レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2004/04/13
- 登録日時
- 2004/04/22 02:10
- 更新日時
- 2018/03/24 16:10
- 管理番号
- 千県西-2017-2019
- 質問
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解決
染色体異常の病気で「猫鳴き症候群」に関する資料を探している。家庭医学の事典類は見た。もう少し詳しいものを。
- 回答
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当館所蔵資料の『医科学大事典 36』(講談社)や『最新医学大辞典』(医歯薬出版)等によれば、「猫鳴き症候群」とは“5番染色体短腕部の部分欠失により生ずる”、“そのなき声は独特で、子ネコのなき声に似ており、音声分析でもネコのなき声に類似している”、“円形顔貌、両眼離開などの小奇形、重篤な発育障害が特徴である”とのことです。当館にはあまり詳しい資料がなかったため、千葉県立衛生短期大学に調査依頼したところ、衛生短期大学所蔵雑誌に以下の該当論文がありました。(1)『目でみる新生児疾患(17)猫なき症候群』(周産期医学 22(10)))
(2017年6月追加調査)
2004年以降刊行の資料を中心に、再調査を行いました。
【資料1】『最新医学大辞典 第3版』(最新医学大辞典編集委員会編 医歯薬出版 2005)
p1405「ネコ鳴き症候群」
別名として「ネコ鳴き病」「レジュン症候群」「5番短腕部分欠失症候群」「5p-症候群」という名が示されています。「新生仔期のネコに似た高ピッチの泣声、円形顔貌、両眼離開などの小奇形、重篤な発育障害が特徴である」とあります。
また、ほかの辞典類にも類似の記述がありました。
【資料2】『南山堂医学大辞典 第20版』(南山堂 2015)p1877「ネコ鳴き症候群」
【資料3】『医学書院医学大辞典』(伊藤 正男総編集 医学書院 2009)p2149「猫鳴き症候群」
【資料4】『発達障害事典』(パスカル・J.アカルド編 明石書店 2011)p123「cri-du-cat syndrome/cat-cry syndrome ネコ鳴き症候群」
【資料5】『現代精神医学事典』加藤敏編集委員 弘文堂 2016)p802「猫鳴き症候群」「生命予後は比較的良好」との記載があります。
【資料6】「琉球大学遺伝性疾患データベース」(http://becomerich.lab.u-ryukyu.ac.jp/)
「UR-DBMS」を英語疾患名「cat cry syndrome」で検索すると、「Cri-du-chat syndrome
(Cat cry syndrome)」の疾患詳細を閲覧できました。日本語疾患名は「猫泣症候群(5p モノソミー)」で登録されていました。
【資料7】『標準小児科学 Standard Textbook 第8版』(内山聖監修 医学書院 2013)
「5p-症候群」の項に解説があり、「5番染色体短腕末端の部分欠失。新生児期の鳴き声が子猫の声に似てピッチが高いことからcat cry syndromeと称されたが、現在は適切な呼び名とは考えられていない」とあります(p163-164)。
以下のウェブサイトでは、「猫鳴き症候群」という名称を用いていません。
【資料8】小児慢性特定疾病情報センター「5p-症候群(ごぴーまいなすしょうこうぐん) 」(https://www.shouman.jp/details/13_1_10.html)
【資料9】難病情報センター「5p欠失症候群(指定難病199)」(http://www.nanbyou.or.jp/entry/4862 )
「5p欠失症候群」が指定難病であることがわかりました。一般利用者向けの解説、医療従事者向け診断治療指針、Q&Aが掲載されています。特に一般の方向けの解説が平易です。
【資料10】『全国患者会障害者団体要覧』(プリメド社「全国患者会障害者団体要覧」編集室編集 プリメド社 2006)
p57「カモミールの会」5p-症候群を対象とし、「同じ病気の子供をもつ親同士の親睦と情報交換」を目的とした会とのことです。
また、西部図書館契約のデータベース「医中誌Web」を利用して論文検索を行いました。
「猫鳴き症候群」(症例報告除く、会議録除く)で検索すると、52件が該当します。
シソーラス用語としては、「ネコ鳴き症候群」(http://search.jamas.or.jp/link/thw/%83l%83R%96%C2%82%AB%8F%C7%8C%F3%8CQ)が用いられています。
県立図書館未所蔵雑誌に掲載されている論文について、所蔵している図書館からの記事のコピー取り寄せをご要望の場合は、ご相談ください。
県立図書館所蔵資料の掲載論文として、次の資料があります。
【資料11】佐々木征行「猫なき症候群の長期経過と対応(解説)」(『発達障害医学の進歩』15号 p43-47 2003.04)
- 回答プロセス
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・パスファインダー「医療情報について調べる」(http://www.library.pref.chiba.lg.jp/reference/pathfinder/pf_iryojoho.pdf)を参考に、まず開架の医学辞典類をブラウジングした。
・「医中誌Web」を利用したが、新しい雑誌はおおむね未所蔵だった。
・「医中誌Web」の検索結果を参考に、キーワードを選んで蔵書検索を行った。
キーワード「新生児疾患」で該当した『今日の小児治療指針 第16版』(水口雅総編集 医学書院 2015)<49392/12> を索引で調べたが、病名で該当がなかった。
