レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2022年07月20日
- 登録日時
- 2022/08/26 17:50
- 更新日時
- 2022/09/13 22:13
- 管理番号
- 県立長野-22-094
- 質問
-
解決
『報知新聞』連載の講談「徳川栄華物語」(松林伯知/しょうりん はくち)および小説「食道楽」(村井弦斎)の挿絵画家はそれぞれ誰か。また、それぞれの連載期間、掲載日も知りたい。
- 回答
-
1 「徳川栄華物語」について
(1) 挿絵画家 高橋広湖(たかはし こうこ)と思われる。
(2) 連載期間 明治38(1905)年11月13日から大正3(1914)年11月24日まで。
明治45(1912)年3月10日から『水戸黄門記』と改題された。
『報知新聞小史 : 創刊六十五年』報知新聞社 1936【国立国会図書館デジタルコレクション/インターネット公開】[最終確認2022.9.7]は、報知新聞社の社史で、年ごとに出来事がまとめられており、p.70-71(42コマ目)の大正3年の項目に、「明治三十八年十一月十三日から連載、四十五年三月十日からは、その内の『水戸黄門記』となり熱狂せしめ、この年[大正三年]十一月二十四日まで続き」とある。
(3) 掲載年月日
当館が所蔵しない新聞のため、国立国会図書館に照会した。国立国会図書館のレファレンスご利用上の注意事項として、「新聞(日刊紙)の掲載内容の調査は1か月分を上限とします」とあったため、調査で特定できた掲載開始月について依頼した。なお、残りの期間に関しては、利用者自身で確認するよう勧めた。
以下、国立国会図書館からの回答。
--------------------------------------------------------------------------------------------
<回答>
当館所蔵の資料を調査したところ、ご照会の記事が見つかりましたので、以下に書誌事項と掲載箇所をお知らせします。
当館請求記号:YB-18
タイトル:報知新聞
形態:マイクロフィルム
掲載日・掲載箇所・記事見出し:
1905(明治38)年11月13日・5面「徳川栄華物語(一の一)」
1905(明治38)年11月14日・5面「徳川栄華物語(一の二)」
1905(明治38)年11月15日・6面「徳川栄華物語(一の三)」
1905(明治38)年11月16日・5面「徳川栄華物語(一の四)」
1905(明治38)年11月17日・5面「徳川栄華物語(一の五)」
1905(明治38)年11月18日・6面「徳川栄華物語(一の六)」
1905(明治38)年11月19日・5面「徳川栄華物語(二の一)」
1905(明治38)年11月20日・5面「徳川栄華物語(二の二)」
1905(明治38)年11月21日・3面「徳川栄華物語(二の三)」
1905(明治38)年11月22日・5面「徳川栄華物語(二の四)」
1905(明治38)年11月23日・5面「徳川栄華物語(二の五)」
1905(明治38)年11月24日・5面「徳川栄華物語(三の一)」
1905(明治38)年11月25日・5面「徳川栄華物語(三の二)」
1905(明治38)年11月27日・5面「徳川栄華物語(三の四)」
1905(明治38)年11月28日・5面「徳川栄華物語(三の五)」
1905(明治38)年11月29日・5面「徳川栄華物語(四の一)」
1905(明治38)年11月30日・5面「徳川栄華物語(四の二)」
11月26日は欠ページがあり、確認できませんでした。
--------------------------------------------------------------------------------------------
2 「食道楽」について
(1) 挿絵画家 水野年方(としかた)
『「食道楽」の人村井弦斎』黒岩比佐子著 岩波書店 2004【910.26/ムゲ】p.165-166にかけて、単行本の出版に関して付されたカラー口絵に関して言及している部分で、p.166に「連載時の挿絵を描いた水野年方だった」とある。
