和2年)に出てくる「押切り早船」は借り切りの船で、9月26日昼に下関を出帆し、29日夜に大坂に着いた、とあり。この資料も途中の経路が記載されている。
資料8には、長者丸という廻船の航海日記(天保13年~嘉永6年)の航路と日数をまとめた表が掲載されており、これによれば、下関・兵庫間を3.2日で航海した例、下関・大坂間を9.5日で航海した例とともに、兵庫・下関間を24.2日間かけている航海例も記載されている。
資料9には、富海浦から発していた飛脚船が京都・大坂へ赴く幕末の志士を輸送した事例を各文献から抽出した一覧が載っており、これによると、久坂玄瑞が文久2年3月27日に富海を発し、4月5日に大坂着との記載があり。
四国への海上交通については、これら以外の資料では、資料10に岩国から伊予三津浜へ借切船を出した場合の料金の記載があるが、時間や日数の記載はなし。
資料11『愛媛県史』及び『香川県史. 第3巻 通史編 近世 1』(国立国会図書館デジタルコレクションに収録、図書館送信資料)の近世の海上交通の記述箇所(p213-)も確認したが、『愛媛県史』に嘉永7年に三津-広島間定期航路が開設されたという記載がある程度で周防・長門との航路については特に記載は見当たらず。
香川県史. 第3巻 (通史編 近世 1)(国立国会図書館デジタルコレクション:図書館送信資料 2019年6月6日最終確認)
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/9576501
- 回答プロセス
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高杉晋作の動向について、資料2~3で概要確認、資料1の年表で調査
幕末の瀬戸内海航路について
自館レファレンスデータベースで検索し、類似の事例確認。また、リサーチ・ナビで検索
見つかった資料の所蔵を確認、下記資料のほか、資料9、北前船関連資料(資料8等)を調査し、記述内容や紹介されている参考文献等を確認
『瀬戸内海事典』(北川建次 [ほか]編集委員 南々社 編集 南々社 2007.12)p478-481
『街道の日本史 42』(吉川弘文館 2001.9)p109-118
『街道の日本史 43』(吉川弘文館 2001.12)p73-75
『近世海運史の研究』(柚木学 著 法政大学出版局 1979.4)
『瀬戸内海水上交通史』(柚木学 編 文献出版 1989.8)
『幕末・明治初期の海運事情』(山崎善啓 著 創風社出版 2011.4)p16-18
『古地図・古文書で愉しむ諸国海陸旅案内』(小泉吉永 解読文・現代訳文 人文社 2004.10)
『防府市史 通史 2』(防府市史編纂委員会 編集 防府市 1999.3)p496-,734-
『下関市史 藩制-市制施行』(下関市市史編集委員会 編集 下関市 2009.3)p405-
『幕末・明治初期の海運事情』に記載のあった資料5、資料10を調査、南海瀬戸日記及び岩国室木の定期航路の内容確認
資料9に基づき『防府市史 通史 2』を調査、三田尻と富海の海上交通について記述を確認したが、経路・日数記載なし
資料6、資料11、資料10、『香川県史』(NDLデジタルコレクション)で海上交通の記述を確認、資料6及び『香川県史』には経路・日数ともになし、資料11には内海航路の道程里数、瀬戸内海航路図(p235)があるが、照会事項の説明には使いづらい。記述部分には防長との航路について記載なし。
資料10の早船の記述で資料7の引用あり、資料7を確認
- 事前調査事項
- NDC
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- 交通史.事情 (682 9版)
- 個人伝記 (289 9版)
- 参考資料
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1.堀哲三郎 編集 , 高杉, 晋作, 1839-1867 , 堀, 哲三郎, 1893-1973. 高杉晋作全集. 新人物往来社, 1974.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001235698-00 (下p562-588(年譜)) -
2.高杉東行先生百年祭奉賛会 編. 東行高杉晋作. 高杉東行先生百年祭奉賛会, 1966.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001081339-00 (p475-515(高杉晋作関係年表)) -
3.梅溪昇 著 , 梅渓, 昇, 1921-2016 , 日本歴史学会. 高杉晋作. 吉川弘文館, 2002. (人物叢書 : 新装版)
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000003652325-00 , ISBN 4642052259 (p320-328(略年譜)) -
4.高杉晋作 [著] , 一坂太郎 編 , 田村哲夫 校訂 , 高杉, 晋作, 1839-1867 , 一坂, 太郎, 1966- , 田村, 哲夫, 1924-. 高杉晋作史料 第3巻. マツノ書店, 2002.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000003577620-00 (p408-410(高杉晋作略年譜)) -
5.愛媛県史編さん委員会 編 , 愛媛県. 愛媛県史 社会経済 3 (商工). 愛媛県, 1986.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001814006-00 (p682-684(瀬戸内舟運の変遷と港湾、南海瀬戸日記)) -
6.下関市市史編修委員会 編修 , 下関市. 下関市史 藩制-市制施行. 下関市, 2009.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000010082289-00 (p404(飛脚問屋)) -
7.飯田嘉郎 著 , 飯田, 嘉郎, 1924-. 日本航海術史 : 古代から幕末まで. 原書房, 1980.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001450972-00 (p237-238(瀬戸内海の早舟)) -
8.石井謙治 著 , 石井, 謙治, 1917-. 江戸海運と弁才船. 日本海事広報協会, 1988. (海の歴史選書 ; 2)
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002050463-00 (p273(長者丸の航海範囲、長者丸の航海例の一部)) -
9.富海史談会. 大坂通いで活躍した飛脚船・富海飛船の歴史. 富海史談会, 2014.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I025496223-00 (p57) -
10.岩国市史編さん委員会 編纂 , 岩国市. 岩国市史 通史編 2. 岩国市, 2014.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I025770456-00 (p1446) -
11.愛媛県史編さん委員会 編 , 愛媛県. 愛媛県史 近世 下. 愛媛県, 1987.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001858992-00 (p234-236,239-251) -
12.大村益次郎先生伝記刊行会 編 , 丹/潔 編 , 大村益次郎先生伝記刊行会 , 丹/潔. 大村益次郎 附緑. 肇書房, 1944.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I057608610-00
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1.堀哲三郎 編集 , 高杉, 晋作, 1839-1867 , 堀, 哲三郎, 1893-1973. 高杉晋作全集. 新人物往来社, 1974.
- キーワード
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- 高杉, 晋作, 1839-1867
- 航路--瀬戸内海
- 海運--日本--歴史
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 郷土 人物
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000257048