ただし、「染色体異常、奇形症候群」の総論「形態異常を中心とした先天異常、遺伝性疾患の診断の進め方」に、「先天異常症候群の診断に関しては各種データベースや、書籍あるいはインターネットも充実しつつある」、「和書では「新 先天奇形症候群アトラス」が有用である。琉球大学遺伝性疾患データベースも有用である」(p178)と記載があり、【資料6】の情報を得た。
『新先天奇形症候群アトラス 改訂第2版』(梶井正監修 南江堂 2015)は千葉県立図書館未所蔵。旧版を西部図書館書庫に所蔵(刊行年が古いことから、回答資料には入れなかった)。
『先天奇形症候群アトラス 増補』(梶井正[ほか]編集 南江堂 1993)<4939/59>p312-313「猫なき症候群」
・google検索でキーワード「猫鳴き症候群」で検索した結果から、「5pモノソミー」などの別名で記載されている例があることがわかり、【資料8】の参考文献より、【資料7】を確認。
なお、【資料7】の旧版では、「現在は適切な呼び名とは考えられていない」という記述は見られなかった。
『標準小児科学 Standard Textbook 第7版』(森川昭廣監修 医学書院 2009)
p141見出し語「5p-症候群」 別名として「猫鳴き症候群」
『標準小児科学 STANDARD TEXTBOOK 第6版』(森川昭廣編集 医学書院 2006)
p144見出し語「猫鳴き症候群」別名として「5p-症候群」
いずれも、「新生児の鳴き声が仔ネコの鳴き声に似ていることから命名された」と説明されている。
このほか、「ねこ啼き症候群(cri du chat syndrome)患児のトータルケア」(『ハイリスク児の健全育成のシステム化に関する研究 平成8年度研究報告書 厚生省心身障害研究』(前川喜平主任研究 [前川喜平] 1997 p216-217))(インターネット公開 https://www.niph.go.jp/wadai/mhlw/ssh_1996_12.htm)では、冒頭に「本症候群の和名の表記はまだ一貫しておらず、国際名のcri du chat syndromeの直訳と染色体異常に由来する5p-(マイナス)の2系統の名称があるが、“5p-”には症状の異なる5番染色体短腕の腕内欠失も含まれてしまうことや、先天異常症候群において動物名は不快感を抱かせるので使用しないという命名上の原則を考慮に入れ、ここでは、動物的印象を薄めた平仮名の“ねこ”(可愛い仔ねこで成猫ではない意味も含め)と啼泣の啼を用いた名称で統一した」と記載があった。当該論文では新生児・乳児期から成人期に至るまでの身体的ケア、心理的ケアの必要性を示している。
・難病関連、患者会関連の資料を確認した。患者会関連資料は新しい図書や公式のウェブサイト等が見つけられなかった。
『難病事典』(尾崎承一編集責任 学研メディカル秀潤社 2015)<49311/14>
解説の記載なし(p501「指定難病一覧」に「5p欠失症候群」の名前あり)
『全国『患者会』ガイド 最新版』(和田ちひろ監修 学研 2004)<49803/8>
記載なし
(インターネット最終閲覧:2017年6月15日)
- 事前調査事項
- NDC
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- 医学 (490 9版)
- 基礎医学 (491 9版)
- 内科学 (493 9版)
- 参考資料
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- 【資料1】『最新医学大辞典』(最新医学大辞典編集委員会編 医歯薬出版 2005)(1101947856) 西部図書館<49033/33>
- 【資料2】『南山堂医学大辞典 第20版』(南山堂 2015)(1102400697)西部図書館<49033/38>
- 【資料3】『医学書院医学大辞典』(伊藤 正男総編集 医学書院 2009)(1102161220)西部図書館 医療健康コーナー<49033/27>
- 【資料4】『発達障害事典』(パスカル・J.アカルド編 明石書店 2011)(1102248760) 西部図書館 <49376/105>
- 【資料5】『現代精神医学事典』加藤敏編集委員 弘文堂 2016)(1102428375) 西部図書館 <4937/688>
- 【資料6】「琉球大学遺伝性疾患データベース」(http://becomerich.lab.u-ryukyu.ac.jp/)
- 【資料7】『標準小児科学 Standard Textbook 第8版』(内山聖監修 医学書院 2013)(1102365032)西部図書館 医療健康コーナー<4939/188>
- 【資料8】小児慢性特定疾病情報センター「5p-症候群(ごぴーまいなすしょうこうぐん) 」(https://www.shouman.jp/details/13_1_10.html)
- 【資料9】難病情報センター「5p欠失症候群(指定難病199)」(http://www.nanbyou.or.jp/entry/4862 )
- 【資料10】『全国患者会障害者団体要覧』(プリメド社「全国患者会障害者団体要覧」編集室編集 プリメド社 2006)(1102002279) 西部図書館 医療健康コーナー<49803/5>
- 【資料11】佐々木征行「猫なき症候群の長期経過と対応(解説)」(『発達障害医学の進歩』15号 p43-47 2003.04)(0105738558)中央図書館<4939/5/15>
- キーワード
-
- 5p-症候群
- 猫鳴き症候群
- 染色体異常
- 照会先
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- 千葉県立衛生短期大学(現・千葉県立保健医療大学)
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 言葉
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000004108