『木版口絵総覧 増補改訂』山田奈々子著 文生書院 2016【726.5/ヤナ】p.281-282に明治36年に出版された『食道楽』の「春の巻」「夏の巻」「秋の巻」「冬の巻」の口絵がそれぞれ掲載されている。「水野年方」については、p.111-118に経歴、p.272-290に画像、p.401に落款の記載がある。この口絵のうち「春の巻」の口絵に関して、『「食道楽」の人村井弦斎』(前掲)p.165に「描いたのは、春の巻は山本松谷」と記述がある。
また、『食道楽 上』村井弦斎作 岩波書店 2005(岩波文庫)【岩波文庫コレクション 09/0038/1】の表紙に「春の巻」の口絵が使われており、『木版口絵総覧 増補改訂』よりも大きく印刷されている。カバーの袖の部分に「カバーカット=単行本『食道楽』春の巻口絵「大隈伯爵邸台所の図」(山本松谷画)」とあり、絵の右側中央あたりにかけられている手ぬぐいに「松谷」と読める落款が見られる。なお、山本松谷については『木版口絵総覧 増補改訂』(前掲)のp.125に経歴、p.301に画像、p.403に落款の記載がある。
(2) 連載期間 明治36(1903)年1月3日から12月27日。
『新聞小説史年表』高木健夫編 国書刊行会 1996【910.26/タタ】p.108の明治36年(1903)年1月の項目に「食道楽(村井弦斎)『報知』(1.3~12.27)」とある。挿絵画家に関する記述は確認できない。
大橋きょう子「明治の出版物にみる食用油脂及び油脂調理について : 小説『食道楽』を中心として」 2007『學苑』803巻 p.84–93[最終確認2022.9.7] のp.85の見出し部分に「「食道楽」(報知新聞連載 明治36年1月2日~12月27日)の訓みについて」とあり、「写真1」として、明治36年1月11日の紙面の画像があるが、この画像からも挿絵画家の名前は確認できない。
(3) 掲載年月日
「徳川栄華物語」と同様に、国立国会図書館に照会を行った。掲載開始月について、資料確認のレファレンス依頼した。継続する連載については、ご自身で確認する以外の手段がないことを伝えた。
以下、国立国会図書館からの回答。
--------------------------------------------------------------------------------------------
<回答>
当館所蔵の資料を調査したところ、ご照会の記事が見つかりましたので、以下に書誌事項と掲載箇所をお知らせします。
当館請求記号:YB-18
タイトル:報知新聞
形態:マイクロフィルム
掲載日・掲載箇所・記事見出し:
1903(明治36)年1月3日・1面「食道楽 酒の洪水」
1903(明治36)年1月4日・1面「食道楽 酔醒め」
1903(明治36)年1月5日・1面「食道楽 南京豆」
1903(明治36)年1月6日・1面「食道楽 嫁捜し」
1903(明治36)年1月7日・1面「食道楽 友人の妹」
1903(明治36)年1月8日・1面「食道楽 大食家」
1903(明治36)年1月9日・1面「食道楽 料理自慢」
1903(明治36)年1月10日・1面「食道楽 豚料理」
1903(明治36)年1月11日・1面「食道楽 お刺身」
1903(明治36)年1月12日・1面「食道楽 門違ひ」
1903(明治36)年1月13日・1面「食道楽 胃袋」
1903(明治36)年1月14日・1面「食道楽 脳と胃」
1903(明治36)年1月15日・1面「食道楽 廃物利用」
1903(明治36)年1月16日・1面「食道楽 昨夜の夢」
1903(明治36)年1月17日・1面「食道楽 贈り物」
1903(明治36)年1月18日・1面「食道楽 お不在」
1903(明治36)年1月19日・1面「食道楽 芋料理」
1903(明治36)年1月20日・1面「食道楽 人の 噂」
1903(明治36)年1月21日・1面「食道楽 大得意」
1903(明治36)年1月22日・1面「食道楽 大間違」
1903(明治36)年1月23日・1面「食道楽 芋章魚」
1903(明治36)年1月24日・1面「食道楽 お豆腐」
1903(明治36)年1月25日・1面「食道楽 秘傳」
1903(明治36)年1月26日・1面「食道楽 心細き」
1903(明治36)年1月27日・1面「食道楽 名物」
1903(明治36)年1月28日・1面「食道楽 申込み」
1903(明治36)年1月29日・1面「食道楽 物の味」
1903(明治36)年1月30日・1面「食道楽 誠実の人」
1903(明治36)年1月31日・1面「食道楽 万年スープ」
- 回答プロセス
-
