レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2020年03月26日
- 登録日時
- 2020/03/26 18:13
- 更新日時
- 2020/04/04 10:18
- 管理番号
- 県立長野-19-110
- 質問
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解決
江戸時代中期(1750年代後半)の信濃からの出稼ぎ人について長野県内の文書類を見たい。翻刻されたもので構わない。
- 回答
-
江戸時代の長野県内は多数の知行区域にわかれており、現在の長野県内を4分割した地域名で列挙していくと次のようになる。
東信 上田領、小諸領、岩村田領、田野口領、祢津知行所、矢沢知行所、下県知行所、高野町知行所、根々井知行所、幕府領
南信 高島領、諏訪上社領、諏訪下社領、飯田領、高須領、白河領、高遠領、飯田領、知久知行所、座光寺知行所、小笠原知行所、近藤知行所、太田知行所、千村御預所、幕府領
中信 松本領、高遠領、高島領、埴原知行所、百瀬知行所、笹部知行所、幕府領、徳川家康領、尾張領
北信 松代領、飯山領、上田領、須坂領、椎谷領、塩崎知行所、善光寺領、戸隠山神領、幕府領
『長野県史近世 史料編』は、これら地域にかかわる文書類をその地域別領ごとに、「領知」「戸口」「村と町」「土地」「貢租・課役」「農業」「林野」「諸産業」「交通・運輸」「災害」「騒動」「文化」で分類し、年代順に翻刻を掲載している。各巻末の「史料総目次」から、出奉公にかかわりのありそうなもので、寛延初から安永末までで調査した。なお、長野県史は、県内すべての文書を網羅しているわけではない。
<東信>
『長野県史 近世史料編 第1巻(2)東信地方』長野県編 長野県史刊行会 1972 【N209/11/1-2】
・ 354 宝暦五年二月 御影新田村長助等遠国出奉公につき帳除願(p.781)
(奉公先 明記無 江戸という記述はない)
・ 356 安永三年三月 安原村人別改帳(p.782-786)
・ 357 安永八年三月 春日村宗旨人別控帳(p.786-791)
(出人 という記述と人数のみ)
・ 338 安永十年三月 軽井沢村五人組改帳(p.791-797)
(内容は定書のようになっており、他所へ罷り出る場合の条に、江戸について2行ほど記述がある)
『長野県史 近世史料編 第2巻(1)東信地方』長野県編 長野県史刊行会 1978 【N209/11/2-1】
・ 118 寛延四年四月 小泉組他所奉公人名前帳(p.214-218)
<南信>
『長野県史 近世史料編 第3巻 南信地方』長野県編 長野県史刊行会 1981 【N209/11/3】
・ 252 宝暦三年五月 他所奉公取締触書(p.502-505)
(特に江戸奉公について一条書かれている)
・ 254 宝暦七年十月 乙事村江戸半季稼願(p.505-506)
・ 255 宝暦十二年十二月 他所稼年季用捨触(p.506-507)
(江戸についてを取り上げたものではない)
・ 264 寛政元年九月 江戸稼者宿世話方触(p.510-511)
(期間外ではあるが、江戸の世話人について触れたもの)
・『長野県史 近世史料編 第4巻(2)南信地方』長野県編 長野県史刊行会 1981 【N209/11/4-2】
・ 1150 安永三年二月 他出人宗門人別扱方申渡(p.115-118)
(他所に奉公に出る場合の扱いについての条がある)
・ 1151 安永十年三月 飯田十八番町総人数・家数目録(p.118-119)
(奉公に出ている者の人数のみ)
・ 1162 安政二年正月 上飯田村重松江戸出稼につき宗門人別離願(p.145)
<中信>
・『長野県史 近世史料編 第5巻(1)中信地方』長野県編 長野県史刊行会 1981 【N209/11/5-1】
・ 140 寛延四年二月 安曇郡中萱村宗門改五人組帳(p.396-408)
<通史>
『長野県史 通史編 第5巻 近世』長野県編 長野県史刊行会 1988 【N209/11-4/5】
第4章 産業の発達と貨幣 第2節 様々な生業 に、「江戸かせぎ」の項目がたてられている(p.439-445)。このうち、p.444に江戸冬季奉公を容認する事例を挙げている。この原文は、『長野県史 近世史料編 第2巻(1) 東信地方』のp.732-735 に
255 安永八年十月 代官平岡彦兵衛申渡前山村請書
の全文がある。
また、県内の市町村史誌の目次を検索することができる「長野県市町村誌目次検索データベース」【最終確認2020.4.2】で、「出稼」をキーワードに調べ(刊行されたすべての旧村を含めた市町村を検索できるわけではない。)、ヒットした史誌を確認していった。
<東信>
・『真田町誌 第3巻 歴史編下』真田町誌編纂委員会編 真田町誌刊行会 1999 【N221/156/3】
家出をした者が、江戸でしばらく奉公し帰村した「帰村願」について記述があるが、願文の原文、翻刻の記載はない。(p.186-187)
