レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2021年03月10日
- 登録日時
- 2021/07/25 15:59
- 更新日時
- 2022/04/23 17:47
- 管理番号
- 吹-30-2021-001
- 質問
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解決
古代ギリシアの建築物やピラミッドの石はどうやって接着していたのか。セメントなど接着剤的なものが当時から存在したのか。セメントなどはいつからあったのか。
- 回答
-
起源については諸説あるようだが、セメントのようなものはピラミッド、古代ギリシアの時代から使われていたとされている。
(1)『セメントの科学 ポルトランドセメントの製造と硬化(JME材料科学)』(大門正機/編訳 内田老鶴圃 1989.10)
現在多く使用されているポルトランドセメントについての図書だが、p3~p4「1・1・1 セメントの歴史」に古代建造物に使用されたセメント等についての記述がある。
「人類が石材、レンガを使い始めたときから、現在の無機質セメントのような材料が知られている。最も早いモルタル、プラスターはエジプトで使われたものであり、ほとんどは石膏で、一部に水硬性石灰が使用されていた。現在のセメントにさらによく似た材料が紀元前6世紀頃から、ギリシャやローマで使われていた。この頃のセメント、モルタルには、仮焼した石灰石を火山灰のような反応性物質と混合して使用していた。火山灰のように、生石灰などとの混合粉末が水硬性を示す物質を、ポゾランあるいはポゾラン性物質と呼んでいる。当時のセメントは全体の化学組成としては、現在のセメントにかなり近く、ローマ帝国の最盛期である紀元前3世紀から紀元後1世紀の間に改良され広く使用された」。
(2)『コンクリートなんでも小事典 固まるしくみから、強さの秘密まで』(土木学会関西支部/編、井上 晋/[ほか]著 講談社 2008.12)
p27~p45「第2章 コンクリートのルーツをたどる」の中で、コンクリートの起源を2000~3000年前の古代ローマ時代とする説、5000年ほど前の中国とする説、9000年前のイスラエルとする説など複数の説が紹介されている。その中で、セメントに相当するものについても言及されている。
(3)『世界大百科事典 16 セム-タイシ 改訂新版』(平凡社 2007.9)
p15『セメント』の項目中[歴史]
「セメントの利用そのものは非常に古く、最も古いセメントはピラミッドの目地に使われた焼セッコウと砂とを混ぜたモルタルである。石灰系のセメントは古代ギリシアの遺跡で見つかっている(以下略)」。
- 回答プロセス
-
歴史、建築、建築材料から調査した。
質問内容が一時代一地域の建築についてではなかったこと、また質問者の希望が「すぐに閲覧できる平易な資料でよい、気軽な質問である」とのことだったので、実際には(3)のみを提供した。
建築材料のうち、セメント、コンクリート、モルタルは同時に語られることが多い物質なので、コンクリートについての資料も調査対象とした。
(2)『コンクリートなんでも小事典』p16によれば、違いは下記のとおり。
水+セメント =セメントペースト
水+セメント+砂 =モルタル
水+セメント+砂+砂利=コンクリート
以下は断片的な記述があった資料。
『新コンクリートなぜなぜおもしろ読本』(植田紳治[ほか]/著 ナノオプト・メディア 2009.11)
p2「セメントはいつごろから使われるようになったのですか?」に次の記述がある。
「無機質の結合剤としては、陶磁器をつくるときの粘土のように、水で練って固め、乾燥したあとに強度が出る「粘土モルタル」があり、これが最も古くからあるセメントと考えられます。約5000年前に建設されたエジプトのピラミッドなど、石造り建築の石材同士の接合材として使われたのが、粘土モルタルと焼き石こうを水で溶いた「石こうモルタル」です」。
『図説ローマ』(河辺泰宏/著 河出書房新社 2001.1)
p31「巨大建造物の構築 コンクリートの発見」に次の記述がある。
「ギリシア人の支配した南イタリアでは、古くから石材の隙間をつなぎ合わせるために石灰と砂に水を混ぜ合わせた石灰モルタルが使われており、前三世紀初めにはこの材料の有益性は充分に理解されていた」。
『ローマ』(Renzo Salvadori/[著] 丸善 1991.12)
p23~24「古代建築 ローマの技術」に次の記述がある。
「モルタルと砂利の混合物でレンガを付着し、きわめて強力であるとともにきわめて融通の効く方法であって(以下略)」。
- 事前調査事項
- NDC
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- セラミックス.窯業.珪酸塩化学工業 (573 10版)
- 土木力学.建設材料 (511 10版)
