レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2022年8月2日
- 登録日時
- 2022/07/25 10:58
- 更新日時
- 2022/11/11 11:05
- 管理番号
- 中央0081-220724
- 質問
-
解決
明治天皇が春日部市で昼食をとったという事実が今まで伝えられなかったのはなぜか?
記念碑等は建てられなかったのか。
- 回答
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明治天皇巡幸が行われた頃、当該の場所を史蹟として残したり記念碑を建てたりするのはあくまで地方に任せられており、文部省として「聖跡」が指定、保存されたのは史蹟名勝天然記念物保存法を受けての1930年代に入ってからであった。史実としては複数の資料に記載があるが、記念碑等は建てられなかった。
天皇巡幸に関連する資料⓵~⓽を提供。
- 回答プロセス
-
1)市内OPACで検索 キーワード「明治天皇」「春日部」
⓵『明治天皇と春日部 宮内庁・春日部市・春日部市教育委員会共催』
(春日部市郷土資料館 2022年)
「あいさつ」文に「明治9年(1876)と同14年(1881)に明治天皇が巡幸になり、
春日部市内では粕壁宿の高砂屋旅館で御小休になり、昼食をとられました」とある。
P4「御昼食所 高砂屋竹内彦右衛門」の項
明治9年6月3日、明治14年7月31日に粕壁の竹内彦右衛門宅で昼食をとられたこと。
所在は字三枚橋
幕末期に本陣を勤めた家
旅籠高砂屋旅館を営んでいた
→巡幸の後家屋・土地を売却。所在地は畑地となった。
「聖蹟」としての石碑等が建てられなかったとの記述はあるが
その理由には触れていない。
P6~9 越谷をはじめ他の巡幸の地は「史蹟名勝天然記念物保存法」
(大正8年(1919)成立)により、史蹟に指定されている(草加、越谷、幸手)。
P4~5 竹内家は明治17年(1884)に家屋・土地を売却し、跡地は畑地となっていたため、
同法が成立した大正8年(1919)には遺構なども残っていなかった。
2)粕壁宿と本陣について調べる
市内OPACで検索 キーワード「粕壁宿」
⓶『粕壁宿と日光道中2』(春日部市郷土資料館 2008年)
巻末「粕壁 宿と街の歴史」本陣の項
「粕壁宿の場合、江戸後期には、火災などで3回本陣が変わった」とある。
史跡が残っている本陣は以下の通り
⑴「脇本陣跡」幕末(嘉永2年)には本陣も勤める、とある。
⑵「本陣跡」幕末の小沢本陣。見川本陣の後を勤めた(文化6年~嘉永2年)
⑶「見川名主跡」近世後期名主の一人。
関根助右衛門のあと本陣も一時勤める(宝暦4年~文化6年)
⑷「本陣跡」近世中期の本陣(?~宝暦4年)関根助右衛門家。
⑸「多田名主跡」近世後期名主の一人。時期不詳だが一時期本陣を勤めたとも。
この中に高砂屋竹内彦右衛門の名前はない。
インターネットで検索(google) キーワード「粕壁宿」「春日部」
春日部市教育委員会ブログポータルサイトがヒット
「日光道中粕壁宿~歩いてみよう道しるべ」
(https://schit.net/kasukabe/center/kasukabejuku_michishirube)
3「脇本陣跡」に下記の記述あり
「文化会館前交差点の付近には(略)
脇本陣は大名や高僧が宿泊・休憩する本陣の予備施設である。
中宿(仲町)の蓮沼屋庄兵衛が勤めたが、
天保元年(1830)に現在地で旅籠屋を営んでいた高砂屋竹内家が勤め、
嘉永2年(1849)から幕末まで本陣になった。
明治9年(1876)6月、同14年(1881)7月、明治天皇の東北巡幸の際、
高砂屋は御昼食所となった。」
4「本陣跡」《粕壁宿の本陣の変遷》に下記の記述あり
年代 本陣を勤めた家 現在地
不明 関根次郎兵衛家 仲町郵便局辺り
不明 関根助右衛門家 標柱④
宝暦4年(1754)~ 見川家 埼玉りそな銀行向かい辺り
文化6年(1809)~ 小沢家 群馬銀行辺り
嘉永2年(1849)~ 竹内家 金子歯科医院辺り
3)自館資料ブラウジング
⓷『ふるさとさんぽ 春日部市』(須賀芳郎/著 1992年)
P15「この付近に江戸時代から続く旅篭屋『高砂屋』があった明治九年明治天皇が
東北御巡幸の際休息されたところである。」と記述あり
⓸『春日部市明治100年史年表』(春日部市教育委員会/編 1968年)
P13「1876-6-3 明治天皇 東北ご巡幸,三枚橋の高砂屋(竹内彦右衛門)でご昼食」
P15「1881-7 明治天皇 東北ご巡幸,高砂屋にご休息」と記述あり。
史実として伝えられていなかったのではなく、記念碑などがなかった模様。
市内OPACで検索 キーワード 「聖蹟」
⓹『史跡で読む日本の歴史10 近代の史跡』(鈴木淳/編 吉川弘文館 2010年)
P190~210 川越美穂「政治と聖跡」の項
1872(明治5年)から1885(明治18年)にかけて行われた6度の地方巡幸の地を記念化する動きを、
明治期~昭和期にかけて説明。
上記資料の参考文献より)
⓺『岩波講座 天皇と王権を考える』(網野善彦ほか/編 岩波書店 2002年)
P125-「四「聖跡」と記念碑」
明治天皇巡幸が行われた頃、当該の場所を史蹟として残したり記念碑を建てたりするのは
あくまで地方任せで、文部省として「聖跡」が指定、保存されたのは史蹟名勝天然記念物
保存法を受けての1930年代に入ってからであった旨の記述
北原糸子『東京府における明治天皇聖跡指定と解除の歴史』,
「国立歴史民俗博物館研究報告」第121集,2005年,P285-338
( https://www.rekihaku.ac.jp/outline/publication/ronbun/ronbun5/pdf/121009.pdf)
P285 史蹟のうち明治天皇を記念する「聖跡」は昭和23年(1948)6月23日、
GHQにより一斉解除されたとの記述あり
埼玉県内図書館横断検索 キーワード「聖跡」
⓻『明治天皇の聖蹟を歩く 東日本編』(打越孝明/著 KADOKAWA 2022年)
現在、国道4号の市民文化会館前交差点近くの高砂屋の跡地には、春日部市教育委員会による
