レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2018年03月01日
- 登録日時
- 2018/07/02 00:30
- 更新日時
- 2020/04/18 00:30
- 管理番号
- 0B18004807
- 質問
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解決
刑事施設に収容されている人に固定資産税の納税通知書を送る場合は、居住地と刑事施設のどちらに送ればよいか、法律、判例など明文化されたものはないか。
- 回答
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商用データベース「JapanKnowledge」(現代用語の基礎知識 2019)の「固定資産税」の項によると、「土地・家屋および償却資産といった固定資産にかかる市町村税。」とあります。
地方税法第20条「書類の送達」の項を確認しましたが、刑事施設の拘留中の人への送付について、記載はありませんでした。そのため、国税に関連する法令を確認しました。参考となる資料は次のとおりです。
1 国税通則法について、当館所蔵資料を調べると、次のような記述のある資料が見つかりました。
・『図解国税通則法 平成29年版』(黒坂 昭一/編著、大蔵財務協会、2017.9)
p.34 「(2) 送達すべき場所」として、「在監者に対する送達 その者の住所等 住所等が不明な場合及び本人のために書類を受け取るべき者がない場合は、その者が在監している刑務所等(国税通則法基本通達12-5)」との記載があります。
・『最新判例による国税通則の法解釈と実務 :3訂版 -国税通則関係主要裁判例の紹介と解説-』
(佐藤 孝一/著、大蔵財務協会、2010.4)
p.757-758に「在監者に対する送達につき、刑務所に在監した事実のみによって、その者が従前から有した住所を撤廃したものと認めることは相当ではなく、在監者であっても、その家族が従前の住所に居住し、在監者との密接な連絡のもとに同人に代わって経済活動を営む例が多々あり、このような場合は毎年回帰的かつ大量に行われ、しかも迅速性が要請される税務関係書類の送達に関する通則法12条の適用上は、留守家族の住所地を在監者の生活関係の中心的場所すなわち住所とみてもさしつかえない」とした東京高裁昭53年3月14日判決」
「通則法には在監者に対する書類の送達について特別な規定が存しないけれども、民事訴訟法168条を準用して、監獄の長に送達すべきものと解するのが相当」として、(略)納税者が拘留されていた拘置支所長に適法に送達されたことから、納税者に対し各通知書が有効に送達されたものと認定した福岡高裁昭和55年6月30日判決(税資113号985頁)、(なお、前記東京高裁昭和53年3月14日判決は、「在監者に対する送達について民事訴訟法168条のような規定を欠く通則法のもとにおいては、在監者に対しても同法12条により本人の住所又は居住に送達しても、送達の効力を生じる」としている)」
2 前述1にある「国税通則法基本通達12-5」は、国税庁ホームページに、
「第4節 送達 第12条関係 書類の送達 (在監者に対する送達) 5 送達を受けるべき者が在監中の場合においても、その者の住所等に書類を送達するものとする。この場合、住所等が不明の場合および本人のために書類を受けとるべき者がない場合には、その者が在監している刑務所等に書類を送達するものとする。」と記載があります。
国税庁「第4節 第12条関係 書類の送達」
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/tsusoku/01/04/12.htm#a-05 (2018.6.22確認)
3 前述1にある「民事訴訟法168条」は、
『新民事訴訟法の概要と新旧旧新対照条文』(住吉 博/編 法学書院、1996.7)p.67によると、新民事訴訟法第102条3項「在監者に対する送達は、監獄の長にする。」に変更になっていると記載があります。現行の条文は以下で確認できます。
「e-Gov(イーカブ)」「民事訴訟法」 第102条3項
http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=408AC0000000109&openerCode=1#534 (2018.6.22確認)
4 刑事訴訟法 第54条では、「書類の送達については、裁判所の規則に特別の定のある場合を除いては、民事訴訟に関する法令の規定(公示送達に関する規定を除く。)を準用する。」とあります。
「e-Gov(イーカブ)」「刑事訴訟法」第54条
http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=323AC0000000131#208 (2018.6.22確認)
5 以下の関連する判例がありました。
裁判所ホームページ
最高裁判所第一小法廷 昭和54年10月18日[昭和54(オ)678]
裁判要旨は、「民訴法一六八条所定の送達は、監獄の長(代用監獄である警察署については当該署長)に対する送達があつたときに在監者に対してその効力を生じる。」なお、この判例要旨にある民訴法一六八条は、
『新民事訴訟法の概要と新旧旧新対照条文』(住吉 博/編 法学書院、1996.7)
p.67によると、現在の民事訴訟法第102条3項にあたる旨の記述があります。
裁判所ホームページ「最高裁判所判例集」
最高裁判所第一小法廷 昭和54年10月18日[昭和54(オ)678]
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=64321 (2018.6.22確認)
- 回答プロセス
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1 地方税の第20条に書類の送達の項が見つかるが、刑事施設の拘留中の人への送付についての記載は見当たらず。
2 国税通則法の第12条に書類の送達の項が見つかるが、刑事施設の拘留中の人への送付についての記載は見当たらず。
3 国税通則法について、当館所蔵資料を調べると資料1、2、3が見つかる。
4 国税庁のホームページを調べ、資料4が見つかる。
5 資料5の第102条に送達の項が見つかる。条文の改正履歴を確認するために当館所蔵資料を探すと資料4が見つかる。
6 資料6の第54条に書類の送達の項が見つかる。
7 判例を調べ、裁判所ホームページの裁判例検索画面で、“在監者”ד送達”をキーワードにして検索すると、刑事施設に収容中の人に書類を送達する件に関する資料7が見つかる。
- 事前調査事項
- NDC
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- 地方財政 (349 9版)
- 租税 (345 9版)
- 参考資料
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- 当館書誌ID <0014368678> 図解国税通則法 平成29年版 黒坂 昭一/編著 大蔵財務協会 2017.9 978-4-7547-2439-9 (資料1)
- 当館書誌ID <0012071708> 最新判例による国税通則の法解釈と実務 :3訂版 -国税通則関係主要裁判例の紹介と解説- 佐藤 孝一/著 大蔵財務協会 2010.4 978-4-7547-1691-2 (資料2)
- 当館書誌ID <0000563038> 新民事訴訟法の概要と新旧旧新対照条文 住吉 博/編 法学書院 1996.7 9784587541408 (資料3)
- 国税庁ホームページ 第4節 第12条関係 書類の送達 https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/tsusoku/01/04/12.htm#a-05 (2018.6.22確認)(資料4)
- e-Gov法令検索 民事訴訟法 http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=408AC0000000109&openerCode=1#534 (2018.6.22確認)(資料5)
- e-Gov法令検索 刑事訴訟法 http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=323AC0000000131#208 (2018.6.22確認)(資料6)
- 裁判所ホームページ 裁判例情報 在監者に対する送達の効力発生時期(最高裁判所第一小法廷 昭和54年10月18日[昭和54(オ)678]) http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=64321 (2018.6.22確認)(資料7)
- キーワード
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- 地方税
- 固定資産税
- 納税通知書
- 国税
- 送達
- 居住地
- 刑事施設
- 在監
- 国税通則法
- 国税通則法基本通達
- 地方自治法
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 内容種別
- 質問者区分
- その他(庁内)
- 登録番号
- 1000237839