レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 登録日時
- 2021/05/29 10:23
- 更新日時
- 2023/08/17 11:57
- 管理番号
- 島根郷2021-007
- 質問
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解決
昭和初期頃にあった、「(い)米」(※カッコ内は丸囲み文字)という良質米産地印の歴史が知りたい。
- 回答
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利用者が以前閲覧したという資料は、見つけることができなかったたため、下記の資料を紹介し、回答とした。
〇資料2:昭和12(1937)年3月号p.65-67 「丸「い」米出荷陣」佐藤定吉著
飯石米は「米質食味共に優良」などの特徴で「声価を博」しているとあり、出版当時すでに有名であった様子である。記事では、このような評判を得るまでの、品質改良や販売体制の改善について、まとめられている。ただし(い)印がいつ付けられ始めたのかは、記されていない。
記事によれば、発端は大正2年に、郡と村の農会で生産・販売に関する基本方針がまとめられたことであった。
商品的価値の向上に努めた結果、大正12年には、東京、京都、神戸、大阪の米穀取引所で高い評価を受ける。
大きな転機は昭和4年に、飯石郡赤名町で開かれた県米穀大会で、当日飯南産米を競争入札にかけたところ、予想以上の高値で売れた。
翌昭和5年には、共同の特設売店が八束郡宍道町(現在の松江市宍道町)に開設された。
なお、この売店は昭和8年には大原郡木次町(現在の雲南市木次町)に移り、簸上鉄道が運営することとなった。
昭和7年、来島村農会長阿部厚らの提唱で、飯南六村による飯南米出荷組合が設立される。
この組合は、町村役場、農会、産業組合の三者で組織され、飯南米の宣伝および、販売統制をおこなった。
〇資料5:昭和10(1935)年6月号p.58「乙立村産米に「丸い」印記号の許可」
飯石郡近隣の神門郡乙立村では、産米の品質改良につとめた結果、(い)印をつける許可を得たという報告。
〇資料3:
・昭和6年度(昭和8年4月発行)p.14-15「検査事務協議会」
「部会ニ於ケル協議会」の、協議問題3に「○い記号押捺範囲ニ関スル件」があがっている。
この議題に対して、「飯石郡三刀屋町、一宮村、飯石村ノ三村ヲ除キ他ノ区域内ノ四等以上ニ押捺スル」と、定まったことが記されている。
部会の開催日時は書かれていないが、次項目「本所ニ於ケル協議会」が昭和7年5月20-21日に開催されたとあるので、これに前後して開催されたと思われる。
・昭和9年度(昭和11年3月発行)p.16-17「取引格差協定実行の指導」
四等米を基準とする、各等級ごとの取引価格表が掲載されている。
欄外に「但し(い)印米並八雲、曲玉、銀坊主種にして四等米以上は一俵につき16銭上げ」とすることが書かれている。
※八雲、曲玉、銀坊主は、優良品種として作付けが奨励されていた品種(p.13-14)
〇資料4:p.17-18「取引格差協定実行の指導」では、「(い)印米に付いては50銭内外の格上げをなし取引せる実状を鑑み別に格上額を協定せず」とある。p.29「公定価格の変遷」を見ると、茨城四等を基準にした際、島根県産米は0.50円~1.40円下の価格が付けられているが、(い)印米は基準より0.20~0.40円高い値がつけられている。
- 回答プロセス
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利用者が調査済の『雲南酒米史』(資料1)では、酒米の(い)印について以下の記述がある。
・口絵写真「(い)米の先覚者阿部厚氏」
・序1ページめで阿部氏は、若いころ、酒米取引に携わり、「当時(仁)米としてその名を売っていた仁多郡へも働きかけ」、「あらたに(い)米」として良質米の量を確保し取引をしたと回想している。
・須山勇造氏による「発刊のことば」冒頭には、昭和25年よりも前に(イ)米、(仁)米が飯石・仁多郡で生産されていた旨の記載がある。
・p.12-13によれば、昭和25年に雲南酒米連が組織され、「酒造家に対する(い)地帯の酒米宣伝と、生産者の優良米生産の自覚を強調するために(い)酒米として産地を明示した特殊票箋」が定められたとのこと。この票箋の写真が載っている。
別のレファレンス調査時に、資料5を発見したので追記した(2023年8月11日)。
- 事前調査事項
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利用者より:以前、当館で産地を示したカラー地図付きの資料を見た記憶がある。
- NDC
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- 農業史.事情 (612 8版)
- 農業経済・行政・経営 (611 8版)
- 参考資料
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【資料1】雲南酒米生産改良組合連合会 編 , 雲南酒米生産改良組合連合会. 雲南酒米史. 雲南酒米生産改良組合連合会, 1969.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I069348436-00 (当館請求記号 096.1D/120 ※貸出禁止資料) -
【資料2】島根県農会 編 , 島根県農会. 島根縣農會報 : 各市郡島農業郷土記. 島根県農会, 1936.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I069452488-00 (当館請求記号 貴重096.1/23 ※貸出禁止資料) -
【資料3】島根県穀物検査所 編 , 島根県穀物検査所. 米穀檢査成績報告 昭和5,6,9. 島根県穀物検査所, 1936.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I069452503-00 (当館請求記号 貴重096.1/14/3 ※貸出禁止資料) -
【資料4】島根県農産物検査所 編 , 島根県農産物検査所. 穀物檢査成績報告 昭和10年度. 島根県農産物検査所, 1937.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I069452435-00 (当館請求記号 貴重096.1/14/4 ※貸出禁止資料) -
【資料5】島根縣農會 編 , 島根縣農會. 島根縣農會報 444~455. 島根縣農會, 1935.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I069267881-00 (当館請求記号 096.1/73/37 ※貸出禁止資料)
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【資料1】雲南酒米生産改良組合連合会 編 , 雲南酒米生産改良組合連合会. 雲南酒米史. 雲南酒米生産改良組合連合会, 1969.
- キーワード
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- 稲
- 品種
- 島根県
- 飯石郡
- 農業
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000299474