1 『新聞小説史年表』高木健夫編 国書刊行会 1996 【910.26/タタ】で「徳川栄華物語」「食道楽」を探す。「食道楽」は、掲載期間は明治36年(1903年)1月3日から12月27日とある。また、明治38年(1905年)2月に「<脚本>食堂楽(村井弦斎)「報知」(2.19~2.25)」の記述がある。報知新聞を所蔵していないため、「食道楽」の誤植か判断できない。
「徳川栄華物語」については、掲載がない。凡例を確認すると、「講談の連載は、円朝の作品に限り採録した」とあった。
2 『報知新聞』に連載とあるので、報知新聞の社史などを調べる。
『報知七十年』青木武雄著 報知新聞社 1941【070/97】のp.116に
新講談として、松林伯知の口演した『徳川栄華物語』明治三十八年十一月開講、翌三十九年十月以
来、復興した夕刊紙上の呼物となり、殊に四十五年三月、その内の『水戸黄門記』と改題されて一層
の絶賛を博し、大正三年十一月まで、前後十年間続載された(後略)
とあったが、詳しい日付までは特定できなかった。国立国会図書館デジタルコレクションでインターネット公開されている『報知新聞小史 : 創刊六十五年』報知新聞社 1936を見つけたので、掲載月日を特定する。
『世紀を超えて』報知新聞社・社史刊行委員会編集 報知新聞社 1993【335.4/232】巻末の「連載小説・連載企画」の「戦前の主な連載小説」の明治34年の欄に「食道楽(村井弦斎)」、「戦前、その他主な連載企画」の明治38年の欄に「徳川栄華物語(松林伯知講演)」とあるが、挿絵画家や掲載月日に関する記述は確認できなかった。
なお、「食道楽」の掲載開始時期について、回答で紹介した明治36年と食い違いがあるが、明治36年を掲載開始時期としている文献が複数確認できたため、回答では明治36年とした。また、本編では連載小説等には触れている部分は確認できなかった。
3 「徳川栄華物語」の作品名、著者名で単行書、研究書を蔵書検索をする。「徳川栄華物語」および「松林伯知」でヒットする資料は確認できなかった。国立国会図書館デジタルコレクションでインターネット公開している『徳川栄華物語』の各巻を見ていくが、挿絵は確認できない。
4 「食道楽」の作品名、著者名で単行書、研究書を蔵書検索をする。単行書では、1976年の新人物往来社のものと、2005年の岩波書店の文庫がヒットした。新人物往来社版の序に、連載後発行したものの口絵に水野年方の彩色画が使われたことがわかった。岩波書店版の上巻カバーでは、春の巻口絵「大隅伯爵邸台所の図」(山本松谷画)とある。
研究書としては『「食道楽」の人 村井弦斎』がヒットし、連載時の挿絵が「水野年方」との記述がある。p.165には、この春の巻を急病のため、山本松谷に依頼したことが書かれている。また、「明治期の「報知」の小説の挿絵を担当していたのは、鈴木華邨、水野年方、高橋広湖、竹内桂舟などである。」という記述を見つける。
5 当館蔵書を「挿絵」を含む書名で検索し、明治期のものを扱った資料を調べていく。
『図説絵本・挿絵大事典』全3巻 川戸道昭編著 大空社 2008【726.5/ズセ】
作家名以外での参照方法がなく、作品名からの確認はできなかった。第3巻p.514-517の「水野年方」の項目を参照したが、「食道楽」に関する記述は確認できなかった。ただ、『図説絵本・挿絵大事典』の参考文献に『木版口絵総覧-明治・大正期の文学作品を中心として-』があげられており、所蔵していたので内容を確認する。水野年方が「食道楽」の挿絵を描いていたことがわかる。
6 報知新聞と近い「読売新聞」のデータベース「ヨミダス歴史館」で「徳川栄華物語」を検索する。「高橋広湖」についての記事がヒットした。
「涼臺夜話」『読売新聞』明治42年8月9日 第3面
「報知新聞の夕刊に徳川栄華物語の挿絵を描いて居る高橋廣湖と云ふ大先生は(-後略-)」とあり、
高橋広湖の当時の逸話を紹介している。
7 「水野年方」「高橋広湖」の経歴ををそれぞれ調べる。
『図説絵本・挿絵大事典 第2巻』川戸道昭編著 大空社 2008【726.5/ズセ/2】
『美術家人名事典 古今・日本の物故画家3500人』日外アソシエーツ編・刊 2009【721.03/ニチ】p.349「高橋広湖」
『人物レファレンス事典 美術篇』日外アソシエーツ編・刊 2010【281.03/ニチ】p.602「高橋広湖」
などで調べたが、6の記事のほかには、高橋広湖が「徳川栄華物語」の挿絵を描いていたという文献は確認できなかった。
