事典類をいくつか調べたが、「物語画」という項目は見つからなかった。インターネットで検索すると関連語として「歴史画」がヒットしたため、「歴史画」の項を調べたところ、
①には「絵画の一分野で、一般に、歴史上の事件や特定人物の営為を題材としたものをさすが、伝説に取材した絵画を含めていうこともある。(中略)ルネサンス期以降、歴史画は、神話ないし宗教的主題をもつ絵画を含めていわれるようになる。すなわち、イタリア語のイストリアistoria、ストリアstoria(〈歴史〉〈物語〉の双方を意味する)のある絵画である。」とあった。
また、②には「歴史上の出来事を題材とした絵画。広くは神話・伝説中の事件を描いたものも含まれ、また作者と同時代の事件を描いた事件画と称せられるべきものときに含められる(以下略)」とあった。
次に「物語」「絵画」というキーワードで蔵書検索し、所蔵資料をいくつか当たったところ、③に「十八世紀までは、物語画の大半は歴史ではなく、古典文学、聖書、聖人伝、あるいはもっと後の時代の騎士道をテーマにした叙事詩などを発想源としていた。これらの主題はどれでも『歴史画(history painting)』に描かれうる。というのも、この英語の言い方は、storyを意味する古いイタリア語のistoriaをフランス語経由で誤訳したものだからである。ルネサンスのあいだに、『イストリア』は、精神を高揚させるような立派な物語画、というタイプを意味するようになった。題材は事実でも虚構でもかまわない」とあった。
また、④には、「歴史画」と「物語画」について、「日本語の多くの書籍で『歴史画』と訳されている『history painting』だが、『ヒストリー」の語源となった、古代ギリシャ語のヒストリアや古いイタリア語のイストリアには、もともとは時間意識がなく、本来は『物語』という意味であった。つまり、『歴史画』と訳されている絵画は、『歴史主題』だけでなく『宗教主題』や『神話主題』『文学主題』を含む物語性のある絵画で、『物語画』と訳すべきところの誤訳なのである」との記述があった。
上記2冊には、物語画が解説付きでいくつか掲載されていたため、「物語画」についての記述を紹介するとともに、この2冊を提供した。