レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2022/09/13
- 登録日時
- 2022/10/04 00:30
- 更新日時
- 2022/10/20 20:05
- 管理番号
- 12848650
- 質問
-
解決
「共同体」という言葉が、日本ではいつ、誰によってつくられたのか知りたい。マルクス関連の訳語が初出か。
- 回答
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お尋ねの事項について、以下の(調査済み資料およびデータベース)で調査しましたが、はっきりとした記述は見つかりませんでした。
参考までに、日本における「共同体」という言葉の定着と初出について言及のある資料1および2を紹介します。
【 】内は国立国会図書館の請求記号です。インターネットの最終アクセス日は2022年9月8日です。
末尾に「*」が付された資料は、国立国会図書館デジタルコレクションに収録されており、インターネット上で公開しています。
末尾に「**」が付された資料は、国立国会図書館デジタルコレクションに収録されており、国立国会図書館および図書館送信参加館内・個人送信限定で公開しています。
資料1
石塚正英, 柴田隆行 監修. 哲学・思想翻訳語事典. 増補版 論創社, 2013.5 【H2-L1】
pp.67-69に「共同体」の項目があり、「翻訳語の意味」に「わが国でこの『共同体』という言葉が定着し始めたのは、おそらく共産主義思想の受容が始まった頃と思われる.」とあります。
資料2
凌鵬 著. 「共同体」理論と中国農村社会研究 : 谷川道雄「共同体」論の意義を論する. 東アジア研究. (72):2020. pp.45~57 【Z8-3419】
p.46の脚注に、「共同体」の初出についての考察があります。「『共同体』という言葉を最初に用いたのは、『行政法』(斯波淳六郎著)という法学書である。」から始まり、著者の斯波淳六郎のドイツ留学経験等にふれています。
(調査済み資料およびデータベース)
・国立国会図書館オンライン ( https://ndlonline.ndl.go.jp/ )
・国立国会図書館デジタルコレクション ( https://dl.ndl.go.jp/ )
・次世代デジタルライブラリー( https://lab.ndl.go.jp/dl/ )
・国立国会図書館サーチ( https://iss.ndl.go.jp/ )
○「共同体」の語源を以下の辞典類で調査しましたが、記載がありませんでした。
・増井金典 著. 日本語源広辞典. 増補版 ミネルヴァ書房, 2012.8 【KF92-J29】
・学研辞典編集部 編. 日本語語源辞典 = Dictionary of Japanese Etymology. 第2版 学研教育出版, 2014.9 【KF92-L10】
・飯野睦毅 著. 日本語語源解読辞典 : 五十音順. 東陽出版, 2006.11 【KF92-H37】
・前田富祺 監修. 日本語源大辞典. 小学館, 2005.4 【KF92-H18】
・上田万年, 松井簡治 共著. 大日本国語辞典 あ-き. 富山房[ほか], 大正4 【813.1-U175d】** pp.1175-1177(601-602コマ目)に「共同」ならびに「共同」から始まる言葉が多く掲載されていますが、「共同体」はありませんでした。
○以下のマルクスや社会学関連の事典類で「共同体」を調査しましたが、訳語の成り立ちなどについての記載はありませんでした。
・テレル・カーヴァー 著 ; 村上隆夫 訳. マルクス事典. 復刊 未來社, 2002.5 【H111-G35】
・的場昭弘 [ほか]編. 新マルクス学事典. 弘文堂, 2000.6 【E2-G315】
・大澤真幸, 吉見俊哉, 鷲田清一 編集委員, 見田宗介 編集顧問. 現代社会学事典 = Encyclopedia of Contemporary Sociology. 弘文堂, 2012.12 【E2-L1】
・見田宗介 [ほか]編. 社会学事典. 弘文堂, 1988.2 【E2-E11】
・濱嶋朗, 竹内郁郎, 石川晃弘 編. 社会学小辞典. 新版増補版 有斐閣, 2005.5 【E2-H209】
・木田元 [ほか]編. コンサイス20世紀思想事典. 第2版 三省堂, 1997.1 【H2-G9】
○明治期の和製漢語、翻訳造語の観点から以下の資料を調査しましたが、「共同体」に関する記載はありませんでした。
・孫建軍 著. 近代日本語の起源 : 幕末明治初期につくられた新漢語. 早稲田大学出版部, 2015.9 【KF91-L89】
・高野繁男 著. 『哲学字彙』の和製漢語--その語基の生成法・造語法. 人文学研究所報 = Bulletin of the Institute for Humanities Research. (37) 2004.3. pp.87~108 【Z22-447】
・井上哲次郎 等著. 哲学字彙 : 英独仏和. 丸善, 明45.1 【192-201(洋)】*
明治初期に作られた哲学用語をまとめた『哲学字彙』の英仏独和版です。P.28(20コマ目)に「community(仏:communauté 独:Gemeinde)」の項目はありますが、訳語に「共同体」の記載はありません。
