レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2022年1月22日
- 登録日時
- 2022/02/08 13:27
- 更新日時
- 2022/02/20 21:20
- 管理番号
- 県立長野-21-228
- 質問
-
解決
日本でワードプロセッサ(ワープロ)が取り入れられた際の価格はいくらか
- 回答
-
※表記について
資料によって「ワードプロセッサー」「ワードプロセッサ」「ワープロ」と異なるため、各資
料の表記通りにした。
日本語ワードプロセッサの1号機とされる東芝のJW-10の価格は630万円。そこから各社の日本語ワ
ードプロセッサの価格は低価格化・小型化が進む。
<図書>
『日本のコンピュータ史』情報処理学会歴史特別委員会編 オーム社 2010【548.2/ジヨ】
第3章 日本のコンピュータの発展 3・6 日本語ワードプロセッサ(ワードプロセッサ)
3・6・4 仮名漢字変換を用いたワードプロセッサの出現 p.132-133
1977年11月から青梅工場での製品開発が始まり,1978年9月製品版JW-10完成の新聞発表を
行った.価格は630万円であった.
3・6・7 ワードプロセッサの発展過程 p.135-136
1980年代前半の大きなトレンドは各社が仮名漢字変換の装備を急ぐか,あるいは既に装備
している場合,さらに変換率を向上させていくことに努力が集中されたことであった.
1980年代中頃になると仮名漢字変換が主要メーカーの全機種に搭載され,したがって小さ
なキーボードで入力できる低価格・ラップトップ型の家庭向けパーソナルワードプロセッサ
が現れた.ブラザーのピコワードのように1984年時点で既に88,000円という低価格で単漢字
表示選択式の製品が存在しているが,ここでは形態素解析を行い,十分な編集機能を持つも
のだけを取り上げる.低価格化の口火を切ったのは,1984年8月富士通から22万円で発売され
たパーソナルワープロOASYS Liteであった.これをきっかけとしてさらに低価格が進行し,
1985年7月には東芝から99,800円のラップトップ型Rupo JW-R10が現れた.この低価格化によっ
て普及が進み,業界の全生産台数は約100万台に達した.こうして,規模のメリットによる更
なる低価格化へと進む.1986年11月には富士通から大型液晶画面を装備したOASYS 30AFが発
表される.パーソナル機とはいえ価格は248,000円で,超低価格・抵機能路線からリースナブ
ルな価格で高機能を狙う路線への回帰が始まり,多彩な選択肢が提供されるようになった.
この年,生産台数は200万台を突破する.(中略)
1987年に入ると,パーソナル機の高性能化が進み,シャープ(WD-540)からAI変換機種が
発売された.1989年には,年間出荷台数が過去最大の271万台を記録し,累積販売台数は1000
万台を突破したが,その後年間販売台数は減少していった.
(後略)
『現代用語の基礎知識』自由国民社【031/10/‘87】
p.940-941 日本語ワードプロセッサ(俗称ワープロ)の項目
(前略)
六〇年度に一〇万円を切るポータブル・ワープロが出現し、爆発的に普及が始まり、六一
年度には、さらに三万円台の低価格品が出現し、出荷も年間二〇〇万台に近付く勢いとなった。
(後略)
<論文>
天野真家、森健一「漢字・日本語処理技術の発展:日本語ワードプロセッサの誕生とその歴史」
『情報処理』Vol.43 No11 pp.1217-1225(2002)連載:日本の情報処理技術の足跡
(前略)
JW-10以降のWPの歴史は,小型化,低価格化の歴史であるといって過言ではない.1980年代
半ばすでに,1行とはいえモニタは液晶化し,形態はポータブル化し,価格もJW-10の630万円
から10万円を切るまでになった.
(後略)
※上記論文はサイト「情報処理学会電子図書館」で公開されている。(最終確認日:2022年2月4日)
当時の価値感覚の参考として、和文タイプライター、公務員の初任給、白米の値段を紹介する。
『戦後値段史年表』週刊朝日編 朝日新聞社 1995【337.82/シユ】
和文タイプライター p.223
1976(昭和51)年 258.000円
1980(昭和55)年 323.000円
公務員の初任給 p.77
1977(昭和52)年 9.1900円
1978(昭和53)年 9.4600円
白米 p.170
1977(昭和52)年 3.000円
1980(昭和55)年 3.235円
※(東京における標準価格10kg当たりの小売価格)
<新聞>
当時の新聞記事を新聞データベースで検索すると、新製品ワードプロセッサーの広告記事が多数ヒ
ットする。一部を紹介した。
・信濃毎日新聞 1987(昭和62)年3月19日 朝刊6ページ 経済面
「新製品=カラー印刷ワープロ・キャノン、ビデオプリンター・シャープ」
・毎日新聞 1987(昭和62)年2月13日 東京朝刊 8ページ 経済
「東芝がイラスト、地図表を入れられるワープロ発売」
・毎日新聞 1987(昭和62)年9月11日 東京朝刊 8ページ 経済
「富士通が32ビットのパソコン機を発表。いよいよ32ビット時代」
・朝日新聞 1987(昭和62)年2月25日 東京/朝刊 8ページ
「9インチCRT採用のパーソナルワープロ_新製品」
・朝日新聞 1987(昭和62)年9月2日 東京/朝刊 10ページ
「バーコード入力のワープロ_新製品」
・中日新聞 1987(昭和62)年9月15日 7ぺージ 朝刊経済面
「情報コーナー/ ★分離型の小型ワープロ」
<参考レファレンス事例>
管理番号:県立長野-21-227 「日本でワードプロセッサが使用され始めたのはいつか」
管理番号:県立長野-21-229 「ワードプロセッサは日本でどの程度普及したか」
- 回答プロセス
-
1 当館の蔵書検索で所蔵資料を調べる。キーワード「ワードプロセッサ」「ワープロ」
日本十進分類法582.33(ワードプロセッサ)類の資料ヒットなし。範囲を広げて582類の資料を