「旧脇本陣跡」の標柱が建てられている旨、写真とともに記載。
自館資料ブラウジング
⓼『平成26年度 春日部市の教育』(春日部市教育委員会 2014)
P72「歩いてみよう文化財みちしるべ事業」として、名所旧跡を対象に文化財解説版や標柱等を
計11基設置したと説明されている。
上記事業で建てられた案内板、標柱についての解説:春日部市教育委員会ブログ
「日光道中粕壁宿 歩いてみよう道しるべ」
(https://schit.net/kasukabe/center/kasukabejuku_michishirube)
4)「本陣」を百科事典で調べる
⓽『日本大百科全書 21 へきーます』(小学館 1988)
P760「本陣」の項 「1870年(明治3)民部省布告により廃止された。」とある。
5)「竹内家」について調べる
インターネット検索(google)キーワード「粕壁」「竹内家」
春日部市教育委員会ほごログがヒット
(https://schit.net/kasukabe/center/blogs/blog_entries/view/220/38832ccbaad8b4366bdc42240ae462ea?frame_id=392)
竹内家について大正時代の調査として「明治20年頃に家屋を売却し、当時の現状をとどめていない
(略)現在は見る影もありません」とある。
[いずれもインターネット最終確認日2022.7.29]
- 事前調査事項
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春日部市(たけうち家(春日部)、高砂や)で昼食をとったという事実があるが、宮内庁の発表で初めて知った。今のいままで伝えられていなかったのはなぜか?他の市ならば記念碑がある。越谷にも寄ったそうだが、越谷では伝わっている。たけうち家は没落したが、本陣はうけつがれなかったのか?
- NDC
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- 日本 (291)
- 系譜.家史.皇室 (288)
- 関東地方 (213)
- 参考資料
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春日部市郷土資料館, 宮内庁宮内公文書館 編集. 明治天皇と春日部 : 巡幸・御猟場・梅田ごぼう : 春日部市郷土資料館・宮内庁宮内公文書館共催展. 春日部市郷土資料館, 2022.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I032291378-00 (当館請求記号 K71.288.4メ, 当館資料番号 5030451297) -
春日部市郷土資料館. 粕壁宿と日光道中 2. 春日部市郷土資料館, 2008. (夏季展示, 第37回)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000096-I004420916-00 (当館請求記号 K71.681, 当館資料番号 5030356272) - ふるさとさんぽ春日部市,須賀 芳郎/著者,1994 (当館請求記号 K71.291, 当館資料番号 5030150477)
-
春日部市文化財調査委員会 編 , 春日部市文化財調査委員会 , 春日部市教育委員会. 春日部市明治100年史年表. 春日部市教育委員会, 1968.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001215144-00 (当館請求記号 K71.271, 当館資料番号 5030111081) -
鈴木, 淳, 1962-. 史跡で読む日本の歴史 10. 吉川弘文館, 2010.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000010712638-00 , ISBN 9784642064187 (当館請求記号 210.025, 当館資料番号 5005190821) -
網野 善彦/[ほか]編集委員 , 網野‖善彦. 岩波講座天皇と王権を考える 10. 岩波書店, 2002.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I005856989-00 , ISBN 4000112007 (当館請求記号 313.61, 当館資料番号 5004157953) -
打越孝明 著 , 打越, 孝明, 1960-. 明治天皇の聖蹟を歩く 東日本編. KADOKAWA, 2022.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I031913381-00 , ISBN 9784046048271 -
春日部市教育委員会 編 , 春日部市教育委員会. 春日部市の教育 平成26年度. 春日部市教育委員会, 2014.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I102766560-00 (当館請求記号 K71.373, 当館資料番号 5030358203) -
日本大百科全書 21 (へきーます). 小学館, 1988.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001910618-00 , ISBN 4095260211 (当館請求記号 R031, 当館資料番号 5030066475)
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春日部市郷土資料館, 宮内庁宮内公文書館 編集. 明治天皇と春日部 : 巡幸・御猟場・梅田ごぼう : 春日部市郷土資料館・宮内庁宮内公文書館共催展. 春日部市郷土資料館, 2022.
- キーワード
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- 明治天皇
- 春日部
- 聖蹟
- 聖跡
- 本陣
- 竹内家
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000319151