レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2010年03月14日
- 登録日時
- 2010/03/14 16:52
- 更新日時
- 2017/03/16 10:26
- 管理番号
- 吹-70-2016-011
- 質問
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未解決
頼山陽(らい さんよう)の漢詩 「早春詩 山田氏途上作」の読み下し文を知りたい。
この漢詩は『好きやねん史「すいた・千里」』の95pに掲載されている。
早春詩 山田氏途上作 山陽
柳眼未伸梅萼堅 春寒郊野未生烟
邨童不管北風裂 亀手繰絲揚紙鳶
山為凹凸雪猶残 氷水湿鞋不耐寒
遥嶺知応風霰過 雲遮半腹忽難看
- 回答
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読み下し文を記載した資料は見つからなかった。
吹田市立博物館や大阪府立図書館にも調査を依頼したがわからなかった。
(質問者は、漢詩の専門家にきいてみるとのこと。)
- 回答プロセス
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『好きやねん史「すいた・千里」』(池田 半兵衛/著 創芸出版 1987.10)前後の文脈からして、山陽が伊丹へ行く途中、現在の吹田に立ち寄り詠んだ漢詩のようで、年譜等を見てもいつ詠んだものなのか同定できない。
この漢詩は本人直筆の書として、現在は旧中西家住宅(吹田吉志部文人墨客迎賓館 吹田市立博物館の管轄)に所蔵されている。
吹田市立博物館によると、その書は平成21年度春季特別展「吹田 いまむかし」に展示された。その図録『吹田いま・むかし』(吹田市立博物館 2009.4)10pに書の写真が掲載されているが、読み下し文はつけていない。
吹田市立図書館の下記の資料には掲載がなかった。
『江戸詩人選集 第8巻 頼山陽 梁川星巌』(岩波書店 1990.4)
『大坂町人学者たちからの伝言』(柳田 昭/著 澪標 2000.8)
『旧中西家住宅』(吹田市立博物館 〔出版年不明〕)
『吹田の文化財 第1集(1974)吹田の主要文化財』(吹田市立図書館(製作) 2002)
『登録有形文化財中西家住宅調査報告書』(吹田市立博物館/編集 吹田市教育委員会 2004.3)
『中西家住宅の建築』(吹田市立博物館 2007.4)
『中西鉄蔵家文書目録』(吹田市史編さん室/作成 [吹田市史編さん室] 1971)
『日本思想大系 47 近世後期儒家集』(岩波書店 1978)
『日本思想大系 49 頼山陽』(岩波書店 1978)
大阪府立図書館に調査を依頼、回答文の要点を以下に記載する。
(1)頼山陽の経歴から調査
下記の頼山陽に関する資料を調査したが、京都へ転居した文化8年(1811)以降、頼山陽は近隣を周遊することも多く、広島と京坂の間を頻繁に行き来しており、「早春詩」が詠まれた時期は特定できず。
『頼山陽』(安藤/英男∥著 たざわ書房 1979.4)
『頼山陽 人と思想』(安藤英男著 白川書院 1975)
『頼山陽先生 百年記念』(木崎/好尚∥著 頼山陽先生遺蹟顕彰会 1933)
『頼山陽と京阪』(真鍋/由郎∥著 真鍋由郎 1939)ほか
(2)頼山陽と吹田の関わり
『好きやねん史「すいた・千里」』に登場する「歳寒堂」や「山田氏」については、『角川日本地名大辞典27大阪府』(「角川日本地名大辞典」編纂委員会∥編 角川書店 1983.10)324p上新田の項に、「当村(上新田村)の山田家には頼山陽がしばしば寄寓し、山田邸を歳寒堂と名付けた」とある。
山田氏から山口氏に受け継がれた「薬酒」については、『大阪伝承地誌集成』(三善/貞司∥編著 清文堂出版 2008.5)915p豊中市 延寿不老酒の項に、「芳醇な名酒は広く喜ばれ、文化年間(1804-18)には酒に目のない頼山陽が訪れ、天下一なりと痛飲した」という記述以外はみあたらず、頼山陽の評伝などには出てこなかった。
