レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2015年1月21日
- 登録日時
- 2015/11/09 14:56
- 更新日時
- 2020/04/15 11:36
- 管理番号
- 15-02
- 質問
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解決
「集団利益」、特に「職業の集団利益」について調べている。これに関わるフランス破毀院の判決の和訳が見たい。また、「職業の集団利益」に関する日本を対象にした議論や先行研究が知りたい。
- 回答
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回答プロセス参照
- 回答プロセス
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利用者は組合単位での訴訟について調べており、これに「職業の集団利益」の概念が関係しているとのこと。
日本では、組合単位で訴訟を起こすことができない模様。
■ 事前調査資料の確認
杉原論文で以下の点が判明した。
・探しているのは、1913年4月5日破毀院連合部判決。
・この判決は現在の労働法L411-11条の元になっており、条文中に「職業の集団利益」という言葉が含まれる。
・この判決は、団体訴訟・組合訴訟と関連している。
・日本では、団体訴訟は判例上認められておらず、立法化もされていない。
なお、『有斐閣法律用語辞典』第4版(2012年)によれば、「団体訴訟」の意味は以下の通り。
…狭義では、特定個人又は団体自身の利益でなく、消費者や地域住民など多数人一般に共通する
集団的ないし生活的利益を侵害されたとして、これら多数人を法律上又は事実上代表する団体(例えば、
消費者行政につき消費者団体、環境行政につき自然保護団体等)が原告となって提起する訴訟。…
■ 1913年4月5日破毀院連合部判決の和訳の調査
1.Googleで「破毀院連合部 1913年4月5日 判例」などのキーワードを検索。
・小野寺倫子「人に帰属しない利益の侵害と民事責任(1)」北大法学論集62巻6号(2012年)がヒット。
→ p.56 に判旨が掲載。また、p.59 によれば、職業組合の集団訴権は、現在は労働法典L2132-3条で
規定されている。
2.1 の小野寺論文(注)40 より、以下の論文を確認。
・荻村慎一郎「フランスにおける団体訴訟と訴訟要件--民事・刑事交錯領域での発展と法律上の授権による
統御のメカニズム」『法学協会雑誌』121巻6号(2004年)
→ 「集団的利益」述べている他、p.797 下段より1913年4月5日破毀院判決に関する解説がある。
3.1 の小野寺論文他より、1913年4月5日破毀院判決は労働法と関わりがあることが判明したため
労働法関連資料に記述がないか確認。
OPACで「フランス 労働法」などのキーワードを検索した他、書架をブラウジング。
・ポール・ピック著、協調会訳『労働法』改訂第6版(協調会 1932年)
・ミシェル・デスパックス著、神尾真知子・ 野間賢訳『労働法』(白水社 1993年)
・大和田敢太『フランス労働法の研究』(文理閣 1995年)
・外尾健一『フランスの労働組合と法』(信山社出版 2002年)
・外尾健一『フランス労働協約法の研究』(信山社出版 2003年)
↓
いずれも1913年4月5日破毀院判決の和訳は見当たらず。
※ポール・ピックの著作にはL411についての解説があり、
後日利用者に紹介したところ、破毀院判決と同時代の解説ということで興味を持たれていた。
原書は1931年発行。
■ 「職業の集団利益」に関する学説の調査
CiNii・当館契約データベースD1-Lawで「団体訴権」「団体訴訟」「集団利益」「集団的利益」「集合的利益」
「集団訴権」「組合訴権」「組合訴訟」等のキーワードを検索。ヒットした中から以下の論文を確認した。
・福永有利「新訴訟類型としての「集団利益訴訟」の法理-環境保護訴訟・消費者保護訴訟についての一考察」
『民事訴訟雑誌』40号(1994年)
・宮澤俊昭「環境法における私法の役割(後編)(1)~(3)」『近畿大学法学』51巻3・4号・52巻1号・52巻2号(2004年)
・宮澤俊昭「集合的・公共的利益に対する私法上の権利の法的構成についての一考察(1)~(5)」
『近畿大学法学』54巻3号(2006年)、54巻4号(2007年)、56巻3号(2008年)、57巻1号・57巻2号(2009年)
・大塚直「環境訴訟と差止の法理――差止に関する環境共同利用権説・集団利益訴訟論・環境秩序論をめぐって」
『民法学における法と政策―平井宜雄先生古稀記念』(有斐閣 2007年)
・宮澤俊昭「団体訴訟の実体法的基礎―集合的・公共的利益をめぐる民法と行政法の関係」
『民事法の現代的課題 : 松本恒雄先生還暦記念』(商事法務 2012年)
・中川丈久「問題提起 : 行政法と民事法に集団的利益・集合的利益はどのように存在するのか
(特集 公法と私法における集団的・集合的利益論の可能性)」『民商法雑誌』148巻6号(2013年)
・吉田克己「保護法益としての利益と民法学 : 個別的利益・集合的利益・公共的利益
(特集 公法と私法における集団的・集合的利益論の可能性)」『民商法雑誌』148巻6号(2013年)
・安藤 馨「集団的行為主体と集団的利益 : その実在性を巡る短い覚書
(特集 集団的・集合的利益論の試み(1))」『民商法雑誌』150巻4・5号(2014年)
・上野達弘「 著作権法と集団的・集合的利益 (特集 集団的・集合的利益論の試み(2))」
『民商法雑誌』150巻6号(2014年)
・前田 健「知的財産法と集団的利益 : 標識法の場合 (特集 集団的・集合的利益論の試み(2))」
『民商法雑誌』150巻6号(2014年)
また、上記の大塚論文で紹介されていた以下の文献を確認。
・福永有利『民事訴訟当事者論』(有斐閣 2004年)
↓
日本での議論では、消費者保護や環境保護が議論の中心と思われ、
日本を対象に「職業の集団利益」「組合訴権」について論じた論文は見当たらなかった。
*後日『論究ジュリスト』12号(2015年)を発見。特集「団体訴訟の制度設計」として6論文が掲載されていたが
組合訴権に関する論文は見受けられなかった。
- 事前調査事項
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杉原丈史「フランスにおける集団利益擁護のための団体訴訟」『早稲田法学』72巻2号(1997年)
荻村慎一郎「フランスにおける団体訴訟について」『本郷法政紀要』10号(2001年)
- NDC
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- 民法.民事法 (324 7版)
- 司法.訴訟手続法 (327 7版)
- 参考資料
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杉原丈史「フランスにおける集団利益擁護のための団体訴訟」『早稲田法学』72巻2号(1997年)
https://hdl.handle.net/2065/2269 (2020年3月27日最終確認) - 荻村慎一郎「フランスにおける団体訴訟について」『本郷法政紀要』10号(2001年)
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小野寺倫子「人に帰属しない利益の侵害と民事責任(1)」北大法学論集62巻6号(2012年)
https://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/bitstream/2115/48746/1/HLR62-6_010.pdf (2020年3月27日最終確認) - 荻村慎一郎「フランスにおける団体訴訟と訴訟要件--民事・刑事交錯領域での発展と法律上の授権による統御のメカニズム」『法学協会雑誌』121巻6号(2004年)
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杉原丈史「フランスにおける集団利益擁護のための団体訴訟」『早稲田法学』72巻2号(1997年)
- キーワード
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- 集団利益
- 職業の集団利益
- 破毀院
- フランス労働法
- 団体訴権
- 団体訴訟
- 集団訴権
- 組合訴訟
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 質問者区分
- 学生
- 登録番号
- 1000183431