レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2020年10月10日
- 登録日時
- 2021/03/13 14:04
- 更新日時
- 2021/03/23 11:34
- 管理番号
- 県立長野-20-109
- 質問
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解決
昭和18年の中等学校令を受け、旧制中学の修学年限が1年短縮され4年生で卒業となったらしいが、終戦期における旧制飯田中学の卒業年について知りたい。
- 回答
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1 旧制中学の修学年限を4年制に短縮して卒業させた年について
昭和18年1月の勅令第36号中学校令(4コマ目)【最終確認2021.3.13】第7条で修業年限を4年としている。第16条で昭和18年4月1日から施行となっているが、第20条では、施行の時点で中学校に在籍している者の修業年限は、従前とする、となっている。
これは、18年度入学生から4年制とし、すでに在籍している生徒は5年制のままと受け取れる。この中学校令で対応すれば、18年度入学生(4年制)は昭和21年度(昭和22年3月)で卒業ということになる。
これを受けて、昭和18年4月5日の長野県訓令第11号(『長野県報』昭和18年 訓令p.29) で「修業年限ヲ短縮シタルコト」に触れている。中学校では4年制となることを記しているが、修業年限短縮を中学校令より早く短縮する事由や、運用の詳細には触れていない。
文章全体からは国力増強、逼迫している情勢などが見受けられる。昭和19年中に他にも修業年限短縮を適用する詳細に触れた文書が出ている可能性があるが、当館所蔵資料の範囲では欠号もあるため確認できなかった。また、当時の県報すべてが当館に揃っているわけではないことと、県令、訓令以外は目次などの索引が整備されていない年代もあり悉皆的に調査することはできなかった。
一方で、『長野県飯田中学校・長野県飯田高等学校校史 1』 飯田中学校 飯田高等学校校史編纂委員会編 長野県飯田高等学校同窓会 2000 【N376.4/60a/1】 のp.958下段に
「中学校令施行により中学校も四年制となっていたが、臨時的措置により、一九年度卒業生から適用となったので、この年は四年、五年同時に卒業の年となった。」
とある。また、p.926の資料13「戦時中の飯中生徒動態」の表には、
昭和19年度 卒業数 4年卒 198名 5年卒 130名
昭和20年度 4年卒 41名
となっていた。
『長野県教育史 第15巻』p.327-328に記載のある昭和21年3月の「中等学校修業年限延長ニトモナウ措置ニツキ県通牒」学第176号で、
「(前略)勅令第一〇二号ヲ以テ中等学校令改正セラレタルニ付テハ別紙「中等学校修業年限延長実施ニ関スル措置要項」ニ依リ措置相成度旨其ノ筋ヨリ通牒有之候条右ニ依リ御措置相成リ」
とあり、別紙で
「二、措置 イ 中等学校ノ修業年ハ之ヲ五年ニ限延シ左ノ特例ヲ認ルコト (左ノ例ハ略シマス) ロ 実施期日ハ昭和二十一年二月トスルコト ハ 適用範囲ハ中学校、高等女学校及実業学校トシ現ニ在学スル生徒ニ付テモ之ヲ適用スルコト 但シ現ニ最高学年ニ在スル者(中等学校令第十九条ノ規定ノ適用ヲ受クル課程ニ係ル者ヲ除ク)ハ本人ノ希望ニ拠リ昭和二十年度ニ限リ卒業セシムルヲ得ルコト」
としている。なお、昭和20年10月1日の「長野県報」に、陸海軍諸学校出身者、在学者の公立中学校への復帰、編入学についての告示409号が出ている。この編入学先の学年は、中等学校第四学年が最高学年になっていた。(『長野県教育史 第15巻』p.300-302)
なお、飯田市立中央図書館が卒業生名簿を所蔵していたので照会したところ、『会員名簿 平成2年11月1日現在』 長野県飯田高等学校同窓会編・刊 1990 に昭和21年度卒業生(S.22年3月)の名簿も掲載されているとのこと。
- 回答プロセス
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1 問い合わせの「中学校令」をみる。国立国会図書館デジタルコレクションで確認することができた。
2 旧制飯田中学(現・長野県飯田高等学校)の学校史を調べる。臨時的措置により(修業年限短縮の適用学年が)19年度卒業生から、とわかる。ただし、適用の事由については記述がない。
3 所蔵する『長野県報』昭和18年度以降で、訓令等確認する。欠号が多く、この臨時的措置に関する訓令、告示、通達など確認できない。
4 『長野県教育史』を調べたが、昭和21年3月に県通牒が出ており、修業年限を5年に延長している。但し書きがあり、現最高学年においては、本人の希望により20年度(昭和21年3月)に限り卒業させることができたようだ。
5 中学校令と県からの訓令との間に、どのような変更があったのかを、『長野県教育史』『長野県史』などの所蔵資料を調べたが、変更が相次いだことや戦時中のことでもあり、変更理由の記述は確認できなかった。
<調査資料>
・『長野県史 近代資料編 第9巻』
長野県編 長野県史刊行会 1985 【N209/11-1/9】p.485-493
・『長野県教育史 第15巻』 長野県教育史刊行会編・刊 1980 【N372/52/15】
・『長野県報』昭和17年、18年、19年、20年、21年
・『長野県飯田中学校・長野県飯田高等学校校史 1』
飯田中学校 飯田高等学校校史編纂委員会編 長野県飯田高等学校同窓会 2000 【N376.4/60a/1】
・『長野県教育史 第3巻』 長野県教育史刊行会編・刊 1983 【N372/52/3】
・『長野県教育史 第15巻』 長野県教育史刊行会編・刊 1980 【N372/52/15】
- 事前調査事項
- NDC
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- 教育政策.教育制度.教育行財政 (373 10版)
- 教育史.事情 (372 10版)
- 日本史 (210 10版)
- 参考資料
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長野県. 長野県報. 長野県, 1900.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000000017616-00 (昭和18年 訓令p.29) -
飯田中学校飯田高等学校校史編纂委員会 著 , 飯田高等学校同窓会. 長野県飯田中学校長野県飯田高等学校校史 1. 長野県飯田高等学校同窓会, 2000.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002927534-00 ( 【N376.4/60a/1】 p.958下段 p.926の資料13「戦時中の飯中生徒動態」) -
長野県教育史刊行会 編. 長野県教育史 第15巻 (史料編 9). 長野県教育史刊行会, 1980.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001488607-00 (長野県教育史 第15巻』p.327-328)
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長野県. 長野県報. 長野県, 1900.
- キーワード
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- 旧制中学
- 修学年限
- 中学校令
- 学徒動員
- 学徒勤労動員
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000295213