レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2017年10月09日
- 登録日時
- 2018/08/15 14:07
- 更新日時
- 2018/08/15 14:07
- 管理番号
- 千県西-2018-0004
- 質問
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解決
狂犬病予防法制定当時(おもに昭和10~20年代前半)における狂犬病の発生やその際の官民の対応、法律制定に至る経緯等の実態を知りたい。統計資料などがあればよい。
- 回答
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ご質問の時代の狂犬病に関する統計、発生状況などを詳しく記述した資料には、以下のものがありました。
【資料1】『東京狂犬病流行誌』(上木英人著 時空出版 2007)
1967(昭和42)年発行のものの復刻版です。第2次世界大戦後に狂犬病が流行し始めてから、予防法の制定とワクチンにより終息するまでの経緯を記録しています。当時の発生状況・研究結果・人的被害状況などの様々な統計データを元に、どのように流行が始まり、国や民間で対策が取られ、研究が行われていったかについて記述してありました。
口絵では狂犬病犬・浮浪犬捕獲の様子、予防接種の様子を写した写真や当時の新聞記事が掲載されていました。
【資料2】『東京府下狂犬病流行誌 昭和13年』(警視庁衛生部編 警視庁衛生部 1938)
1938(昭和13)年当時の狂犬病の発生状況や被害状況の統計、流行の概況、対策について記述してありました。都内の狂犬病患者数について、地区別や月別に掲載されています。当時の検査方法や研究過程・結果についても詳しく記述がありました。
こちらは国立国会図書館デジタルコレクション(インターネット公開)でご覧になれます。(http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1222073)
また以下の資料には、狂犬病予防法によって日本で狂犬病が撲滅された経緯が書かれていました。
【資料3】『ヒトの狂犬病 忘れられた死の病』(高山直秀著 時空出版 2015)
p81-87「第5章 狂犬病の流行阻止と根絶 1.日本ではどのようにして狂犬病を根絶したか」
「(2)第2次世界大戦後の流行と狂犬病を撲滅」で、法律制定当時の発症状況や根絶にむけての取組が紹介されています。p88には「第2次世界大戦後のイヌ狂犬病発生件数図(【資料1】『東京狂犬病流行誌』より)」「第2次世界大戦後のヒト狂犬病発生件数図(【資料4】「世界における狂犬病の流行と防疫」より)」の2つのグラフが掲載されています。
【資料4】は国立国会図書館デジタルコレクション(国立国会図書館/図書館送信参加館公開)でご覧になれます。
【資料5】『人獣共通感染症』(清水実嗣監修 養賢堂 2007)
p52-60「狂犬病」
p56に「日本における狂犬病の発生状況(1897~2001年)」のグラフがあります。
【資料6】『人獣共通感染症』(木村哲編 医薬ジャーナル社 2011)
p92「狂犬病 公衆衛生・予防対策」
「わが国では、1920年代と第二次大戦後(1948~1953年)に大きな流行に見舞われたが、ともにイヌへのワクチン接種および放浪犬の捕獲などの対策を強力に行った結果、その後5~10年間で本症を絶滅寸前あるいは絶滅させている」との記述があります。
【資料7】源宣之「狂犬病 その歴史と現状ならびに防疫対策」(『動物臨床医学』16巻2号 2007.6)p27-33
1897年以降の2回の大流行について、どのように鎮静化されていったかが述べられています。またグラフ「日本における狂犬病の発生状況(1897~2006年)」が掲載されています。こちらの資料はJ-STAGEからPDFファイルで本文を閲覧可能です。(https://doi.org/10.11252/dobutsurinshoigaku.16.27)
なお【資料7】と同内容の記述が、【資料8】源宣之「狂犬病の歴史とその現況を基にした防疫対策」にもありました。
【資料9】『狂犬病再侵入 日本国内における感染と発症のシミュレーション』(神山恒夫著 地人書館 2008)
p48-55「第5章 日本の狂犬病」
p50-55で昭和期の狂犬病の流行とその際に取られた措置について記述がありました。
【資料10】『人畜共通伝染病』(村上一[ほか]編 近代出版 1982)
p58-61「1.狂犬病」に、1948-1955年の都内の狂犬病発生状況と診断結果を示した表が掲載されていました。
(インターネット最終アクセス:2018年5月11日)
- 回答プロセス
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・当館の蔵書検索システムを件名「狂犬病」で検索し【資料1】【資料3】が、【資料5】の件名よりヒントを得て件名「人畜共通感染症」で検索し【資料10】が見つかった。