- 参考資料
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大門正機 編訳 , 大門, 正機, 1944-. セメントの科学 : ポルトランドセメントの製造と硬化. 内田老鶴圃, 1989. (JME材料科学)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002018272-00 , ISBN 4753652068 -
土木学会関西支部 編 , 井上晋 他著 , 井上, 晋 , 土木学会. コンクリートなんでも小事典 : 固まるしくみから、強さの秘密まで. 講談社, 2008. (ブルーバックス ; B-1624)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000009987167-00 , ISBN 9784062576246 -
平凡社〔編〕 , 平凡社〔編〕. 世界大百科事典 16 セム~タイシ 2009年改訂新版. 平凡社, 2009.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000111-I000029033-00 , ISBN 4582034004
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大門正機 編訳 , 大門, 正機, 1944-. セメントの科学 : ポルトランドセメントの製造と硬化. 内田老鶴圃, 1989. (JME材料科学)
- キーワード
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- セメント
- 照会先
- 寄与者
- 備考
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調査したが回答に結びつかなかった資料
・コンクリート、セメント等建築材料関連資料
『最新図解基礎からわかるコンクリート』(水村俊幸[ほか]/著 ナツメ社 2018.6)
『セメントの材料化学 改訂3版』(荒井康夫/著 大日本図書 2016.9)
『これだけ!コンクリート』(岩瀬泰己/著 秀和システム 2015.10)
『コンクリートの科学』(コンクリートの劣化と補修研究会/編著 日刊工業新聞社 2013.10)
『生きているコンクリート』(安藤哲也/著 セメントジャーナル社 1992.4)
・ピラミッド関連資料
『世界のピラミッドWonderland』(河江肖剰/[ほか]編著 グラフィック社 2021.1)
『ピラミッド』(河江肖剰/著 新潮社 2018.4)
『河江肖剰の最新ピラミッド入門』(河江肖剰/著 日経ナショナルジオグラフィック社 2016.12)
『図説ピラミッドの歴史』(大城道則/著 河出書房新社 2014.2)
『ピラミッドへの道』(大城道則/著 講談社 2010.7)
『大ピラミッドの秘密』(ボブ・ブライアー[ほか]/著 ソフトバンククリエイティブ 2009.11)
『ギザの大ピラミッド』(ジャン=ピエール・コルテジアーニ/著 創元社 2008.10)
『図説大ピラミッドのすべて』(ケヴィン・ジャクソン[ほか]/著 創元社 2004.9)
『ピラミッド大全』(ミロスラフ・ヴェルナー/著 法政大学出版局 2003.10)
『痛快!ピラミッド学』(吉村作治/著 集英社インターナショナル 2001.5)
『図説ピラミッド大百科』マーク・レーナー/著 東洋書林 2001.1)
『大ピラミッド新たなる謎』(吉村作治/[著] 講談社 1999.2)
『ピラミッド』(アルベルト・シリオッティ/著 河出書房新社 1998.10)
『ピラミッドはなぜつくられたか』(高津道昭/著 新潮社 1992.6)
『ピラミッドを探る』(クルト・メンデルスゾーン/著 法政大学出版局 1987.7)
『ピラミッド101の謎』(酒井伝六/著 文芸春秋 1984.7)
『失われた王墓』(ピーター・トンプキンズ/著 日本ブリタニカ 1981.6)
・建築関連資料
『古代建築』(溝口明則[ほか]著 丸善出版 2018.10)
『すべてわかる世界の建築』(劉松茯/著 エクスナレッジ 2012.8)
『古代ローマの建築家たち』(板屋リョク/文・写真 2001.8)
『建築の誕生』(竺覚暁/著 中央公論美術出版 1995.2)
『ローマ』(長尾重武/文・写真 丸善 1993.7)
『古代ギリシアの建築家』(J.J.クールトン/著 中央公論美術出版 1991.10)
『古代都市ローマ』(青柳正規/著 中央公論美術出版 1990.6)
『紺碧の幾何学』(木島安史/著 丸善 1988.4)
- 調査種別
- 文献紹介 事実調査
- 内容種別
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000302184