レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 20210930
- 登録日時
- 2022/02/16 00:30
- 更新日時
- 2022/02/16 00:30
- 管理番号
- 0400002055
- 質問
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解決
漢詩「懐雲井龍雄」の作者は谷干城(たに たてき/たに かんじょう)とされている。しかし,資料を読むと雲井龍雄と谷干城が同じ師(安井息軒)に学んだ時期は離れていて,交友関係があったとは思えない。
また,漢詩「懐雲井龍雄」は作者不明ともいわれているようなので,本当に谷干城の作品なのか知りたい。
- 回答
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新潟市立図書館で所蔵している資料や国立国会図書館デジタルコレクションで調査。雲井龍雄と谷干城の交友関係について以下の資料で確認した。また,漢詩「懐雲井龍雄」については,作者不明とするものと谷干城作とするものがあった。
(1)雲井龍雄と谷干城との交友関係について
【新潟市立図書館所蔵で記載を確認できた資料】
①『新釈漢文大系 46 日本漢詩 下』(猪口篤志著 明治書院 1972)
p464~466 雲井龍雄の生涯についての記載あり。
p464 15~16行目に谷干城について「息軒の塾は三計塾といい,麹町五番町にあった。門人には谷干城・大東義徹・三浦安・三好退蔵・人見寧・山井清渓などがおり,互いに相切磋した。」の記載あり。
②『日本漢文学大事典』(近藤春雄著 明治書院 1985)
p198 「雲井竜雄」の項目より「同門に谷干城などがあって,互いに切磋した。」の記載あり。
【国立国会図書館デジタルコレクションで確認できた資料】
①『五十名家語録』(鉄華書院 1898) ※図書館送信資料
目次の前文 掲載の語録は執筆されたもの,あるいは直に話を聞いて記述したものである旨の記載あり。
p34~36 谷干城による雲井龍雄に関する記載あり。
これによると谷干城は,「余は雲井と親交ありしにあらず,安井先生(息軒)の門に於いて前後二三回面會したるのみ」と述べている。漢詩「懐雲井龍雄」については「世間では雲井と余と親交ありしかの如く思ひ現に余は左の吊詩を賦して以て其死を惜みたる様傳へられつつあるが是れ實に迷惑千萬の話なり。」,「此詩の何人の手に成りしかは、余の関知せざる所也。」と述べている。
②『偉人の言行』(俣野節村著 大学館 1900)
p168~169 「雲井龍雄」の項目あり。「雲井龍雄と谷干城とは意見が合わず,言葉のみならず腕力で争うことがあり,ともに退塾させられたが,谷干城は後に許された。」という旨の記載があるが,漢詩を手向けた記載はなし。
③『近世偉人百話 [正編]』(至誠堂 1912)
p89~90 「谷干城竜雄を看破す」という項目あり。谷干城が雲井竜雄を危惧し,息軒に度々手紙を書いていたというもの。漢詩の記載はなし。
④『皇国詩集 : 国体観念の涵養 国士青年必誦』(坂梨徳真著 坂梨徳真 1929) ※図書館送信資料
p91 「亡友追懐 雲井龍雄を懐う」という表題で漢詩が掲載され,作者は「谷干城」との記載あり。漢詩の後に谷干城の紹介があり,「壮年時代雲井と親交あり。」との記載あり。
⑤『志士雲井竜雄』(石倉惣吉著 雲井会 1931) ※図書館送信資料
p257 表題なしの書き下し文のみで漢詩の記載あり。また詩の前文に「嘗て安井息軒の門にありて龍雄と同窓であつた谷干城は,後年,往事を追想し左の詩を賦して,亡友龍雄を弔ったと傳へられてゐる。」との記載あり。
⑥『雲井竜雄詩伝』(安藤英男著 明治書院 1967) ※図書館送信資料
p45 「谷干城」の名前があり,当時の安井息軒の許に集まった面々の一人として紹介されている。
p451~452 漢詩の記載あり。また詩の前に「この年の春,嘗て安井息軒の門に龍雄と同窓だった谷干城は,往年を追想して次の一詩を賦し,以て窃(ひそか)に亡友の霊に寄せたのである。」(注:“この年”は直前の内容から“明治4年”と考えられる。)との記載あり。
(2)漢詩「懐雲井龍雄」について
(1)で調査した資料の参考文献を確認した。また,国立国会図書館サーチで「懐雲井龍雄」,「吊亡友雲井龍雄」,「雲井龍雄 谷干城」で検索した。①~⑬の資料は新潟市立図書館で所蔵していないが,国立国会図書館デジタルコレクションで閲覧が可能。
【作者不明とするもの】
①『雲井竜雄事蹟 : 近世傑士』(1883) ※図書館送信資料
序六 「吊亡友雲井龍雄」という表題で,同内容の漢詩の掲載あり。
直後の文中に「欺篇未知何人之所作」とあり,作者不明であると考えられる。
【作者を「谷干城」とするもの】
②『劍舞獨習の友 : 悲壮雄烈』(扇城武士著 文錦堂書店 1894) ※図書館送信資料
54コマ目 「吊亡友雲井龍雄」という表題で掲載あり。
③『英雄心血慷慨詩文』(松邑三松堂 1899) ※図書館送信資料
p218~219 「吊雲井竜雄墓」という表題で掲載あり。
④『剣舞術 : 天下無敵』(日比野雷風 (正吉)著 学友館 1902) ※図書館送信資料
p151~152 「吊亡友雲井竜雄」という表題で掲載がある。
⑤『剣武術 : 武道根本』(日比野雷風 (正吉)著 博文館 1906) ※図書館送信資料
p216 「弔亡友雲井竜雄」という表題で掲載あり。
⑥『朗吟詩集 : 剣舞図解』(松陽堂 1908) ※図書館送信資料
p98 「吊亡友雲井龍雄」という表題で半分まで掲載あり。
⑦『青年朗吟詩集 : 壮絶名士』(岡村書店 1908) ※図書館送信資料
p27 「吊亡失雲井竜雄」という表題で掲載あり。
⑧『名詩朗吟集 : 慷慷悲歌』(本位田鶴吉 1909) ※図書館送信資料
p135~136 「吊亡友雲井竜雄」という表題で掲載あり
⑨『掌中剣舞術・壮絶名士青年朗吟詩集』(河内義光著 岡村盛花堂 1912) ※図書館送信資料
p26 「吊亡失雲井竜雄」という表題で掲載あり。
⑩『神刀流剣武術教本詩集図解』(伊藤正為著 学友館 1912) ※図書館送信資料
p50 「吊亡友雲井龍雄」という表題で掲載あり。
⑪『剣舞術指南』(衝冠居士著 大川屋書店 1916) ※図書館送信資料
p173~174 「吊亡友雲井龍雄」という表題で掲載あり。
⑫『名士朗吟詩集』(盛花堂 出版年不明) ※図書館送信資料
p109 「弔亡友雲井龍雄」という表題で掲載あり。
⑬「日本漢詩翻訳索引」大沼宜規(『参考書誌研究 75号』2011年) ※インターネット公開資料
p132 「谷干城(隈山)」の項目があり,著作に「憶雲井竜雄」が挙げられている。
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
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- 漢詩文.日本漢文学 (919 9版)
- 参考資料
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- 新釈漢文大系 46 , ISBN 4-625-57046-8
- 日本漢文学大事典 , ISBN 4-625-40023-6
- キーワード
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- 雲井龍雄
- 谷干城
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 一般
- 質問者区分
- 一般利用者
- 登録番号
- 1000312175