土井卓治著『石塔の民俗』岩崎美術社にある石塔の写真図版を見てもらったところ、口絵21が実物と非常に似ているとのことで、探している墓の形態が「ラントウ」であることがわかった。同書p.146-154.「ラントウ考」によれば、「岡山県や香川県でラントウとよぶのは、卵塔とは全く異ったもので、小さな家か寺の堂の形をしたもので」、「丁度家型の屋根をもち、その下に四角な箱型にくりとった身部をおき、前面には観音開きの扉があり、従って内部にはかなりの広さの空間ができる。正面の扇や両側面には蓮華文がほられ、屋根棟にはマンジや家紋をほったのもある。」等の説明がある。新谷尚紀ほか編『民俗小事典死と葬送』吉川弘文館p.203-204.では、“卵塔(らんとう)”の見出しのもとに、「一般には石塔の一型式である無縫塔の通称として知られている語であるが、民俗の中では多様な意味で用いられている」とし、民俗上の用例の一つに「岡山県や香川県の一部における祠型の石造墓塔の呼称」であるとしている。 土井卓治著『葬送と墓の民俗』にも、ラントウという語や中世のラントウ、諸例、岡山県の墓制などについて記述がある。凝灰岩(豊島石)を使用しており、総高は70~100センチ位が多いが、170センチという大きなものもある。近世初期から近世中期までに主に作られていて、内部空間には五輪塔、石仏、位牌などを入れている(p.137-146)。ラントウの正面や側面に書いてある文字に関しては、経を刻んでいたり、俗名や戒名を刻んであったりする(p.334-336)。