調べる。
『キーボード配列QWERTYの謎』安岡孝一著 NTT出版 2008【582.3/ヤコ】
初期の海外のタイプライタの記述はあるが、日本語入力のタイプライタの記述はなし。
『パソコンは日本語をどう変えたか』YOMIURI PC編集部著 講談社 2008【007.63/ヨミ】
ソフトウェアのワープロ中心。現代用語の基礎知識の説明にもあった森健一の日本語ワード
プロセッサーの開発話あり。
2 国立国会図書館サーチで調べる。キーワード「ワードプロセッサ」
ヒットした資料が当館に所蔵あるか確認、所蔵資料を調べる。
『人類の歴史を変えた発明1001』ジャック・チャロナー編 ゆまに序棒 2011【507.1/チジ】
1ページ程度の説明あり。
『日本のコンピュータ史』情報処理学会歴史特別委員会編 オーム社 2010【548.2/ジヨ】
上記回答の記述を見つける。
3 『日本のコンピュータ史』p.133に記述があった情報処理学会のウェブサイト「コンピュータ博物館」
を確認する。(最終確認日:2022年2月6日)
『日本のコンピュータ史』p.137参考文献の所蔵を調べる。
上記回答の論文「漢字・日本語処理技術の発展:日本語ワードプロセッサの誕生とその歴史」
を見つける。
4 『現代用語の基礎知識』自由国民社【031/10/】で、ワードプロセッサーの項目を調べる。
5 当館契約の新聞データベースで調べる。キーワード「ワードプロセッサ」「ワープロ」「タイプ
ライタ」で見出し語または本文検索する。
多数の新聞記事がヒットする。
使用した新聞データベース
・信濃毎日新聞データベース
・聞蔵Ⅱビジュアル(朝日新聞)
・毎索(毎日新聞)
・中日新聞・東京新聞記事データベース
・日経テレコン(日本経済新聞社)
・ヨミダス歴史館(読売新聞)
6 当時の価値感覚の参考のために『戦後値段史年表』週刊朝日編 朝日新聞社 1995
【337.82/シユ】を紹介する。
<調査資料>
『近代用語の辞典集成 8』大空社 1994 【031/225/8】
『人類の歴史を変えた発明1001』ジャック・チャロナー編 ゆまに書房 2011【507.1/チジ】
『電脳辞書の国語学 ワープロ日本語変換の徹底検証』箭内敏夫著 おうふう 1994【007.6/202】
『日本の電子計算機 1995』日本電子工業振興協会情報産業部第1課 1995【548.2/31/‘95】
『コンピュータガイドブック 1996 日本の電子計算機』日本電子工業振興協会情報産業部第1課
1996【548.2/31/‘96】
『キーボード配列QWERTYの謎』安岡孝一著 NTT出版 2008【582.3/ヤコ】
『パソコンは日本語をどう変えたか 日本語処理の技術史』YOMIURI PC編集部編 講談社 2008
【007.63/ヨミ】
『値段史年表 明治・大正・昭和』週刊朝日編 朝日新聞社 1988【337.82/アサ】
『日本統計年鑑』総務庁統計局編 日本統計協会【351/104】
『全国物価統計調査報告』総務庁統計局編 日本統計協会【337/143】
『小売物価統計調査年報』総務庁統計局編 日本統計協会【337/140】
『消費者物価指数年報』総務庁統計局編 日本統計協会【337/120】
以下の語は、当館契約データベース「ジャパンナレッジ」で検索。
ワードプロセッサとは
『日本国語大辞典』
コンピュータによる文書の作成装置。キーボードからの入力による文字がディスプレーに表示・
変換され、プリントアウトもできる機械。ワープロ。
『情報・知識imidas』
(1)【IT関連用語】【コンピューター】文章の作成・編集・印字に使うアプリケーションソ
フト
(2)【IT関連用語】【コンピューター】文書作成機.文章を編集・加工・印字するための機
器.ワープロ.
タイプライタとは
『日本大百科全書(ニッポニカ)』
活字を一字ずつ鍵盤(けんばん)を押して印字し、文書を作成する書記機械。欧文タイプライ
ター、仮名タイプライター、和文タイプライターがある。
活字を使用するため、鮮明な印字が得られるのが特徴である。
和文タイプライタとは
『デジタル大辞泉』
日本語用のタイプライター。大正4年(1915)、杉本京太が考案。邦文タイプライター。
- 事前調査事項
- NDC
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- 事務機器.家庭機器.楽器 (582)
- 言語生活 (809)
- 参考資料
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自由国民社. 現代用語の基礎知識 1987年版. 自由国民社, 1987.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001854870-00 -
情報処理学会歴史特別委員会 編 , 情報処理学会. 日本のコンピュータ史. オーム社, 2010.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000011018874-00 -
週刊朝日 編 , 週刊朝日編集部. 戦後値段史年表. 朝日新聞社, 1995. (朝日文庫)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002428561-00
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自由国民社. 現代用語の基礎知識 1987年版. 自由国民社, 1987.
- キーワード
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- ワードプロセッサー
- ワープロ
- タイプライタ
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介 事実調査
- 内容種別
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000311891