レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2015/10/09
- 登録日時
- 2015/11/29 00:30
- 更新日時
- 2021/10/24 13:29
- 管理番号
- 6000024461
- 質問
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解決
葉牡丹について、次のことを調べてほしい
①名前の由来、②葉と花の観賞時期、③分類(科・属)、④キャベツと同じ仲間なのかどうか
⑤もともと食用だったものが日本に入ってきて観賞用となったと聞いたが本当か、⑥地域ごと(日本国内)で形が違うと聞いたがどう違うのか
⑦お正月の縁起物とされているのはなぜか、⑧食べることはできるのか。
- 回答
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①「和名は、葉が牡丹の花のように美しいことから。」(『図説草木辞苑』(柏書房)p.294)
「和名葉牡丹は葉の大きい集まりをボタンの花に見立てた名。」(『原色牧野植物大圖鑑』(北隆館)p.274)
「重訂本草綱目啓蒙(1847)一ニ・隰草「甘藍 葉ぼたん(略)葉は油菜より闊大にして厚く(略)冬春の交り紫色に変じ葉みな相抱て重葉紫牡丹花のごとし。故に、はぼたんと云」(『日本国語大辞典 第二版 第十巻』(小学館)p.1355)
「ハボタンの名は山岡恭安の『本草正正譌(ほんぞうせいせいか)』(1778)にボタンナ一名ハボタンと初見する。」(『日本大百科全書 19』(小学館 第二版1995年)p.46)
②「花期/4月」 『よくわかる花の寄せ植え』(日東書院)p.201
「観賞期11月中旬~4月上旬」(『園芸なんでも相談室』(主婦の友社)p.92)
「観賞期11月~3月」(『四季の寄せ植え百科』(ブティック社)p.99)
「観賞期10月下旬~3月上旬」とする一方、「ハボタンは春の草花が出回るころには捨てられてしまうことが多いのですが、実は最も美しいのは春です。」「春には草丈が延び、全体的にきれいな円すい形に育ちます。」「真冬よりも美しくなっています。」とも書かれている。(『NHK趣味の園芸新園芸相談6 草花&花壇』(日本放送出版協会)p.110)
「出回り時期 10~12月/鉢」(『花と葉の色・形・開花時期でひける 花の名前がわかる本』(成美堂出版)p.239)
「秋から冬に紅紫あるいは淡黄または白色を帯びて美しい。春に花茎を伸ばし、淡黄色の花をつける。」(『原色牧野植物大圖鑑』(北隆館)p.274)
「季 新年・冬」(『図説草木辞苑』(柏書房)p.294)
「秋から冬にかけて紅・紫・白・淡黄色などを帯びる。年を越した春先に茎の先端が伸長して先に淡黄色の四弁花を総状につける。」(『日本国語大辞典 第二版 第十巻』(小学館)p.1355)ベニコマチ 名古屋ちりめん中形系 「12~1月の花壇、鉢物」(『原色園芸植物大圖図鑑』p.83)
サンゴ系は3月頃がとくに美しい(『原色園芸植物大圖図鑑』p.84)
③あぶらな科アブラナ属(『原色牧野植物大圖鑑』(北隆館)p.274)
アブラナ科(『よくわかる花の寄せ植え』p.201)
アブラナ科アブラナ属(『花と葉の色・形・開花時期でひける 花の名前がわかる本』(成美堂出版)p.239)
④「キャベツの仲間で、葉に色彩をもたせ、観賞用に改良したもの」(『日本大百科全書 19』)
「植物学的にはキャベツと同一種で、春に咲く花は帯白黄色でキャベツと異ならない。」(『世界大百科辞典 22』)
「キャベツと同種で、葉に色彩をもたせて、観賞できるように改良したもの」(『花卉園芸の事典』(朝倉書店)p.70)
「キャベツなどの仲間で結球しない一群(アセファラグループ)をハボタンやケールといいます。とう立ちしてハノハナのような花を咲かせますが、やはり名前どおり、葉の美しさやバリエーションを楽しむ種類です。」(『色がわかる四季の花図鑑』(主婦の友社)p.178)