・当館の書架でNDC493.8(感染症)・649(獣医学)付近を確認したところ、【資料5】【資料6】が見つかった。
・【資料3】より国立国会図書館サーチで【資料4】を検索し、デジタルコレクションを確認した。
・リサーチナビを「狂犬病」で検索し、レファレンス協同データベース「狂犬病に関する本はあるか(香川県立図書館)」(https://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=ref_view&id=1000011665)より【資料9】を確認した。
・国立国会図書館サーチをキーワード「狂犬病 歴史」で検索。【資料7】【資料8】が見つかった。
・職員の情報提供を受け【資料2】を確認した。
・以下、関連情報を見つけられなかった資料。
『ペット溺愛が生む病気 しのびよる人畜共通感染症』(荒島康友著 講談社 2002)
『人と動物の共通伝染病 酪総研特別選書』(高島郁夫[ほか]共著 酪農総合研究所 1998)
『動物由来感染症 その診断と対策』(神山恒夫編著 真興交易(株)医書出版部 2003)
『狂犬病予防ガイドライン』(厚生省生活衛生局乳肉衛生課監訳 中央法規出版 1993)
『動物と福祉 介助犬・アニマルセラピーから動物感染症まで』(高柳友子著 明石書店 2004)
『動物の感染症』(明石博臣編集 近代出版 2011)
『人と動物の共通伝染病』(高島郁夫[ほか]共著 酪農総合研究所 1998 酪総研特別選書 No.55)
『エマージングウイルスの世紀 人獣共通感染症の恐怖を超えて』(山内一也著 河出書房新社 1997)
『動物由来感染症 ヒトと動物が健康に生活するための正しい知識』(岡部信彦監修・著 少年写真新聞社 2003 写真を見ながら学べるビジュアル版新健康教育シリーズ)
『ペットから病気がうつる! 知っていますか?ズーノーシス(人畜共通感染症)』(浅野隆司著 国書刊行会 1995)
- 事前調査事項
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『犬の日本史 人間とともに歩んだ一万年の物語 読みなおす日本史』(谷口研語著 吉川弘文館 2012)
「狂犬病予防法の制定をめぐる想い出の数々(田中良男・日本獣医師会顧問)」(http://nichiju.lin.gr.jp/mag/05303/06_08.htm)
「台湾における狂犬病の発生状況(農水省資料)」(http://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/eisei/rabies/pdf/140731_rabies_taiwan_map.pdf)
- NDC
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- 内科学 (493 10版)
- 獣医学 (649 10版)
- 参考資料
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- 【資料1】『東京狂犬病流行誌』(上木英人著 時空出版 2007)(1102043010)
- 【資料2】『東京府下狂犬病流行誌 昭和13年』(警視庁衛生部編 警視庁衛生部 1938)(http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1222073)
- 【資料3】『ヒトの狂犬病 忘れられた死の病』(高山直秀著 時空出版 2015)(1102411627)
- 【資料4】「世界における狂犬病の流行と防疫」(『北里メディカルニュース』17号 1970.10) p2-19
- 【資料5】『人獣共通感染症』(清水実嗣監修 養賢堂 2007)(1102089430)
- 【資料6】『人獣共通感染症』(木村哲編 医薬ジャーナル社 2011)(1102251532)
- 【資料7】源宣之「狂犬病 その歴史と現状ならびに防疫対策」(『動物臨床医学』16巻2号 2007.6)(https://doi.org/10.11252/dobutsurinshoigaku.16.27)p27-33
- 【資料8】源宣之「狂犬病の歴史とその現況を基にした防疫対策」(『公衆衛生』71巻7号 2007.7)(1502234926)p586-591
- 【資料9】『狂犬病再侵入 日本国内における感染と発症のシミュレーション』(神山恒夫著 地人書館 2008)(千葉県内図書館所蔵)
- 【資料10】『人畜共通伝染病』(村上一[ほか]編 近代出版 1982)(9103272980)
- キーワード
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- 狂犬病―歴史
- 狂犬病予防法
- 感染症
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000240688