インターネットで、[ブドウ][樹皮][はがす]で検索。
ワイナリー、ブドウ農園等のHPがいろいろ出てくるが、
①サントリーの登美の丘ワイナリー通信HPに、以下の記載がある。
「幹の表皮の部分が老化して幾層にも重なった表皮がささくれるようになってきます。そのささくれだった隙間がぶどう樹にとっての害虫の棲家になってしまいがちになります。特に、どこにでもいる部類の1mmにも満たないカイガラムシなどは口の針でぶどうの樹液を吸い、排泄物を撒き、それがまた病気を引き寄せ、大量発生でもしたら手に負えないので、こまめな防除が大切になります。
しかも、ぶどう樹のウイルスを伝播する媒介者であるという研究結果も発表され、小さなカイガラムシにぶどう栽培スタッフは震撼します。
特にカイガラムシの体はロウ質で覆われていて、薬剤の効果があまり期待できないという厄介な害虫です。」
②NOSAI山梨(山梨県農業共済組合)のHPに
ブドウ休眠期の管理(3月上旬)として、「カイガラムシやハダニは粗皮の下に潜んでいるので、粗皮はぎを行ってください。」という記述がある。
データベース「ルーラル」で[ブドウ][粗皮]で検索する。
4件ヒット。そのうち以下の2つの記事により、カンザワハダニやクビアカスカシバという害虫が、ブドウの樹にいること、その樹皮をはぐことで防除することが分かる。
③『防除総覧 診断編 第6巻 果樹』ブドウ カンザワハダニの記事に「粗皮下で越冬中の雌成虫:ブドウの粗皮下や雑草で越冬する」というキャプションと写真がある。また、「ブドウの主幹やハウスの主骨を登ってブドウに寄生するため,比較的基部の枝や葉に多い」との記述もある。
④『農業技術大系果樹編 第2巻』クビアカスカシバの生態と防除の記事(技+351~技+352)では、「休眠期には,粗皮はぎを実施することで,薬剤の付着や被害発見の効率を上げることができる」という記述がある。
データベース「ルーラル」で[粗皮はぎ]で検索する。2件ヒット。
⑤『現代農業』2010年6月号(p.237~239)困った病害虫対策相談室 2010年版「フジコナカイガラムシ 粗皮はぎ+樹幹塗布で「内から効かせる」」という記事で、カキの樹幹塗布法についてではあるが、「粗皮をはがし、浸透移行性のある殺虫剤を幹に塗ることで、(1)殺虫剤の成分が樹の内部に浸透し、(2)樹液の流動にともなって樹全体に殺虫剤の成分が行き渡り、(3)フジコナが吸汁すると殺虫剤の成分が体内に取り込まれて死亡します。」とあり、粗皮をはぐ効果が記されている。
⑥『現代農業』2012年4月号(p.228~231)田代先生に質問!果樹防除のコツ(10)「マシン油乳剤散布で気を付けること/カキのフジコナカイガラムシの被害」の記事でも、対象がカキではあるが、フジコナカイガラムシが毎年多発する最大の原因は「薬液のかけムラ」で「フジコナカイガラムシは幹や主枝の樹皮下で越冬しています。主幹部だけでもいいので、三月中旬頃までに、水流式粗皮はぎ機を使って粗皮をはいでおき」、「粗皮はぎで、初期密度を低下させる」ということが目的で行われることが分かる。
病害虫対策として、ブドウの休眠期に行うことが分かったので、ブドウ栽培の方法の図書を検索した。
⑦『ブドウ NHK趣味の園芸12か月栽培ナビ7』には、「粗皮の下では、カイガラムシなどの害虫が越冬しているため、粗皮を削り取ると害虫の生息密度を下げることができます。また、スカシバ類の幼虫などの木の内部を食害する害虫が食入した穴も見つけやすくなります。」という記述がある。
専用の道具を使っての作業の写真あり。削りすぎの状態がわかる写真あり。
果樹につく病害虫から調べてみる
⑧『原色果樹病害虫百科3 ブドウ・カキ』
コナカイガラムシ類の項では、卵のうの除去のために粗皮剥ぎをするよう記述がある。
1.クワコナカイガラムシ(p225~230)
p227〈虫の生態,生活史〉「年3~4回の発生をくり返すが、越冬は粗皮下の卵のうである。」
p228「これらの幼虫は、老熟すると粗皮下に移動し、卵のうをつくって産卵する。」
p228〈対策のポイント〉「前年度発生の多かった園では、3~4月に粗皮剥ぎを必ず実施して、越冬卵のうを取り去ること。」
p229〈効果の判定〉「粗皮剥ぎを行なっておけば、葉裏などへの寄生幼虫が少ない。」
2.フジコナカイガラムシ(p231~233)にも上記と類似の記述あり。
p215~221ブドウヒメハダニの項では、薬剤散布の効果を高めるために粗皮削りを行ない、効果を確認するためにも行うよう記述がある。
p216〈虫の生態,生活史〉「結果母枝の発生がある付近の粗皮下に越冬数が多く」
p217〈防除上の注意〉「粗皮削りを実施してからの(殺ダニ剤の)散布は効果的である。」
p217〈効果の判定〉「休眠期散布の効果判定は、粗皮を削り取って、越冬成虫の生死を調べる。」
このほかにも
p183~188ブドウトラカミキリの項では、「樹皮を削り取って、幼虫を露出させてみる」「表皮を削り取ってみると、ミイラ化した幼虫の死体がみられる」など、食入確認のため樹皮を削るという記述がある。
p323~324トビイロトラガの項では、虫の生態として「老熟すると土中や粗皮下に潜って蛹化する」とあり、防除上の注意として「冬期に粗皮剥ぎを行ない、越冬している蛹を除去する」との記述がある。
⑨『原色果樹の病害虫診断事典』で、カイガラムシやブドウヒメハダニ、ブドウトラカミキリ、トビイロトラガの項を見る。
p虫66〈解説〉フジコナカイガラムシの項で「毎年発生の多い園では、発芽前に粗皮剥ぎを行なう」、クワコナカイガラムシの項で「前年度発生の多かった園では3~4月に粗皮剥ぎを必ず実施して、越冬卵のうを取り去る」との記述がある。
p虫60〈解説〉ブドウヒメハダニの項では、虫の生態として「粗皮下に越冬数が多く」とあるが、粗皮削り(または粗皮剥ぎ)をする記述はない。
p虫68〈解説〉ブドウトラカミキリの項では、虫の生態として「2~3年生枝の粗皮下などに」卵を産みつけたり、幼虫が食入すると書かれているが、粗皮削り(または粗皮剥ぎ)をする記述はない。
p77虫〈解説〉トビイロトラガの項では、虫の生態として「老熟すると土中に潜って蛹化する」という記述があるが、④とは違い、粗皮下で蛹化するという記述はない。