・『佐久町誌 歴史編2』 佐久町誌刊行会編・刊 2005 【N223/48/3-2】
上海瀬村の宗門帳から作成した奉公人数の表に、江戸奉公の人数があった。(p.726)
<南信>
・『茅野市史 中巻』茅野市編・刊 1987 【N241/111/2】
第8章諸産業と経済 第4節出稼と日雇 に記述があった。(p.838-842)※原文は『茅野市史 史料集』
・『茅野市史 史料集』茅野市編・刊 1991 【N241/111/4】
250 宝暦三年六月十日 出稼に付御郡中被仰出(p.556-558)
252 明和七年八月 店請証文(p.558-559)
253 安永三年十月 芹沢村江戸半季書上帳(p.559-560)
・『富士見町史 上巻』富士見町編 富士見町教育委員会 1991 【N241/121/1-1】
第5編 近世 第6章 第3節 出稼ぎと奉公人 に、「富士見町乙事区所蔵文書」から作成した付表等を付けた記述があった。(p.912-913)
・『伊那市史 歴史編』伊那市史編纂委員会編 伊那市史刊行会 1984 【N242/86/3】(p.834-836)
江戸稼ぎについての記述はないが、石工として他国へ出稼ぎをしている。出稼ぎ先に武州も含まれているが、事例としては記載されていない。
・『高遠町誌 上巻 歴史2』高遠町誌編纂委員会編 高遠町誌刊行会 1983 【N242/79/1-2】(p.67-68,275-276)
江戸稼ぎが多かった記述があるが、江戸と言及した事例としての文書は掲載されていなかった。
<中信>
・『大町市史 第3巻』大町市史編纂委員会編 大町市 1986 【N231/36/3-1】(p.297-308)
出奉公人の推移の表があるが、江戸に言及した記述は見られない。
<北信>
・『長野市誌 第4巻』長野市誌編さん委員会編 長野市 2004 【N212/318/4】(p.43-44,46-47)
宝暦七年、藩による奉公人徴発について村が、人が集まらないので江戸で集めてほしい旨の願いを出していることが書かれている。この原文は、『長野市誌 第13巻』長野市誌編さん委員会編 長野市 1997 【N212/318/13】(p.265-266)に掲載されている。
・『豊野町誌』豊野町誌刊行委員会編・刊 2000 【N212/18a/2】(p.354)
宝暦四年の事例として、江戸屋敷へ奉公に言った夫が譜代となったため、人別帳から抜いてほしい旨の願いがあったことを挙げているが、原文の記載はない。
・『小布施町史』 市村郁夫編 小布施町史刊行会 1975 【N214/40】(p.554-556)
村に残る「宗門御改帳」「宗門人別帳」から作成した江戸へ出稼ぎに出たものの名前と行先の町(商家の屋号等は記載がない)が表になっている。武家奉公、商家稼の別も記載がある。
・『野沢温泉村史』野沢温泉村史編纂委員会編 野沢温泉村 1974 【N213/43】(p.297-308)
矢島村の史料をもとに、江戸奉公の遷移の記述がある。また、奉公先の武家の名前が表中にある。しかし、文書の例示はない。
・『木島平村誌』木島平村誌刊行会編 木島平村誌刊行会 1980 【N213/58】(p.583,602)
「農間余業」のところに、『村差出明細帳』からの書き出しとして、
「安永二年(一七七三) 山口新田村 若者は冬稼ぎに江戸表へ参り申し候。女は木綿・麻布少々宛用い仕候。」「安永七年計見村 男はねこむしろ・女は麻布」
の記載があるとしている。
また、庚新田村については宝暦十四年に七名が江戸での奉公をしていると書かれている。しかし、どちらのページも文書からの翻刻全文ではありません。
- 回答プロセス
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1 『長野県史 通史編 第5巻 近世』で、江戸期の出稼ぎの概要を確認する。江戸稼ぎ、出奉公などと呼ばれていたこともわかる。
2 『長野県史 近世史料編』は、長野県を四つの地域にわけ、各藩ごとに関係文書を掲載している。それぞれ内容ごとに分類され、年代順に整理されている。巻末(3分冊なら3巻目)に所収史料一覧があるので、利用者から依頼された年代のものを調べていく。
3 所蔵する県内すべての史誌類を悉皆的に調べることはできないため、「長野県市町村誌目次検索データベース」に収録されている市町村について、「出稼」をキーワードに調べ、ヒットしたものについて確認していく。
<調査済み資料>
・『長野県史 近世史料編 第1巻(1) 東信地方』長野県編 長野県史刊行会 1971 【N209/11/1-1】
・『長野県史 近世史料編 第2巻(2) 東信地方』長野県編 長野県史刊行会 1979 【N209/11/2-2】
・『長野県史 近世史料編 第4巻(1) 南信地方』長野県編 長野県史刊行会 1981 【N209/11/4-1】
・『長野県史 近世史料編 第5巻(2) 中信地方』長野県編 長野県史刊行会 1981 【N209/11/5-2】
・『長野県史 近世史料編 第6巻(1) 中信地方』長野県編 長野県史刊行会 1981 【N209/11/6-1】
