1:
・『「浜辺の歌」の成田為三 : 人と作品』の「成田為三関係文献総覧解題」の「二、楽譜」には、以下の記載がある。
はまべ(浜辺の歌の肉筆楽譜) 成田為三 大4年ごろ(浜辺の歌音館蔵)
浜辺の歌(セノオ楽譜九八) 成田為三 大7・10 セノオ音楽出版社
この本の表紙には、変イ長調の手稿譜の写真がある。
・『浜辺の歌思い出集』の口絵にも同じ写真があり、「成田為三先生直筆の楽譜」とある。
・初版のセノオ楽譜は、当館所蔵なし。CiNiiBooks、国立国会図書館サーチにもなし。
→手稿譜の写真から、変イ長調と回答。
2:
・『山田耕筰作品資料目録』によれば、筆写譜は「#1」「#5」「b1」「#4」など、さまざまとなっている。
印刷譜は、初版以降、記載のあるものは、すべて「#4」となっている。
・『山田耕筰全集. 第4 (歌曲 第4)』の楽譜は、ホ長調で書かれている。
→印刷楽譜から、ホ長調と回答。
3:
・『弘田龍太郎・杉山長谷夫・成田為三・藤井清水』(日本歌曲全集7, 1993)の解説によれば、作曲年は1920年とのこと。
この楽譜では変ホ長調。
・『弘田龍太郎作品集』第1巻(1959)も変ホ長調。「(大正9年1月)」との記載がある。
・当館所蔵のもっとも古い楽譜は、1921(大正10)年発行の『濱千鳥 : 少女小曲集』で、変ホ長調。
「大正十年十一月二十日印刷、大正十年十一月廿五日發行」
表紙裏の「内容及作曲年表」には「濱千鳥 一九二〇年一月」とある。
・初版についての情報が得られなかったが、CiNiiBooks、国立国会図書館サーチでは、これより古い楽譜は見つからない。
・当館ホームページ「童謡・唱歌索引」を使い、当館所蔵の1930年ごろまでの楽譜を調べた。
以下のうち、『鑑賞に立脚せる唱歌集』だけはヘ長調だが、残りはいずれも変ホ長調。
中川安一編 『鑑賞に立脚せる唱歌集』 大竹町 (広島県) : 渡辺商店出版部, 1924.
上水内郡平坦部職員会〔編纂〕 『唱歌教材』 〔出版地不明〕 : 〔上水内郡平坦部職員会〕, 1925序.
弘田龍太郎作曲 『童謡・小曲選集. 6』 東京 : 京文社, 昭和3 [1928]
日本児童音楽協会編 『新選小学唱歌曲集. 1』 東京 : 京文社, 1928.
滋賀県教育会編纂『滋賀県小学唱歌. 尋常科第5学年』 東京 : 京文社, 1930.
小学唱歌教授同好会編 『最新小学唱歌名曲全集. 1』 改訂増補. 東京 : 小学唱歌教授同好会, 1930.
・1932年発行の『童謡唱歌名曲全集 第5巻』でも、変ホ長調(復刻版で確認)。
→以上から、変ホ長調と推測されると回答。
※3について、その後の調査で、初出は雑誌『少女号』の1920(大正9)年1月号と判明した。
(『NHK日本のうたふるさとのうた100曲』による)
ただ当館ではこの雑誌は所蔵しておらず、内容は確認できていない。
また作曲年については、インターネット上の『池田小百合なっとく童謡・唱歌』によれば、
同じ楽譜『濱千鳥 : 少女小曲集』の三版(大正11年9月15日発行)では「大正八年十一月廿四日」と記載されているとのこと。
この三版も当館では所蔵していないので、確認できていない。