レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2019年08月29日
- 登録日時
- 2020/01/15 14:14
- 更新日時
- 2020/03/26 09:52
- 管理番号
- 相-190014
- 質問
-
解決
ナチス体制下ドイツにおける同性愛への迫害に関して、特に女性同性愛に対してはいかなる施政、情報宣伝が為されたかについて知りたい
- 回答
-
次の文献、情報を紹介しました。
・『セックスとナチズムの記憶』ダグマー・ヘルツォーク著 岩波書店 2012
「第1章 セックスと第三帝国」のp.6に「女性同性愛はナチ・ドイツでは犯罪とされなかった(中略)にもかかわらず、レズビアンは厳しい監視を受け、しばしば「反社会的」行動といった別の罪状で強制収容所に入れられた。」とあります。また、「男性および女性同性愛者の経験に焦点をあてた多種多様な研究が目下進行中である。」として、p.270(10)に参考文献の記載があります。
「第2章 異性愛のもろさ」のp.81~87「一七五条」に刑法一七五条をめぐるドイツ国内の状況について記述があります。p.85にはこの条項が男女差別であるという非難に対して、「多くの法律家たち」が「女性は男性よりも「内気」で「控えめ」であり、性生活において男性よりも「強い絆」を築く傾向がある、女性同性愛は男性同性愛のような社会的問題をまったく引き起こさない、女性同性愛は一般人にとって同様の脅威とはならない。」と反論したという旨の記述があります。
・『〈同性愛嫌悪(ホモフォビア)〉を知る事典』ルイ=ジョルジュ・タン編 明石書店 2013
p.179~182「強制収容」のp.180に「一〇万人から一五万人の同性愛者がナチスの一斉検挙を受けた。」「刑法第一七五条は男性しかターゲットにしていなかったのでレズビアンは適用を免れてはいたが、中には「反社会的」という烙印を押され、「ブラック・トライアングル」(収容者を識別するために着けた逆三角形の胸章で、黒は女性同性愛者、ピンクは男性同性愛者を表した)を付けられて強制収容所に送られた者もいる。」とあります。
p.388~394「ドイツ」のp.390~392「一九三三~四五年 ナチズム下の同性愛迫害」の中に「レズビアニズムは、例えば法学者ルドルフ・クラーレなどが規制しようと働きかけたものの、法の規定から外された。しかしレズビアンに対してより寛大だったと見てはならない。女性が軽く見られていただけのことである。女性のセクシュアリティは、必要であれば暴力によって、容易に制御し得ると思われていたのだ。」「レズビアンも密告を避けることはできなかった。かなりの数のレズビアンが強制収容所に送られているのである。その理由とされたのはさまざまで、「政治的」理由であったり、「反社会性」が理由になったりした。」とあります。
・『同性愛の歴史』ロバート・オールドリッチ編 東洋書林 2009
「第8章 同性愛の時代(1870-1940)」のp.186~195「抑圧と社会の規制 ことばと行為」にドイツ国内の状況について記述があり、p.191には「レズビアニズムは罪とされなかったのだが、それは明らかに、女性は妻・母という伝統的な役割にもどることを強制され、また女性の性は受動的にすぎず、容易に規制できると考えられたからである。」とあります。
・『ホロコースト大事典』ウォルター・ラカー編 柏書房 2003
p.364~366に「同性愛者」が立項されており、「レズビアンだと疑われた女性は監視下に置かれたが、実際的な迫害はなされなかった。同性間行為は女性の精神構造からすれば一時的な脱線であるはずだと見なされ、そのような女性でもまだ元気な子どもを産むことができるとされた。」とあります。
・『ドイツのマイノリティ』浜本隆志、平井昌也編著 明石書店 2010
「第5章 同性愛の世界」のp.238に「同性愛者は収容所内でピンクのトライアングルを付けられ、その数はおよそ五,〇〇〇人とも一万人ともいう。また一万五,〇〇〇人だという説もある。そのうち女性のケースはほんのわずかだった。」とあります。
また、女性の同性愛について言及はされていませんが、ナチス体制下ドイツにおける同性愛者への迫害については、下記の資料にも記述があるため、紹介しました。
・『強制収容所における「生」』高橋三郎著 二月社 1974
「第二章 「生」の諸条件」のp.71~77「Ⅲ 抑留者のカテゴリー」に、強制収容所に抑留された人々の衣服に縫い付けられていた逆三角形の布の色について記述があり、p.74~75に「「桃色」=同性愛者」の項があります。また、p.77に「表7 マウトハウゼン収容所におけるカテゴリー別抑留者数(1940年1月1日現在)」があり、同性愛者の人数が記載されています。
・『ナチ強制・絶滅収容所』マルセル・リュビー著 筑摩書房 1998
「第二章 絶滅手段としての強制収容所」のp.26~28に「同性愛者」について記述があります。
・『ナチス第三帝国を知るための101の質問』ヴォルフガング・ベンツ著 現代書館 2007
「第七章 迫害と抵抗」のp.155~156に「075 同性愛者はなぜ迫害されたのか」が立項されています。
・『性と権力関係の歴史』歴史学研究会編 青木書店 2004
p.269~300に星乃治彦著「ナチズムと「同性愛者」表象の限界 -「同性愛者」というテクスト-」が収録されています。
・『権力と身体』服部早苗、三成美保編著 明石書店 2011
「第1部 身体とセクシュアリティ」のp.42~60に星乃治彦著「第2章 「同性愛者」の歴史的機能」が収録されています。p.52~57「4「同性愛者」突撃隊長レームから強制収容所へ」では、「ナチスの突撃隊長レーム」の「「同性愛者」スキャンダル」とそれ以降のナチス体制について記述があります。
・『差異と共同』孝忠延夫編著 関西大学出版部 2011
p.265~294に須摩肇著「第11章 刑法175条と同性愛者たち -通時的観点に立った東独(DDR)に於ける反同性愛法」が収録されています。
・『愛と欲望のナチズム』田野大輔著 講談社 2012
「第二章 健全な性生活」のp.43~63「2 性生活の効用」、「第三章 男たちの慎み」のp.69~80「1 男性国家の悪疫」の中で同性愛者への迫害について述べられています。
・『同性愛をめぐる歴史と法』三成美保編著 明石書店 2015
「第2部 歴史の中の同性愛」のp.292~312に田野大輔著「第7章 ナチズムと同性愛」が収録されています。
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
-
- 家族問題.男性.女性問題.老人問題 (367 10版)
- 異常心理学 (145 10版)
- ドイツ.中欧 (234 10版)
- 参考資料
- キーワード
-
- ナチスドイツ
- 同性愛
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000272567