○明治時代から戦前にかけての英和辞典、独和辞典を調査し、communityおよびGemeinde, Gemeinschaftの訳語を確認しましたが、有用な記載はありませんでした。
・荒井郁[之助] 編. 英和対訳辞書. 小林新兵衛, 1872 【833-A656e】* p.88(95コマ目)に「community」の項目あり、訳語に「共同体」はなし。
・前田正穀, 高橋良昭 編. 和訳英辞林. 大正増補 American Presbyterian Mission Press, 明4序 【特55-56】* p.122(65コマ目)に「community」の項目あり、訳語に「共同体」はなし。
・豊田千速 訳. ダイヤモンド英和辞典 : 插画訂訳. 武田福蔵, 明21.5 【特65-862】* 「community」の項目なし。
・和田垣謙三 著. 新英和辞典. 大倉書店, 明34.11 【特65-656】* p.169(95コマ目)に「community」の項目あり、訳語に「共同体」はなし。
・神田乃武 等編. 新訳英和辞典. 三省堂, 明35.6 【特64-981】* p.201(107コマ目)に「community」の項目あり、訳語に「共同体」はなし。
・上野陽一 等編. 学生英和辞典. 博報堂, 明43.11 【423.9-U22e(洋)】* p.143(73コマ目)に「community」の項目あり、訳語に「共同体」はなし。
・神田乃武, 金沢久 編. 袖珍英和辞典. 改訂版 三省堂, 大正11 【特111-611】* p.181(97コマ目)に「community」の項目あり、訳語に「共同体」はなし。
・神田乃武, 金澤久 共編. コンサイス英和辭典. 増訂 三省堂, 1926.9 【KS12-H67】** p.143(79コマ目)に「community」の項目あり、訳語に「共同体」はなし。
・Allgemeines deutsch- und japanisches Handwörterbuch, mit zahlreichen Abbildungen. Bearb. von H. Taniguchi, D. Watanabe und D. Kondō. M. Okura, 1896 【433.9-T164a】** p.313(165コマ目)に「Gemeinde」、「Gemeinschaft」の項目あり、訳語に「共同体」はなし。
・Neues deutsch-japanisches Wörterbuch, mit Angabe der gebräuchlichsten Fremdwörter und Eigennamen, nebst einem Anhang. Sanseidō, 1912 【433.9-H825n】** p.540(274コマ目)に「Gemeinde」、「Gemeinschaft」の項目あり、訳語に「共同体」はなし。
・登張信一郎 著. 新式獨和辭典. 大倉書店, 1912.4 【164-473(洋)】** p.871(444コマ目)に「Gemeinde」、p.872(445コマ目)に「Gemeinschaft」の項目あり、訳語に「共同体」はなし。
- 回答プロセス
- 事前調査事項
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・『日本語語源広辞典 増補版』増井金典/著 ミネルヴァ書房 2010.4
「共同体」は項目なし。「共同」の語源あり。「中国語で「共(ともにする)+同(一緒にする)」が語源。co-operation;association;union;public などの訳語として当てた語。」との記述。
・『現代に生きる幕末・明治初期漢語辞典』佐藤亨/著 明治書院
同じく「共同体」項目なし。「共同」は用例(1871年~)・意味・出自(『孟子』より)記載あり。
・『日本語学大辞典』日本語学会/編 東京堂出版 2018.10
「和製漢語」について、「漢語」の項目を調査したが記載なし。
・『日本語学研究事典』飛田良文/編著 明治書院 2007
「和製漢語」について、「漢語」の項目を調査したが記載なし。
・『講座日本語学 4 語彙史』 明治書院 1982
「和製漢語の歴史」には記載なし。
・『岩波社会思想事典』 岩波書店 2008
・『岩波現代経済学事典』伊東光晴/編 岩波書店 2004
・『社会思想史事典』丸善出版 2019
・『マルクス・カテゴリー事典』マルクス・カテゴリー辞典編集委員会/編 青木書店 1998
・『現代マルクス=レーニン主義事典』社会思想社 1980
また、『共同体の基礎理論』大塚久雄/著 岩波書店 2000 を46pほど確認したが、記載なし。
- NDC
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- ドイツ.オーストリア哲学 (134 10版)
- 参考資料
- キーワード
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- 共同体
- マルクス
- 社会学
- 語源
- 翻訳語
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 経済社会(レファレンス)
- 調査種別
- 文献紹介 事実調査
- 内容種別
- 質問者区分
- 公立図書館 図書館
- 登録番号
- 1000322114