レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2021年3月19日
- 登録日時
- 2021/03/13 15:43
- 更新日時
- 2021/03/24 22:03
- 管理番号
- 県立長野-20-114
- 質問
-
解決
長野県警察山岳遭難救助隊の発足はいつか
- 回答
-
長野県警察山岳遭難救助隊は昭和41年4月1日付で、「長野県警察山岳遭難救助隊の運用に関する訓令」に基づき長野県警の正規組織として発足している。『信濃毎日新聞』昭和41年4月13日2版 7面に「山岳遭難救助隊 県警内に正式発足」という記事があり、
「県警は十三日、本部内に山岳遭難救助隊を正式の組織としておくことをきめ、外勤課員と機動隊員を中心に十六人を隊員として発令した。-(中略)-常設の山岳遭難救助隊を警察が持つのは全国ではじめてである。-(後略)-」
と記している。
また、『山岳遭難の実態と遭難対策のあゆみ』によれば、記録に残っているパトロールは、昭和35年7-8月の穂高連峰と後立山連峰で行ったものとしている。「長野県警察山岳遭難救助隊」の前身である「長野県警察山岳パトロール隊」は、夏山シーズンに各警察署が署員や機動隊員をパトロールに割り振っていたと考えられる。
利用者が事前に確認したウィキペディアの記事は昭和29年(1954年)に、県警で初めて山岳遭難統計を記録し、組織的な遭難対策をスタートさせることを始まりとしていると思われる。ただし、このウィキペディアの記事は残念ながら出典が明記されていないため、情報を確認することができない。
『山岳遭難の実態と遭難対策のあゆみ』p.1-13に年表がある。関係部分を抜き書きすると、
昭和29年 県警で初めて山岳遭難統計を記録し、組織的な遭難対策をスタートさせる
昭和30年6月 北アルプス南部(槍・穂高連峰)を中心とした「北アルプス登山者遭難対策協議会」
及び「登山者遭難者救助隊」を設立
昭和31年2月 北アルプス北部(後立山連峰)を中心とした「北アルプス遭難対策会」設立
昭和33年7-8月 豊科・大町署が「遭対協」と協力して夏山の山岳パトロールを実施
昭和33年8月 八ヶ岳を中心とした「諏訪遭難救助対策協議会」設立
昭和33年12月 上記3つの「遭対協」を傘下に「長野県山岳遭難防止対策協議会」設立
昭和34年7月 県警機動隊員2名を豊科署員2名、涸沢に常駐。夏山の事故発生時の連絡にあたる
昭和35年7-8月 長野県警察は、涸沢及び白馬岳を基地とし、
穂高連峰と後立山連峰の山岳パトロールを初めて行う
※記録に残っている組織的な山岳パトロールはこの年が最初。
正式名称はなく「長野県警察山岳パトロール隊」と呼称された。
(「長野県警察山岳遭難救助隊」の前身)
※これとは別に、木曽、諏訪・臼田、丸子、松本の各署でも、
警察署計画による山岳パトロールを実施
昭和38年6月 「長野県山岳遭難防止対策協議会」設立
(長野県山岳遭難防止対策協議会を発展的に解消)
県内12地域に地区山岳遭難防止対策協会設立
夏山シーズン(7月-8月)に、遭難防止常駐隊(山岳ガイド/山岳経験者等)による
山岳パトロール(穂高連峰)を初めて実施
昭和40年7月 夏山シーズン(7月-8月)に、白馬、唐松、キレット、烏帽子において
遭難防止常駐隊による山岳パトロールを初めて実施
昭和41年4月 「長野県警察山岳遭難救助隊」が正式(訓令を制定して)に発足
となる。『アルプスに賭けて-パトロール隊日記-』p.236-242の記述では、
昭和30年6月 北アルプス登山遭難救助防止対策協会
昭和31年2月 北アルプス遭難対策会
昭和32年8月 諏訪遭難者救助対策協議会
昭和33年12月 上記3団体を傘下に 長野県山岳遭難防止対策協議会 設立
昭和34年7月 県警救助隊夏山パトロール開始 穂高連峰/白馬岳
昭和38年6月 長野県山岳遭難防止対策協議会発足
(長野県山岳遭難防止対策協議会を発展的に改組)
県内12地域に地区山岳遭難防止対策協会設立
(県・市町村・交通機関・山岳関係機関・団体)
遭難防止常駐隊(山岳ガイド/山岳経験者等)設置 7月上旬から8月下旬に活動
昭和40年7月 白馬、唐松、キレット、烏帽子の各小屋に常駐隊を設けパトロールを始める
昭和41年4月 長野県警察山岳遭難救助隊を正式(訓令を制定して)に県警の組織として発足
