レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2015年05月13日
- 登録日時
- 2018/03/24 15:57
- 更新日時
- 2018/03/24 15:57
- 管理番号
- 千県西-2017-0015
- 質問
-
解決
一つの木に違う色の花が咲くなど、花の色に変化が生じる仕組みを知りたい。接ぎ木ではない。
- 回答
-
以下の資料に、花の色に変化が生じる仕組みについて記述がありましたが、その要因はひとつではなく、まだ明らかになっていない部分も多いことがわかりました。
【資料1】『花の品種改良入門 初歩からバイテクまで』(西尾剛著 誠文堂新光社 2001)
・Ⅲ.品種改良の基礎知識 B 品種改良で目標とする特性 1 花の色
「斑入りと動く遺伝子」(p125-126)
「花に模様があるのは、花弁の部位によって、色素の遺伝子(色素を合成する酵素の遺伝子)の働きが異なるからである。」とした上で、不規則な斑は「ウイルス感染によって色素が合成出来ない細胞が生じる」ことでおこるほか、「他に花を斑入りにする原因としてよく知られているのは、トランスポゾンという動く遺伝子である。」とあり、ウイルスやトランスポゾンという遺伝子によって、花に斑が生じるという解説。
・Ⅳ.より専門的な品種改良の方法 B 選抜と固定法
p167に「突然変異の形質は、変異当代ではキメラとして見られる。成長点の1つの細胞で起こった突然変異が、その細胞が増殖することによって葉や花の一部分に変異形質が表れるため、変異していない組織に変異した組織が共存したキメラとなる。キメラには2つのタイプがある。葉の半分が白いとか、花の一部分が不規則に赤いとかいうようなキメラを区分キメラと呼ぶ。植物体の内側と外側の細胞が異なるようなキメラを周縁キメラと呼ぶ。」との記述がある。また、白梅の一部の枝にピンクの花がついている「ウメの区分キメラ」の写真が掲載されている。
【資料2】『植物の分子育種学』(鈴木正彦編著 講談社 2011)
第15章で花の模様(色素の分布)の形成、変化について、いくつかの要因を解説している。
第15章「花の模様形成」(p167-178)
15.1 「トランスポゾンが関与する花の模様形成」
15.2 「RNAサイレンシングが関与する花の模様形成」
15.3 「花の模様形成に関与するその他の機構」
【資料3】一般社団法人日本植物生理学会「植物Q&A」https://jspp.org/hiroba/q_and_a/
・「サツキ・ヒラドツツジの咲き分けについて」(2010年5月回答)(https://jspp.org/hiroba/q_and_a/detail.html?id=2186)
「サツキの同じ株で赤い花や白い花、白地に赤の斑入りのものなどの花の咲く「咲き分け」を見かけます。これは、遺伝的にどうなっているのでしょうか。」(一部抜粋)という質問がよせられている。
回答には、「結論を申しますと、白い花を咲かせるツツジに赤い花が出現したり、白い花の一部が赤になる原因は、トランスポゾンが関与している可能性が高いということですが、そのことを証明した人はおりません。アサガオでは、トランスポゾンが原因となっている咲き分けが証明されています。」(一部抜粋)とあり、花の種類によって原因が異なる場合があり、「咲き分け」の原因が解明されている花もあれば、そうでない花もあることが記述されている。
・「源平咲きの桜はありますか?」(2006年4月回答)(https://jspp.org/hiroba/q_and_a/detail.html?id=590)
回答で、「源平咲き」の仕組みについて言及されているが、まだ解明されていない部分もあり、今後の研究課題と記述されている。
・「紫陽花の色について」(2007年7月回答)(https://jspp.org/hiroba/q_and_a/detail.html?id=1340)
「陽花の付いている木、一本に対して、違う色が幾つか付いているのを見かけます。何故同じ木なのに、色が違う花びら(がく)が付くのでしょうか?」(一部抜粋)という質問が寄せられており、回答は以下の通りである。
「アジサイの色の違いは、アルミニウムイオンの量にも影響されますが、実はそれ単独ではなく、液胞のpHや助色素(自身は無色でアントシアニンの発色を助ける有機分子)の構造やその量の違いにも影響されますので一概には言えませんが、細胞毎にそれらの数量に違いがあることは確かです。」(一部抜粋)
