レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 登録日時
- 2014/09/04 15:18
- 更新日時
- 2021/02/09 13:57
- 管理番号
- 愛知県図-03286
- 質問
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解決
陶磁器流通制度である「蔵所制度」について知りたい。かつて瀬戸に「蔵所」というものがあったらしいが、全国の陶磁器産地にあったのか、あるいは尾張藩独自の制度なのか。
- 回答
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近世期、尾張藩が陶磁器を買い上げ専売したことは「蔵元制度」と呼ばれる。藩が特定の商品を専売することは各藩で行われたが、特に陶磁器については、佐賀藩、紀州藩、尾張藩で行われた。
- 回答プロセス
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1自治体史(瀬戸市史)を調べる
「蔵所」が瀬戸にあったということなので、瀬戸市史の中で、陶磁器について書かれた部分を探す。
『瀬戸市史 通史編 上』【資料1】、『瀬戸市史 陶磁史篇3』【資料2】、『瀬戸市史 陶磁史篇5』【資料3】及び『瀬戸市史 陶磁史篇6』【資料4】に陶磁器の専売制度「蔵元制度」についての記述がある。
【資料1】では、第5章「尾張藩政の展開と市政の暮らし」において、瀬戸物が「近世後期(享和二年<1802>以降)には、蔵元という藩から陶磁器専売を任された有力商人によって生産等が管理されるようになった。要するに、生産内容、生産量、流通量、流通先、価格などがすべて統制・把握されるようになったのである。」と書かれている。
【資料2】では、6「蔵元制度と販売機構」において、蔵元制度がどのようにできたのか、どういった制度だったのか、請願書などの当時の資料とともに詳しく書かれている。
【資料3】では、第6章「蔵元制度」において、「尾張藩陶器専売制度(蔵元制度)は、新製品(染付焼あるいは新製焼と呼ばれた)の開発を機に誕生した制度」と書かれており、図や年表を用いて、蔵元制度について詳しく説明している。また、その「仕法としての手本は、一つは先発磁器産地有田焼の国産仕法であり、(後略)」との記述から、佐賀藩でも行われていたことが分かる。
【資料4】では、第6章第3節「近世瀬戸・美濃焼の生産と流通」に「蔵元制度下の瀬戸焼は、瀬戸三ヵ村の御蔵会所を経て名古屋竪三ッ蔵の広井御蔵へ納入され、江戸・大阪・京都の尾州瀬戸物会所で、会所所属の問屋仲間によって販売された。」と書かれている。
質問者の言う「蔵所制度」とは、この「蔵元制度」のことだと思われる。
ちなみに、瀬戸市には「蔵所町」という町がある。瀬戸市に関わる情報が項目別にまとめられているホームページ「瀬戸ペディア」【資料5】で「蔵所」と検索をすると、「蔵所町」や「蔵所橋」などの地名が出てくる。これには、「「蔵所」という地名は江戸時代、尾張藩がやきものの生産販売を統制し藩の財源を確保するため、この地に御蔵会所という役所を置いたことに由来している。」とあり、蔵元制度に由来した地名であることがわかる。
2陶磁器の専売制度について書かれた資料を調べる
キーワード「専売制度」「陶磁器」などで蔵書検索をして、『近世の専売制度』【資料6】、『藩陶器専売制と中央市場』【資料7】、『伝統産地の経営学 陶磁器産地の協働の仕組みと企業家活動』【資料8】を見つける。
【資料6】では、諸藩の専売制度が地区ごとに個別にまとめられており、「5.東海諸藩について」の章で、瀬戸焼の専売制度について書かれている。
【資料7】では、第1章第1節「尾張藩陶器専売制度の概要」に、瀬戸で蔵元制度が成立する過程や、運営について書かれている。
また、終章「藩陶器専売制の特質と幕末・明治初期の陶磁器流通」の中で、「陶磁器を対象として藩陶器専売仕法は、佐賀藩では延宝期(大坂)に、紀州藩では享保期(江戸)に、尾張藩では享保期(大坂・江戸)にそれぞれ始められ、各仕組幕末まで維持された。」とあり、他の陶磁器産地でも専売制度が行われていたことがわかる。
【資料8】では、第4章2「佐賀藩による統制と分業制」において、佐賀藩が行った有田焼の専売制度について書かれている。それによると、産地形成期の1628年、初代藩主の鍋島勝茂は岩谷川内に「御道具山」と称された藩の窯場をつくり、御用陶器を焼成する組織の「御陶器方」を設けた。御陶器方では藩主の命を受けた「御陶器方主任」のもとに陶工を職制化した。」とあり、尾張藩が手本とした佐賀藩の有田焼の専売制度について書かれている。
- 事前調査事項
- NDC
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- セラミックス.窯業.珪酸塩化学工業 (573)
- 専売.国有財産 (348)
- 参考資料
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【資料1】瀬戸市史編纂委員会 編纂 , 瀬戸市. 瀬戸市史 通史編 上. 愛知県瀬戸市, 2007.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000008513589-00 (pp.370-373) -
【資料2】瀬戸市史編纂委員会 編 , 瀬戸市史編纂委員会. 瀬戸市史 陶磁史篇 3 新訂. 瀬戸市, 1969.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I077608312-00 (pp.101-133) -
【資料3】瀬戸市史編纂委員会 編纂 , 瀬戸市史編纂委員会. 瀬戸市史 陶磁史篇 5. 愛知県瀬戸市, 1993.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I056458491-00 (pp.263-386) -
【資料4】瀬戸市史編纂委員会 編纂 , 瀬戸市史編纂委員会. 瀬戸市史 陶磁史篇6. 愛知県瀬戸市, 1998.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I057353307-00 (pp.474-475) -
【資料5】Setopedia/蔵所
https://setopedia.seto-guide.jp/?s=%E8%94%B5%E6%89%80 [last access2021/2/2] -
【資料6】吉永昭 著 , 吉永, 昭, 1927- , 日本歴史学会. 近世の専売制度. 吉川弘文館, 1973. (日本歴史叢書 ; 32)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001170348-00 (p.85) -
【資料7】山形万里子 著 , 山形, 万里子. 藩陶器専売制と中央市場. 日本経済評論社, 2008.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000009993981-00 , ISBN 9784818820227 (pp.16-20,347) -
【資料8】山田幸三著 , 山田, 幸三(1956-). 伝統産地の経営学. 有斐閣, 2013-07.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000074-I000619928-00 , ISBN 9784641164123 (pp.122-127)
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【資料1】瀬戸市史編纂委員会 編纂 , 瀬戸市. 瀬戸市史 通史編 上. 愛知県瀬戸市, 2007.
- キーワード
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- 蔵所、蔵元
- 専売制度
- 陶磁器
- 尾張藩
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000159368