⑤「日本で改良された観賞植物だが、本来は野菜としてオランダから導入された。」『大和本草(やまとほんぞう)』(1709年)で貝原益軒は「ハボタンの祖と考えられている紅夷菘(オランダナ)、一名サンネンナを「味よし・・・・植ゑて後三年にして花開く」と書いている。(『日本大百科全書 19』)
「原種は江戸時代に日本に渡来し、オランダ菜と呼ばれていた不結球の緑葉のキャベツで、その後冬を迎えて着色するものに改良された。」(『世界大百科辞典 22』改訂新版 平凡社 2011年 p.746)
「日本には1778年に渡来したといわれ、初めオランダナとよばれた。以来冬期の観賞用に栽培されてきたが、とくに積雪の少ない表日本がその観賞に適するため、この地域での園芸品種や系統が育成された。」(『園芸植物大事典 1』(小学館)p.122)
『大和本草』に「味佳(あじよし)と記されているが、食用として発達せず、観賞用に栽培されてハボタンが生まれた。結球性のキャベツが初めて栽培されたのは幕末、安政年間に入ってからで1855年(安政ニ)ころである。」(『日本大百科全書 6』p.698)
『花の名随筆12 十二月の花』(作品社)p.177「ハボタンの文化史 食用を観賞用の植物に」(今西弘子/著)に詳しく書かれている。
⑥東京丸葉系(江戸ハボタン) 江戸時代から続くもっとも古い系統で、外葉はキャベツに似た丸葉で、耐寒と耐暑性があり、強健で栽培しやすい。
名古屋ちりめん系 ちりめんとケールの縮れ葉の品種から作出されたといわれ、着色したものは華やかさがあった、とくに関西では人気が高い。
大阪丸葉系 葉縁が少し波状を呈する前者との中間型で、比較的着色がはやくて色彩の鮮明なものが多い。
さんご系 ソ連のケールと従来の丸葉系との一代交配種で、切れ葉になる特徴をもった新型ハボタン。耐寒性に優れ、抽だいが遅いため、冬期から春先までの長期間にわたって観賞できる。
(『園芸植物大事典 1』(小学館)p.122)
「品種には、東京丸葉ハボタン(江戸ハボタン)、名古屋縮緬ハボタン、大阪丸葉ハボタンがある」「最近になった、葉形の異なる、切れ葉ハボタンが育成された。」(『日本大百科全書 19』)
「丸葉種(東京ハボタン)とちりめん葉種(名古屋ハボタン)に分けられるが、中間雑種は大阪ハボタンと称され、両方の特性を相半ばしてそなえている。最近キョウナ(京菜)との間に交配が行われて葉が細く切れた切れ葉もあらわれ、また鉢植用に矮性種(わいせいしゅ)も作出されている。」「いずれも紅色系と白色系とがあるが、葉の着色は低温により花芽分化が完了するとあらわれる。」(『世界大百科辞典 22』)
「産地の特徴と葉の縮れぐあいによって東京丸葉系、大阪丸葉系、名古屋ちりめん系、サンゴ系(京都系)、クジャク系などに分けられます。」(『色がわかる四季の花図鑑』(主婦の友社)p.178)
『原色園芸植物大圖図鑑』p.83、84に4品種のイラストあり
『園芸植物大事典 1』(小学館)p.122に大阪ハボタン以外の3品種の写真あり
⑦『色がわかる四季の花図鑑』(主婦の友社)、「実例で見る季節別花壇デザイン」のうち「冬~早春」のページp.228では「ハボタンの大きな形を有効に使いたい」「「ミニハボタンやガーデンシクラメン、スイートアリッサムは冬の寒さに耐える。赤、ピンク、白の配色は、あたたかみだけでなく年の初めを祝うお正月のめでたさを感じさせる。」と書かれている。
『NHK趣味の園芸Q&A~冬』(日本放送出版協会)p.80には「バラの花を思わせるミニハボタンは、寄せ植えやハンギングバスケットの材料として人気が高い」と書かれている。
『四季の寄せ植え百科』(ブティック社)p.99には「正月の鉢植えや飾りでおなじみのハボタンは、冬枯れた風景の中で美しく色づく葉が魅力」と書かれている。
『日本大百科全書 5』(小学館)p.480「門松」の項目には「材料、場所、形式とも全国一律とはいえない。」「ユズリハや橙、昆布を結びつけたり根元には薪を寄せかけたり、屋内のものは米俵を台にしてたてかけたりもする。」と書かれているが、ハボタンの記載はない。
