レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2014年07月23日
- 登録日時
- 2015/05/28 18:27
- 更新日時
- 2015/06/30 13:12
- 管理番号
- 埼熊-2015-012
- 質問
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解決
ザビエルの遺体は「搬送しやすいように灰を使って腐敗促進させようとした※1・2」といわれている(資料に散見される)。
しかし、江戸時代のことを書いた資料には「腐敗防止のために灰を利用した※3」という真逆の記述があった。
時代によって灰の用途が違うのかもしれないし、灰の量で効果が違ってくるのかもしれない。
中世や江戸時代の人は、灰を(遺体に対して)どのような効果で使っていたのか知りたい。
※1『聖フランシスコ・ザビエルの歩いた道』(パウロ・フィステル著 中央出版社 1982)
p111「棺の中には腐敗を早めるために石灰四袋をいれ(後略)」
※2『聖フランシスコ・ザビエル全生涯』(河野純徳訳 平凡社 1988)
p338「棺の中に石灰を入れておけば遺骸が早く腐蝕するので(後略)」
※3『魔都江戸の都市計画』(内藤正敏著 洋泉社 1996)
p23「徳川将軍の場合にも、棺の充填剤に「朱とみつかね」を用い、外側は「朱と石灰」をつめたという」(朱=硫化水銀、みつかね=水銀)
- 回答
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該当する記述のあった次の資料を紹介した。
1 江戸時代の日本
『図説江戸考古学研究事典』(江戸遺跡研究会編 柏書房 2001)
p142-143「Ⅳ 江戸の墓と葬制 2 埋葬形式 遺体処理方法」の項 「将軍墓や大名墓の場合は、棺内に朱が入れられ、複数の棺を入子状にした木棺の空隙に漆喰や石灰を充填することが多い。軟部の保存を目的としたとの説もあるが、木棺の空隙を充填するのは、むしろ死去から埋葬までの期間が長いため、完全密閉を図るための処置の可能性が高い。」
2 中世ヨーロッパ
『中世賤民の宇宙 ヨーロッパ原点への旅』(阿部謹也著 筑摩書房 1987)
p117-132「ニ 初期中世における死者と生者」
p120「ブリール市の法書には何らかの理由で死者と共に訴を行う可能性がなくなったときには、死体の内臓を出して、内臓だけを葬り、死体そのものには防腐処理を施して保存することが定められているという。(中略)一般にはこのような費用のかかる処理は出来ないから、死体を空のワイン樽に入れ、石灰か砂をつめ、裁判所に運んで封印し、裁判が開かれるまで人の来ない場所に保管するという。」とあり。
- 回答プロセス
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1 辞典/事典類を調べ、回答1の情報を得る。
2 江戸時代の百科事典『和漢三才図会 8』(寺島良安〔著〕 島田勇雄〔ほか〕訳注 平凡社 1987)を確認するが該当の記述なし。
3 『図説江戸考古学研究事典』の該当項目を執筆した古泉弘の著作を調べるが該当の記述はなし。
4 民俗学の葬制に関する資料を調べる。
5 《Google books》をキーワード〈中世 & 石灰 & 死体〉で検索、該当した資料を確認し、回答2の情報を得る。
6 《レファ協DB》をキーワード〈石灰〉〈コンクリート〉〈死体〉〈遺体〉〈防腐処理〉〈エバージング〉で検索し、該当した事例を確認する。
ア「中世のドイツで、死体を防腐処理するような技術があったのかを知りたい。」
ヨーロッパにおける死体の防腐処理についての概況や欧米におけるエンバーミングの歴史について、また、《日本遺体衛生保全協会ウェブサイト》(http://www.embalming.jp/)にヨーロッパにおける防腐処理についての記述があるとの情報はあるが、いずれも灰を用いたとの記述はなし。(https://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=ref_view&id=1000141063 国会図 2014/07/26最終確認)
イ「コンクリート(セメント)の歴史について知りたい。紀元前3世紀頃ローマで使われていたが、ローマ帝国衰退とともに一時姿を消した。その後いつどこで復活し、人間 の生活にかかわるようになっていったのか。種類や成分等についての情報は不要。」
コンクリート(セメント)の使用法についての記載なし。(https://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=ref_view&id=1000108291 国会図 2014/07/26最終確認)
- 事前調査事項
- NDC
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- 通過儀礼.冠婚葬祭 (385 9版)
- 土木力学.建設材料 (511 9版)
- 参考資料
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- 『図説江戸考古学研究事典』(江戸遺跡研究会編 柏書房 2001) , ISBN 4-7601-2045-9
- 『中世賤民の宇宙 ヨーロッパ原点への旅』(阿部謹也著 筑摩書房 1987) , ISBN 4-480-85409-6
- キーワード
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- 葬制
- 石灰
- 日本-歴史-中世
- ヨーロッパ-歴史-中世
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 質問者区分
- 個人
- 登録番号
- 1000175182