・『長野県史 近世史料編 第7巻(1) 北信地方』長野県編 長野県史刊行会 1981 【N209/11/7-1】
・『長野県史 近世史料編 第7巻(2) 北信地方』長野県編 長野県史刊行会 1981 【N209/11/7-2】
・『長野県史 近世史料編 第7巻(3) 北信地方』長野県編 長野県史刊行会 1982 【N209/11/7-3】
・『長野県史 近世史料編 第8巻(1) 北信地方』長野県編 長野県史刊行会 1975 【N209/11/8-1】
・『長野県史 近世史料編 第8巻(2) 北信地方』長野県編 長野県史刊行会 1976 【N209/11/8-2】
・『飯山市誌 歴史編上』飯山市誌編纂委員会編 飯山市誌編纂専門委員会 1993 【N211/48/2-1】
・『戸倉町誌 歴史編 上』戸倉町誌編纂委員会編 戸倉町誌刊行会 1991 【N216/51/1-2】
・『坂城町誌 歴史編』坂城町誌刊行会編・刊 1979 【N216/37/2】
・『小川村誌』小川村誌編纂委員会編 小川村 1975 【N212/121】
・『臼田町誌 第4巻 近世編』臼田町誌編纂委員会 佐久市臼田町誌刊行会 2008 【N223/106/4】
・『八千穂村誌 第4巻 歴史編』八千穂村誌編纂委員会編 八千穂村誌刊行会 2002 【N223/102/4】
・『小海町 歴史編』小海町誌刊行委員会編 小海町 1997【N223/20/2】
・『川上村誌 通史編』川上村誌刊行会編・刊 2009 【N223/63/4】
・『原村誌 下』原村役場編 原村 1993 【N241/109/2】
・『長谷村誌 第3巻歴史編 下』長谷村誌刊行委員会編・刊 1997 【N242/123/3-2】
・『中川村誌 中巻』中川村誌編纂刊行委員会編・刊 2006 【N242/169/2】
・『清内路村誌 下』清内路村誌編纂委員会編 清内路誌刊行会 1982 【N243/117/2】
・『生坂村誌 歴史・民俗編』生坂村誌編纂委員会編 生坂村誌刊行会 1997 【N233/117/2】
・『日義村誌 歴史編 下』日義村誌編纂委員会編・刊 2002 【N234/105/1-1】
- 事前調査事項
- NDC
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- 中部地方 (215 10版)
- 参考資料
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長野県 編 , 長野県. 長野県史 近世史料編 第1巻 2 東信地方. 長野県史刊行会, 1972.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I077686387-00 (【N209/11/1-2】) -
長野県史 近世史料編 第2巻1. 長野県, 1978.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I005528501-00 (【N209/11/2-1】) -
長野県. 長野県史 近世史料編 第3巻 (南信地方). 長野県史刊行会, 1975.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001228634-00 (【N209/11/3】) -
長野県 編 , 長野県. 長野県史 近世史料編 第4巻 2 (南信地方). 長野県史刊行会, 1982.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001580119-00 (【N209/11/4-2】) -
長野県 編 , 長野県. 長野県史 近世史料編 第5巻 1 中信地方. 長野県史刊行会, 1973.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I077686394-00 (【N209/11/5-1】) -
真田町誌編纂委員会/編 , 真田町誌編纂委員会 , 真田町誌編纂委員会. 真田町誌 第3巻 歴史編下. 真田町誌刊行会.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I059000703-00 (【N221/156/3】)
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長野県 編 , 長野県. 長野県史 近世史料編 第1巻 2 東信地方. 長野県史刊行会, 1972.
- キーワード
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- 出奉公
- 江戸稼ぎ
- 農閑稼ぎ
- 作間稼ぎ
- 出稼ぎ
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介 事実調査
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000279604