となる。また、『レスキュー最前線-長野県警察山岳遭難救助隊-』長野県警察山岳遭難救助隊編 山と渓谷社 2011【N786/215】p.10では
昭和30年 北アルプスなど各山域を管轄する「遭対協」がそれぞれの地域設立
昭和34年夏 遭難に備えて初めて涸沢に常駐(ただし連絡員として)
昭和35年 涸沢と白馬岳を拠点に「長野県警察山岳パトロール隊」による夏山パトロールが
初めて実施される
昭和41年4月 パトロール隊を改編し「長野県警察山岳遭難救助隊」発足
となっている。
『アルプスにかけた汗と涙と』に、p.61-143で歴代隊長と隊員の手記が掲載されている。しかし、隊として初パトロールの様子や、初の遭難救助について記されてものではない。また、個々の遭難については、『山に祈る』『やまあればこそ』などに、家族の手記などが掲載されている。
- 回答プロセス
-
1 事前調査されている資料を見て、記述を確認する。p.234-の「県警救助隊のあゆみ」を確認する。
2 長野県の山岳救助に関することなので、郷土分類N786登山 に関する書架で、長野県警察山岳遭難救助隊についての資料を探す。
3 当館契約の「信濃毎日新聞データベース」で「山岳」「遭難」等で検索する。山岳パトロールについての記事(昭和37年8月22日夕刊 3面)、長野県山岳遭難防止対策協議会設立についての記事(昭和33年12月27日朝刊7面 )、長野県警察山岳遭難救助隊発足(前述)の記事などが見つかる。
<調査資料>
・『空飛ぶ山岳救助』羽田治 山と渓谷社 1998【N786/160】
・『山岳遭難の実態と遭難対策のあゆみ』長野県山岳遭難防止対策協会ほか編・刊 1985【N786/101】
・『山岳遭難の実態と遭難対策のあゆみ 昭和29年-平成8年』
長野県山岳遭難防止対策協会ほか編・刊 1997【N786/101b】
・『長野県における山岳遭難の実態』長野県山岳遭難防止対策協会 1964【N786/14/1】
・『アルプスに賭けた汗と涙と-長野県警察山岳遭難救助隊30周年記念誌-』長野県警察本部外勤課 1990【N786/115】
・『山に祈る』長野県警察本部編 長野県山岳遭難防止対策協議会 1959【N786/13】
・『やまあればこそ』長野県警察本部編 二見書房 1966【N786/17】
- 事前調査事項
-
『アルプスに賭けて-パトロール隊日記-』長野県警察山岳遭難救助隊編 二見書房 1972【N786/37】
Wikipedia「山岳警備隊」 長野県警察山岳遭難救助隊
- NDC
-
- 戸外レクリエーション (786 10版)
- 参考資料
-
-
長野県警察本部防犯部外勤課編 , 長野県警察本部防犯部外勤課 , 長野県山岳遭難防止対策協会. 山岳遭難の実態と遭難対策のあゆみ. 長野県山岳遭難防止対策協会, 1989.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000096-I002237104-00 (【N786/101a】p.1-13) -
長野県警察山岳遭難救助隊/編 , 長野県警察本部. アルプスに賭けて : パトロール隊日記 改装版. 二見書房, 1976.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I027658043-00 (【N786/37】p.236-242) -
長野県警察山岳遭難救助隊編 , 長野県警察山岳遭難救助隊. レスキュー最前線 : 長野県警察山岳遭難救助隊. 山と渓谷社, 2011.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000096-I010684890-00 , ISBN 9784635171786 (【N786/215】p.10)
-
長野県警察本部防犯部外勤課編 , 長野県警察本部防犯部外勤課 , 長野県山岳遭難防止対策協会. 山岳遭難の実態と遭難対策のあゆみ. 長野県山岳遭難防止対策協会, 1989.
- キーワード
-
- 山岳遭難
- 山岳遭難救助
- 長野県警察
- 北アルプス
- 涸沢
- 信州学
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000295224