レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2019/08/21
- 登録日時
- 2019/11/18 00:30
- 更新日時
- 2019/11/18 00:30
- 管理番号
- 6001040090
- 質問
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解決
グリム童話について日本語翻訳の経緯や、当時の時代背景などについて知りたい。
- 回答
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1)日本語翻訳の経緯について
〇『グリム<初版>を読む』(グリム/[著] 白水社 1993.11)
p.149 『西洋故事神仙叢話』に次のような記述があります。
・これは明治20年4月にグリム童話の最初の日本語訳として菅了法(桐南居士)により出版され、「仙獣を逐ふて公子金城に入る」(「金の鳥」)、「シンデレラの奇縁(「灰かぶり」)など11話が収められており、扉にFAIRY TALES TRANSLATED BY SUGE」とあるため英語からの翻訳だと思われる。
・同年呉文聡により『八ッ山羊』(「狼と七匹の子やぎ」)が訳されたが、仕掛け絵本になっていて、狼のお腹の部分の紙をめくると七匹の子やぎが現れるようになっていた。
・明治期の子ども向け雑誌は海外の児童読み物の翻訳の先駆けでもあり、とくにグリムの昔話が多かったが、忠実な訳というよりも子どもに対する教訓を主にした再話が多く、挿絵・登場人物などが日本人化されている。
・最初の全訳は大正13年金田鬼一氏によるもので、第7版(引用者注:原著)までの過程で収録されなかった話も収められており、改訂を重ねて現在でも岩波文庫で読むことができる。
〇『完訳クラシックグリム童話 1』(グリム/[著] 池田香代子/訳 講談社 2000.7)
p.259 訳者あとがき
「大正期に初めて出た日本で最初の全訳」は、改訳をへて現在でも岩波文庫の金田鬼一訳『完訳 グリム童話集』全5冊として読めるが、注釈つきでないとわからないような語彙や言い回しも多く、すでに古典的名訳と呼ぶにふさわしいという記述があります。
2)当時の時代背景について
野口芳子氏の一連の著作が参考になります。
(図書)
〇『グリムのメルヒェン その夢と現実』(野口芳子/著 勁草書房 1994.8)
第8章 グリムのメルヒェンの最初の日本語訳 『西洋古事神仙叢話』について 歴史的背景からの考察 p.112-135
第9章 明治期におけるグリムのメルヒェンの受容 社会的背景からの考察 p.136-163
(論文)
〇野口芳子「グリムのメルヒェンの最初の日本語訳『西洋故事神仙叢話』について」『グリム童話研究』(日本児童文学学会/編 大日本図書 1989.10)p.85-106
〇野口芳子「明治期におけるグリム童話の翻訳と受容 初期の英語訳からの重訳を中心に」『グリムへの扉 カラー図説』(大野寿子/編 勉誠出版 2015.5)p.211-241
〇野口芳子「幕末にヤーコプ・グリムを訪問した日本人について」『グリム童話と表象文化 モティーフ・ジェンダー・ステレオタイプ』(大野寿子/編 勉誠出版 2017.7)p.101-121
そのほか、次の資料も参考になります。
〇『日本におけるグリム童話翻訳書誌(翻訳研究・書誌シリーズ 1)』(川戸道昭/編 ナダ出版センター 2000.7)
・「研究編」では日本における近代児童文学の出発点としてのグリム童話の位置づけや、明治期のグリム童話の初訳について考察が掲載されています。
[事例作成日: 2019年8月21日]
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
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- 小説.物語 (943 10版)
- 教育 (370 10版)
- 参考資料
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- グリム<初版>を読む グリム∥[著] 白水社 1993.11 (149)
- 完訳クラシックグリム童話 1 グリム∥[著] 講談社 2000.7 (259)
- グリム童話研究 日本児童文学学会∥編 大日本図書 1989.10 (85-106)
- グリムのメルヒェン 野口/芳子∥著 勁草書房 1994.8 (112-163)
- グリムへの扉 大野/寿子‖編 勉誠出版 2015.5 (211-241)
- グリム童話と表象文化 大野/寿子‖編 勉誠出版 2017.7 (101-121)
- 日本におけるグリム童話翻訳書誌 川戸/道昭∥編 ナダ出版センター 2000.7
- キーワード
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- その他
- 質問者区分
- 個人
- 登録番号
- 1000265400