レファレンス事例詳細(Detail of reference example)
提供館 (Library) | 安城市図書情報館 (2310061) | 管理番号 (Control number) | 880 | |||||
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事例作成日 (Creation date) | 2015年05月15日 | 登録日時 (Registration date) | 2015年05月24日 10時34分 | 更新日時 (Last update) | 2015年05月28日 09時22分 | |||
質問 (Question) | ①ちらしは平仮名表記の「ちらし」とカタカナ表記の「チラシ」があるが、使い方に違いがあるのかまた、どちらを使うのが正しいのか? ②国語辞典で「ちらし」を引いた時、「ちらし」平仮名か、それとも「チラシ」片仮名か?最新の辞典を何冊か調べ出典を付けて回答して欲しい。 | |||||||
回答 (Answer) | 【①回答】 ・ちらしは動詞ではなく名詞であるために、字面の明瞭化を図ろうとしてちらしがカタカナの「チラシ」と書かれるようになった。 →『江戸から明治・大正へ 引札 繪びら 錦平良繪廣告:ブレーン別冊』(増田太次郎/著,誠文堂新光社,1976)p26 「なお、ちらしがチラシと書かれるようになったのは、動詞ではなく名詞であるために、明瞭化を図ろうとして期せずしてカタカナの「チラシ」を常用するようになったのもではないかと推定される。」と著者・増田太次郎氏は推測する。 ・ちらしの表記はどちらが正しいかは分かりませんが、「ちらし」の語源を下記資料『日本国語大辞典』他~昔の書物を辿っていくと、「ちらし」は時代と共に呼称が変化していった。 「ちらし」の語源は「散らす」から来ており、「報帖」が江戸では「引札」京阪では「ちらし」と呼ばれ、大正年末に新聞の折込ちらしが始まると、「引札」が「ちらし」に替っていき、現在ではカタカナ表記の「チラシ」が常用されている。 【②回答】 ・『大きな活字の三省堂国語辞典 第七版』(見坊豪紀他/編,岩波書店,2014) ちらし【散らし】:開店広告、商品の宣伝のためにくばる、一枚に印刷した紙。多く、新聞に折り込んで配る。 ・『岩波 国語大辞典 第7版 新版』(岩波悦太郎/編,岩波書店,2014) ちらし【散らし】開店広告や披露のために配る、広告文を書いた紙。ひきふだ。 ・『旺文社 国語大辞典 [第十一版]』(山口明穂/編他,旺文社,2013) ちらし【散らし】:広告・宣伝の字句を印刷した紙片。 ・『広辞苑 第六版 た―ん』(新村出/編,岩波書店,2008) ちらし【散らし】:広告のためにくばる刷物。ビラ。引札。 ・『精選叛 日本国語大辞典 第二版』(小学館国語大辞典編集部/編,小学館,2006) ちらし【散】:広告するために、人に配る刷り物。引きふだ。 ・『日本国語大辞典 第二版 第九巻』(日本国語大辞典第二版編集委員会/編,小学館,2001) ちらし【散】(動詞「ちらす(散)」の連用形の名詞化):広告するために、人に配る刷り物。引きふだ。 他の辞書も調べましたが、「ちらし」は外来語ではないので平仮名で載っていると思われますとお伝えしました。 | |||||||
回答プロセス (Answering process) | 【回答プロセス】 (1)国語辞典、広辞苑で「ちらし」を調べる。 →ちらしは「散らし」として記載され、ちらしの語源は「散らす」という事が分かる。 『広辞苑』第6版:「散らし」=広告のためにくばる刷物、ビラ、引札。 (2)レファレンス共同データベースにてキーワード“チラシ”で検索。 上記の質問と類似したレファレンス2件あり。 ↓ *「チラシ」はなぜカタカナで表記するのか? →『江戸から明治・大正へ 引札 繪びら 錦平良繪廣告:ブレーン別冊』(増田太郎/著,成文堂新光社,1976)(安城市中央図書館所蔵なし) p26「なお、ちらしがチラシと書かれるようになったのは、動詞でなく名詞であるために、字面(ジズラ)の明瞭化を図ろうとして、期せずしてカタカナの「チラシ」を常用するようになったものであろう。」 という記述あり。これは、この見出しの内容として「引札」が「チラシ」に変わっていったのはいつか推定した結果、という流れで書いてあるので、あくまで筆者の推測である。 ※レファレンス共同データベースで検索した2つの館も「チラシ」のカタカナ表記について同資料より同一の回答を出している。更に1つの館では、広告図書館にもレファレンスを依頼して、上記資料『江戸から明治・大正へ 引札 繪びら 錦平良繪廣告:ブレーン別冊』以外見つからないという回答ももらっている。 〇「ちらし」の語源 『江戸のコピーライター』(谷峯藏/著,岩崎美術出版,1986)(674.7/タ)(安城市中央図書館所蔵あり) ・「ちらし」は、江戸では「引札」京阪では「ちらし」と呼ばれていた ・『江戸コマーシャル文芸史』(井上隆明/著、高文堂出版、1986)の平賀源内の『飛花落葉』などを引用して説明。 →p32 たしかに『飛花落葉』の「報條」は「チラシ」のルビがふってある。だがそれは上方の影響だったと思われる。南畝も天明七、八年ごろ刊行の『四方のあか』(後出)に「酒中花のちらし(報條/ルビ)として「ちらし」に「報條」と漢字でルビをふっている。 とすれば、ちらしの名詞は江戸では引札には使わない言葉だったとしか考えられない」 ・p34→「江戸で膾炙された引札が、江戸から東京にかわって明治大正と続き、大正末年にちらしに替ったのである。 なぜ、ちらしに替ったか。それは新聞折込みの発祥からだった。」…(中略)… 「思えば「口上出し札・安売目録礼」にはじまった「札回し」が、「口上・報條」などとしながら「引札」と呼ばれ、広告物そのものと配布行為との二面の呼称を持った永い時間を経て、新聞に折込まれて「折込みちらし」、郵便で送られて「ダイレクト・メール」と呼ぶ。だが、普遍的総称は「ちらし」である。ちらしの呼称も配布を意味したものである。」 ※この資料には、「チラシ」のカタカナ表記についての言及はなし。 『日本国語大辞典 第二版⑨』(813.1/ニ/9)(小学館,2001) →散(ちらし):広告するために、人に配る刷物、引き札 *浄瑠璃:本朝二十四孝(1776)四 「散らし配りて薬売」 (中略) *随筆:守貞漫稿(1837-53)一六 「行人集る路上に報帖を携へ出て行人に与へ告ぐ 畜報帖を江戸は引札と云 京坂はちらしと云」 *初すがた(1900)〈小杉天外〉二 「~と演芸番組のちらしを寄越した」 *さい果て(1964-71)〈津村節子〉 「新聞にチラシをいれたり、ポスターを貼ったりしなくちゃならないから」 | |||||||
事前調査事項 (Preliminary research) | ||||||||
NDC |
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参考資料 (Reference materials) |
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キーワード (Keywords) |
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照会先 (Institution or person inquired for advice) | ||||||||
寄与者 (Contributor) | ||||||||
備考 (Notes) | ||||||||
調査種別 (Type of search) | 文献紹介 事実調査 | 内容種別 (Type of subject) | 言葉 | 質問者区分 (Category of questioner) | 社会人 | |||
登録番号 (Registration number) | 1000174998 | 解決/未解決 (Resolved / Unresolved) | 解決 |