レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2014年11月27日
- 登録日時
- 2017/03/29 00:30
- 更新日時
- 2022/01/23 13:25
- 管理番号
- 県立長野-14-171
- 質問
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解決
小林一茶が文化十年に作った「むまそうな雪がふんわりふわり」で始まる俳句は、どうして「うまそうな」ではなく「むまそうな」なのか。この時代「むまそうな」というのか。
- 回答
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『日本国語大辞典 第2巻』第2版 小学館国語辞典編集部編 小学館 2001【813.1/シヨ/2】p.409に「うま・い」【旨・甘・味・美】平安以降には「むまし」とある。また、『日本国語大辞典 第12巻』 第2版 小学館国語辞典編集部編 小学館 2001【813.1/シヨ/12】p.1028にも「むま・い」【旨・甘・味・美】⇒うまい(旨) とある。
『一茶秀句選』丸山一彦著 評論社 1975【N913/325】p.116に「54 むまさうな雪がふうはりふはりかな」の句があり、『七番日記』にこの句形で出ていると載っていた。また「うまさうな雪やふふはりふふはりと(隋斎筆紀)」と「むまさうな雪がふうはりふうはりと(文政版句集)」などと、幾度か改作を試みていると記載がある。p.117に「出典 『七番日記』 文化十年閏十一月の作」と載っていた。
『一茶大事典』矢羽勝幸著 大修館書店 1993年【N913/689】p.477-491「著作解題」のうち、p.486の『隋斎筆記(ずいさいひっき)』の項には「巻初に 文化八年 隋斎筆記 抜書」とあり、
夏目成美(随斎)の文化八年における諸国俳人秀句控より一茶が抄録、さらに加えて一茶が文通、
見聞等で得た諸家作品をメモ(後半は地域別に分類)したもの。(-中略-)「化政期俳人句録」と
いう別称もある。
と記されている。これにより『七番日記』は『隋斎筆記』より後に作られたことがわかる。また、小林一茶が『七番日記』の時点では「うまさうな」より「むまさうな」を選んで改作したと思われる。
- 回答プロセス
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1 『一茶秀句選』p.116に「54 むまさうな雪がふうはりふはりかな」の句を確認した。幾度か改作を試みていることがわかる。『七番日記』にこの句形で出ていると載っていた。
2 「むまさうな」が聞きなれない言葉から、「むまい」もしくは「むまし」でNDC分類810の書棚で、江戸時代の言葉の辞典類を調べるも記載なし。
3 『日本国語大辞典 第2巻』第2版を調査。p.409に「うま・い」【旨・甘・味・美】平安以降には「むまし」とも表記と確認。第12巻p.1028「むま・い」【旨・甘・味・美】⇒うまい(旨)と確認。
4 『随斎筆記』が作られた時期を調べることとし、『一茶大事典』矢羽勝幸著 大修館書店 1993【N913/689】で確認。p.486に『隋斎筆記』の作成時期を確認。「うまさうな雪やふふはりふふはりと」より「むまさうな雪がふうはりふうはりと」のほうが後に作られたとわかる。
<調査資料>
・『江戸語東京語の研究』松村明著 東京堂出版 1998 【810/マア】
・『江戸時代用語考証事典』池田正一郎著 新人物往来社 1984 【810.25/イシ】
・『江戸時代語辞典』潁原退蔵著 角川学芸出版 2008 【813.6/エタ】
・『江戸語辞典』大久保忠国編 東京堂出版 1991 【813.6/オタ】
・『日常語語源辞典』鈴木棠三著 東京堂出版 1992 【812/スト】
・『語源辞典 形容詞編』吉田金彦編 東京堂出版 2000 【813.6/ゴゲ/3】
・『現古辞典 現代語から古語を引く』古橋信孝著 河出書房新社 2012 【813.6/フノ】
・『身近なことばの語源辞典』西谷裕子著 小学館 2009 【813.6/ニヒ】
・『新明解語源辞典』小松寿雄編 三省堂 2011 【813.6/コヒ】
・『暮らしのことば新語源辞典』山口佳紀編 講談社 2008 【813.6/ヤヨ】
・『現代語から古語を引く辞典』芹生公男編 三省堂 2007 【813.6/セキ】
・『日本語源広辞典』増井金典著 ミネルヴァ書房 2012 【813.6/マカ】
・『一茶秀句』加藤楸邨著 春秋社 1964 【N913/177】
・『一茶集 古典俳文学大系』小林一茶著 集英社 1970 【N913/268/1】
・『新訂 一茶俳句集』小林一茶著 丸山一彦校注 岩波書店 1991 (ワイド版岩波文庫81) 【N913/962】
・『一茶句集 現代語訳付き』
小林一茶著 玉城司訳注 角川学芸出版 2013(角川ソフィア文庫) 【N913/1276】
・『要説 芭蕉・蕪村・一茶集』日栄社編集所著 日栄社 1964 【N913/970】
- 事前調査事項
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『日本大歳時記』講談社「冬の雪の中に」に「むまそうな雪がふんわりふわり」とあり「ふんわりふわり」の解説はあったが「むまそうな」の解説はなかった。
『一茶の総合研究』矢羽勝幸編 信濃毎日新聞社 p189に「むまそうな雪がふんわりふわり」の句は載っていたが「むまそうな」の解説はなかった。
- NDC
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- 詩歌 (911 10版)
- 語源.意味[語義] (812 10版)
- 語彙 (814)
- 参考資料
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日本国語大辞典第二版編集委員会, 小学館国語辞典編集部 編 , 小学館. 日本国語大辞典 第2巻 第2版. 小学館, 2001.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002966612-00 , ISBN 4095210028 (【813.1/シヨ/2】p.409) -
日本国語大辞典第二版編集委員会, 小学館国語辞典編集部 編 , 小学館. 日本国語大辞典 第12巻 第2版. 小学館, 2001.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000003052601-00 , ISBN 4095210125 (【813.1/シヨ/12】p.1028) -
丸山 一彦/著 , 丸山 一彦 , 丸山 一彦. 一茶秀句選. 評論社. (評論社の新書 106)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I059196248-00 (【N913/325】) -
矢羽勝幸 著 , 矢羽, 勝幸, 1945-. 一茶大事典. 大修館書店, 1993.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002267182-00 , ISBN 4469012378 (【N913/689】p.477-491)
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日本国語大辞典第二版編集委員会, 小学館国語辞典編集部 編 , 小学館. 日本国語大辞典 第2巻 第2版. 小学館, 2001.
- キーワード
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- 小林一茶
- 俳句
- 信州学
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 郷土 言葉
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000213093