明らかに北摂を周遊し、詩を詠じた記録が残っているのは文政12年(1829)10月の箕面もみじ狩りだが、「早春詩」とは時期が合わない。
『頼山陽と伊丹 酒の町に招かれた文人たち』(伊丹市立博物館∥編集 伊丹市立博物館 1975.10)6p~10pによると、頼山陽は「剣菱」の醸造元・坂上桐陰を訪ねてたびたび伊丹にきていた。そのような折に足を延ばして吹田・千里へ赴いたと思われる。
(3)頼山陽の詩書
『日本近世人名辞典』(竹内/誠∥編 深井/雅海∥編 吉川弘文館 2005.12)1120p~1121pの頼山陽の項によると、公刊された頼山陽の詩書は以下の三書。
・「日本楽府」(文政13(天保元)年刊)日本の歴史を詠じている
・「山陽詩鈔」(天保4年刊)文政8年までの詩を山陽自身が自選
・「山陽遺稿」(天保12年刊)詩に関しては文政9年以降のものを収録
『頼山陽全書 詩集』(頼/山陽∥[著] 木崎/愛吉∥共編 頼/成一∥共編 頼山陽先生遺蹟顕彰会 1932)は、山陽の全詩を通読できるように「詩鈔」と「遺稿」の二書を一巻にとりまとめたもの。天明8年9歳から天保8年53歳までの詩を年代順に排列、さらに年代未考、個人蔵のもの等を含む追補がある。巻末には「日本楽府」も併録しており、頼山陽の公表された主な詩はほとんどここに収められている。(この資料にも読み下し文はなし。)全編調査したが、「早春詩」は見つからなかった。
『頼山陽詩抄』(頼成一、伊藤吉三訳注 岩波書店 1944)は、頼山陽の詩書三書から300篇を選び、詩体ごとに分類、年代順に編纂、原詩・読み下し文・訳者注を付した資料だが、大阪府立図書館では所蔵していない。
(4)頼山陽の詩作について
『日本近世人名辞典』の頼山陽の項には、「京に定住してからも諸国の巡遊は頻繁で、それが詩作の内容を豊かにし、また生計の助けになったとされる。」とある。また、吹田市立博物館館長・小山修三氏のブログ「千里ニュータウン+万博×小山修三=吹田市立博物館!」のインターネット博物館(吹田アーカイブ展注目の一品その4):頼山陽の書(最終確認2010.3.14)で、「当時の文人たちは各地を盛んに旅行していますが、それを受け入れたのは裕福な商人や庄屋名主で、そのお礼(というわけでもないでしょうが)に書や絵を残していったのです。岸部の大庄屋、中西家はその典型的な例と言えるでしょう。」と書かれてる。
『頼山陽と伊丹』には、「柿記」の謝礼に酒を求める坂上桐陰あての書簡なども掲載されており、世話になったお礼や謝礼を得る手段として書画を渡していたようである。
以上の調査により、個人的に所蔵されていたもの、『頼山陽全書〔詩集〕』に所収されていない詩の読み下し文を探すのは難しい。
- 事前調査事項
- NDC
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- 漢詩文.日本漢文学 (919 8版)
- 参考資料
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池田半兵衛 著 , 池田, 半兵衛. 好きやねん史「すいた・千里」. 創芸出版, 1987.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001927545-00 , ISBN 4915479269
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池田半兵衛 著 , 池田, 半兵衛. 好きやねん史「すいた・千里」. 創芸出版, 1987.
- キーワード
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- 頼山陽(らい さんよう)
- 旧中西家住宅(きゅうなかにしけじゅうたく)
- 早春詩
- 照会先
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- 大阪府立図書館
- 吹田市立博物館
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000064663