お正月飾りに関する本には、門松や注連飾り(しめかざり)、鏡餅などは書かれているが葉牡丹のことは書かれていなかった。
調査済み資料
『鳩居堂の日本のしきたり豆知識』(マガジンハウス)
『三省堂年中行事事典改訂版』(三省堂)
『花の名随筆12 十二月の花』(作品社)p.177「ハボタンの文化史 食用を観賞用の植物に」(今西弘子/著)によると、1800年頃、江戸は世界でも稀に見る園芸ブームのまっただ中で、江戸の後期には美しく珍しい花が出尽くし、葉の変化にも関心が向けられるようになった。極端な変わりものを求めるあまり、いわゆる奇異なゲテモノが幅を利かす時代。時代のニーズにマッチし、日本の花の分化から見るとやや場違いとも思えるハボタンの園芸的発展を促した。正月用の生け花や寄せ植えに使われた、ということが書かれている。
⑧「本来は野菜としてオランダから導入され」(『日本大百科全書 19』)、「植物学的にはキャベツと同一種」(『世界大百科辞典 22』)だが、「葉に色彩をもたせ、観賞用に改良したもの」(『日本大百科全書 19』)である。渡来した当時、『大和本草』には「味佳(あじよし)と記されているが、食用として発達せず、観賞用に栽培されてハボタンが生まれた」(『日本大百科全書 6』)という記載もある。
調査したどの資料にも「食べられる」とも「食べてはいけない」とも書かれていなかったが、味覚の観点から品種改良されるキャベツと異なり、観賞用に葉の色や形の美しさやバリエーションを品種改良で追求しているハボタンは食べてもおいしくないと推察される。
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
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- 花卉園芸[草花] (627 9版)
- 植物学 (470 9版)
- 参考資料
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- 『原色園芸植物大図鑑』 北隆館 (p.83,84)
- 『園芸植物大事典1』塚本 洋太郎/総監修 小学館 (p.122)
- 『日本国語大辞典第10巻』小学館国語辞典編集部/編集 小学館
- 『日本大百科全書19』 小学館 (p.46)
- 『世界大百科事典22』 平凡社 (p.746)
- 『花卉園芸の事典』阿部 定夫/[ほか]編集 朝倉書店 (p.70)
- 『原色牧野植物大圖鑑 離弁花・単子葉植物編』牧野 富太郎/著 北隆館 (p.274)
- 『色がわかる四季の花図鑑』主婦の友社/編 主婦の友社 (p.178、228)
- 『NHK趣味の園芸Q&A冬』江尻 光一/監修 日本放送出版協会 (p.80)
- 『四季の寄せ植え百科』ブティック社 (p.99)
- キーワード
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- 葉牡丹(ハボタン)
- ハボタン(ハボタン)
- 照会先
- 寄与者
- 備考
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「葉の着色は低温により花芽分化が完了するとあらわれる。」
「花壇、鉢植用に栽培するには種まきを7月上~中旬にするが、生花用としてとくに茎を長く育てるには、丸葉種を4月まきとする。8月中旬すぎにまくと育ちが遅れて葉の着色がみられない。」「初冬に着色して正月の庭園装飾となる。」(『世界大百科辞典 22』)
別名デコラティブケール、ハナキャベツ (『よくわかる花の寄せ植え』p.201)
別名 隠元菜(いんげんな)、甘藍(かんらん)、牡丹菜(ぼたんな)
(『図説草木辞苑』(柏書房)p.294)
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 質問者区分
- 庁内
- 登録番号
- 1000184719