<調査済み資料>
・『徳川栄華物語. 竹の巻』松林伯知著 新橋堂 1907-1910
・『徳川栄華物語. 梅の巻』松林伯知著 新橋堂 1907-1910
・『徳川栄華物語. 後編 櫻の巻』松林伯知著 新橋堂 1907-1910
・『徳川栄華物語. 後編 藤の巻』松林伯知著 新橋堂 1907-1910
・『徳川栄華物語. 後編 菊の巻』松林伯知著 新橋堂 1907-1910
・『徳川栄華物語. 続編 椿の巻』松林伯知著 新橋堂 1907-1910
・『徳川栄華物語. 続編 萩の巻』松林伯知著 新橋堂 1907-1910
・『徳川栄華物語. 続編 楓の巻』松林伯知著 新橋堂 1907-1910
・『徳川栄華物語. 続編 桐の巻』松林伯知著 新橋堂 1907-1910
【国立国会図書館デジタルコレクション/インターネット公開】[最終確認2022.9.7]
・『文明開化の錦絵新聞』千葉市美術館編 国書刊行会 2008【721.9/チバ】
明治初期に発行された錦絵新聞が収められているが、新聞小説に関する記述は確認できなかった。
・『新聞連載小説の挿絵でみる近代日本の身装文化』大丸弘著 三元社 2019【383.1/ダヒ】
巻末資料 p.12-51「身装資料としての挿絵つき主要新聞小説年表(1888-1945年)」を参照したが、
上記2つの作品の掲載は確認できなかった。また、作家索引から「村井弦斎(弦斎居士)」の記載のあ
るページを参照したが、「食道楽」に関する記載は確認できなかった。作家索引で「松林伯知」の
名前も確認できなかった。
・『新聞小説史稿 1』高木健夫著 三友社 1964【913/7】
村井弦斎にかかわる記述はあったが、「食道楽」の挿絵に関する記述は確認できなかった。また、
索引では「徳川栄華物語」および「松林伯知」の項目は確認できなかった。
・『大衆芸能資料集成 第5巻』三一書房 1981【779/タイ/5】
講談が含まれる5巻を中心に、目次は全10巻分参照したが、「徳川栄華物語」にかかわる記述は確
認できなかった。
・『口演速記 明治大正落語集成 第7巻』暉峻康隆[ほか]編集・解説 講談社 1981【913.7/テヤ/7】
索引で「松林伯知」及び「徳川栄華物語」は確認できなかった。
・『明治文学の彩り-口絵・挿絵の世界-』日本近代文学館編 春陽堂書店 2022【726.5/ニホ】
- 事前調査事項
- NDC
-
- 日本文学 (910 10版)
- 漫画.挿絵.児童画 (726 10版)
- 日本 (071 10版)
- 参考資料
-
-
高木健夫 編 , 高木, 健夫, 1905-1981. 新聞小説史年表. 国書刊行会, 1996.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002481028-00 , ISBN 4336020302 (『』高木健夫編 国書刊行会 1996 【910.26/タタ】) -
黒岩比佐子 著 , 黒岩, 比佐子, 1958-2010. 『食道楽』の人村井弦斎. 岩波書店, 2004.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000007412593-00 , ISBN 4000233947 (【910.26/ムゲ】p.165-166) -
山田奈々子 著 , 山田, 奈々子. 木版口絵総覧 = A survey of woodblock kuchi-e prints 増補改訂. 文生書院, 2016.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I027773740-00 , ISBN 9784892536069 (【726.5/ヤナ】p.281-282)
-
高木健夫 編 , 高木, 健夫, 1905-1981. 新聞小説史年表. 国書刊行会, 1996.
- キーワード
-
- 徳川栄華物語
- 水戸黄門記
- 松林伯知
- 高橋広湖
- 食道楽(くいどうらく)
- 食道楽(しょくどうらく)
- 村井弦斎
- 水野年方
- 山本松谷
- 報知新聞
- 新聞連載小説
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査 利用案内
- 内容種別
- 人物
- 質問者区分
- 図書館
- 登録番号
- 1000320320