【資料4】asahi.com「ののちゃんのDO科学記事」(http://www.asahi.com/be/dokagaku/)
質問「なぜ同じ木に2色の花が?」(2005年9月20日掲載)(http://www.asahi.com/edu/nie/tamate/kiji/TKY200509200144.html)
ウメやモモの木に紅白の花がつくことを「源平咲き」と紹介し、その仕組みを解説している。
【資料5】細川宗孝「花の模様形成メカニズム」(『京大農場報告』23号 2014.12)p7-12
(http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010891735.pdf)
「花の模様は一枚の花弁内で見られる場合と、花弁ごとに異なる色が発現し、花全体として模様がある場合に分けられる。」(p7)として、模様が出現する原因をいくつか挙げ、解説する。
【資料6】『エピジェネティクスの生態学 環境に応答して遺伝子を調節するしくみ 種生物学研究 第39号』(種生物学会編 文一総合出版 2017)
星野敦「第2章 アサガオの模様を生み出すエピジェネティクス」(p63-80)
アサガオの模様の一部は「トランスポゾンの転移が原因でできている」が、「筆者がアサガオの多様な模様がつくり出される仕組みについて調べてきた結果,トランスポゾンの転移が原因でできる模様は,ほとんどないことがわかってきた」とし、アサガオの模様は「『トランスポゾンだけではない』ことが明白になって」おり、その原因の一つは「エピジェネティクス」(「細胞状態の柔軟性や安定性が,DNAの塩基配列の変化を伴うことなく実現されるメカニズム」(p3))であると述べられている。
(インターネット最終アクセス:2017年11月17日)
- 回答プロセス
-
園芸(NDC620)や作物栽培(NDC615)の資料を確認。「トランスポゾン」、「区分キメラ」などのキーワードを得て、自館蔵書検索(https://www.library.pref.chiba.lg.jp/licsxp-iopac/)、CiNii Articles「日本の論文をさがす」(http://ci.nii.ac.jp/)、google(https://www.google.co.jp/)等で検索。
(参考)
以下の資料を確認しましたが、直接回答に繋がる記述はありませんでした。
『植物育種学辞典』(日本育種学会編 培風館 2005)
『植物育種学 交雑から遺伝子組換えまで』(鵜飼保雄著 東京大学出版会 2003)
『植物病原アトラス カラー版』(米山勝美編集 ソフトサイエンス社 2006)
- 事前調査事項
- NDC
-
- 遺伝学 (467 9版)
- 作物栽培.作物学 (615 9版)
- 花卉園芸[草花] (627 9版)
- 参考資料
-
- 【資料1】『花の品種改良入門 初歩からバイテクまで』(西尾剛著 誠文堂新光社 2001)(2101347541)
- 【資料2】『植物の分子育種学』 (鈴木正彦編著 講談社 2011)(2102472179)
- 【資料3】一般社団法人日本植物生理学会「植物Q&A」(https://jspp.org/hiroba/q_and_a/)
- 【資料4】asahi.com「ののちゃんのDO科学記事」(http://www.asahi.com/be/dokagaku/)
-
【資料5】細川宗孝「花の模様形成メカニズム」(『京大農場報告』23号 2014.12)p7-12
(http://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010891735.pdf) - 【資料6】『エピジェネティクスの生態学 環境に応答して遺伝子を調節するしくみ 種生物学研究 第39号』(種生物学会編 文一総合出版 2017)(1102466877)
- キーワード
-
- 花卉栽培
- 遺伝学
- 育種
- 咲き分け
- 源平咲き
- キメラ
- トランスポゾン
- エピジェネティック
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000233118