1.音楽事典でRとSについて確認
・『音楽事典』(平凡社)
「リスト」の項目の作品表の冒頭に「この作品表は、サール<The Music of Liszt>(1954, 改訂1966)、ラーベP.Raabe <Franz Liszt>(1931, 改訂1968) に基づき、さらにサールの執筆、作成になる<新グローヴ音楽辞典>の"Liszt"の項目、作品表を参考として作成した。・・・Sはサールによる作品番号を、Rはラーベによる作品番号を表す。」とある。
・『ニューグローヴ世界音楽大事典』
・「リスト」の項目の「15.追補 近年の研究成果と注記」の項の「(iv)新作品主題目録」に「20世紀に入って、重要なものだけでも5つの作品目録が作られた。最も重要なのがP.ラーベの目録(1931、改訂追補1968)で、ワイマール・リスト博物館が所蔵する世界最大量のリスト手稿資料を中心に、自ら資料整理と原典批判をする過程で作られた作品目録である。この目録は、これまで作られた目録中最も詳細で、国際的な汎用性の点でも現在最高位にある。」と書かれている。
・「ラーベ番号」の項目があるが、詳しい説明はない。「サール番号」の項目はなかった。
2.「ラーベ」と「サール」については、『ニューグロヴ世界音楽大事典』に項目がある。
・ラーベ、ペーター Raabe, Peter (1872-1945)
ドイツの学者、指揮者。リストの関連することとして、ワイマールでリスト博物館の館長となったこと、ブライトコプフ社によるリストの作品選集の編集長を務め、そのうちの数巻の校訂を行ったこと、イェーナ大学でリストの管弦楽作品の成立に関する論文により博士号を取得したこと、フランツ・リストの2巻の研究書(リスト博物館の館長であったラーベが数多くの未発表の手稿譜を利用していたため、価値ある研究資料の一つとなっている。)を執筆したこと。
本学図書館では、その著作『Franz Liszt』(1931)を所蔵している。
・サール、ハンフリー Searle, Humphrey (1915-1982)
イギリスの作曲家、音楽著述家。リストに関連することとして、新設のリスト協会の名誉書記に任命されたこと、リストに関する著作があること。
本学図書館では、その著作『The music of Liszt』(1966)を所蔵している。
3.OPACで下記のリストに関する資料『リスト』(音楽之友社)を確認
序文の訳注1に「ラーベは、何といっても二巻からなる『フランツ・リスト』(第一巻『リストの生涯』、第二巻『リストの創作』)によって、その名を不滅のものとしている(1931年第1版、再版68年)。とくに第二巻の後半は、リスト博物館の館長であったラーベが、ヴァイマルにある膨大なリストの自筆資料および筆写資料を綿密に整理して作成した『作品目録』となっており、これまで作られたリスト作品目録中もっとも詳細で、今日なお一番重要な研究資料である。・・・ラーベの同書で使われているリストの作品整理番号は「R(ラーベ番号)」として国際的に通用している。」
訳注4に「リスト研究家としてのサールの業績は、主著『リストの音楽』(1954)、『フランツ・リスト、人と音楽』(共著、1970)に見るように、リストの音楽作品を<作曲家の目>で分析し、魅力を解明し、その先駆性を明らかにしたことであろう。しかし、サールの名が長くリスト研究に刻まれることになったのは、『グローヴ音楽事典』(1954)と『ニューグローヴ世界音楽大事典』(原書1980、邦訳1993)の「リスト、フランツ」の項目において、「作品表」を発表したことにある。これは明らかにラーベの作品目録を別の秩序で並べ換えただけである上に、サール自身も厳密な音楽学者ではなかったため、数々の矛盾や根本的問題点が指摘されている。ただラーベの目録よりデータが新しいため、今日では「S(サール番号)」として「R(ラーベ番号)」と並んで用いられている。しかしながらこの併用は、ダブル・スタンダードという意味ではなく、詳細なラーベの作品目録を参照するためのインデックスとして「S番号」が利用され、新しいデータの正誤表としてサールの作品表が用いられているということである。」
この資料の<補遺章>「四 現代のリスト像と<新リスト作品主題目録>」で、作品表の問題について触れらている。