レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2010年09月05日
- 登録日時
- 2013/01/30 17:05
- 更新日時
- 2013/02/05 14:11
- 管理番号
- 蒲郡-2010-09051-A
- 質問
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未解決
吟詠本に載っていた藤原俊成の読み仮名が「ふじわらのとしなり」となっていた。著者に直接会う機会があったので、尋ねたら「としなり」が正しい、とのことだったが、蒲郡では「俊成祭(しゅんぜいまつり)」など全て「しゅんぜい」と読む。読み方が複数あるのは分かるが、どちらが正しいのか。また使い分けがあるのか。
- 回答
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どちらも正しいと言える。
歌人として見た場合、「しゅんぜい」と読まれることが多く、歴史上の官人として見た場合、「としなり」と読まれることが多い。読み分けについては不明。
蒲郡市博物館に問い合わせたところ、「俊成の子孫である冷泉家では、俊成のことを親しみをこめて『しゅんぜいさん』と呼んでいる。竹島に蒲郡の祖として俊成像を建てたとき、冷泉家にご協力していただいているので、その冷泉家にならって蒲郡市では『しゅんぜい』の読み方でそろえている」とのこと。
- 回答プロセス
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1.『歌びと俊成』、『社寺(蒲郡市)を訪ねて 第29号』、『藤原俊成卿像』を見るが、読み方について記述はない。
2.『人物レファレンス事典 古代・中世・近世編せ~わ』p2104に「ふじわらのとしなり」で記述あり。『日本史人名よみかた辞典』p605にも「としなり」とあり、こちらに『国史大辞典』に掲載と記述があったので、見てみる。
3.『国史大辞典 第12巻ふ-ほ』p208に「ふじわらのとしなり」で記述あり。こちらには「『俊成』は、通常『しゅんぜい』と音読される。」とあった。
4.どんな時に「しゅんぜい」と呼ばれるのか調べる。ウィキペディア「藤原俊成」(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%97%A4%E5%8E%9F%E4%BF%8A%E6%88%90 2012.1.30確認)には「名は有職読み(ゆうそくよみ)で『しゅんぜい』とも読む。」とあった。
5.「有識読み」とはどんなものか調べると、ウィキペディア「有識読み」(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9C%89%E8%81%B7%E8%AA%AD%E3%81%BF2012.1.30確認)に「有職読み(ゆうそくよみ)は、古来からの慣例に従って、漢字で書かれた語を特別な読み方で読むこと。」とあり、有職読みされることが多い人物として、俊成や定家など歌人の名前が多く上がっているが、『広辞苑 第五版』や『日本国語大辞典』には「有職読み」の記述はなかった。
6.俊成の息子である定家も同様に「ていか」「さだいえ」と読まれるので、こちらでも検索してみると、ウィキペディア「藤原定家」(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%97%A4%E5%8E%9F%E5%AE%9A%E5%AE%B6 2012.1.30確認)に「諱は「ていか」と音読みされることが多い。」との記述あり。
7.「諱(いみな)」を調べてみると、『広辞苑 第五版』p188に「①死後にいう生前の実名。②後に、貴人の実名を敬っていう。③死後に尊んでつけた称号。諡(おくりな)。」とある。②のような気がするが、確実ではない。
8.ウィキペディア「諱」(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%AB%B1 2012.1.30確認)に、「日本における諱の歴史」の項があり、その中で「中国の伝統を取り入れた名前の習慣が定着すると、実名のことを漢文表記するときは中国と同様、諱と呼んだ。」とある。これによると名前を記すにあたり、漢文表記した場合は、「しゅんぜい」「ていか」と読まれていたことになる。
9.他に歌人の名前の読み分けについて書かれているものを探すが、見つからず、前述の理由の裏付けがないため、はっきりしたことはわからないままだった。
10.では、なぜ蒲郡では「しゅんぜい」と読まれているものがほとんどなのか、これについては図書館の資料で調べるのは難しいと判断。『藤原俊成卿像』にて俊成像が造られたとき、蒲郡市博物館が関わっていると分かったので問い合わせた。
蒲郡市博物館学芸員より、「俊成の読み方に『しゅんぜい』『としなり』とあることは把握している。俊成の子孫である冷泉家では、俊成のことを親しみをこめて『しゅんぜいさん』と呼んでいる。俊成像を建てたとき、冷泉家にご協力していただいており、その冷泉家にならって蒲郡市では『しゅんぜい』の読み方でそろえている」とのことだった。
11.以上のことを利用者に報告した。
- 事前調査事項
- NDC
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- 詩歌 (911 9版)
- 参考資料
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- 『歌びと俊成』教育出版センター,1978
- 『社寺(蒲郡市)を訪ねて 第29号』村瀬 亘宏,1999
- 『藤原俊成卿像』蒲郡市,1991
- 『人物レファレンス事典 古代・中世・近世編せ~わ』日外アソシエーツ,1996
- 『国史大辞典 第12巻ふ-ほ』吉川弘文館,1991
- 『広辞苑 第五版』岩波書店,1998
- 『日本国語大辞典』小学館,1976
- キーワード
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- 藤原俊成
- しゅんぜい
- としなり
- 読み方
- 名前
- 有識読み
- 諱
- 照会先
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- 蒲郡市博物館 〒443-0035 蒲郡市栄町10-22 Tel:0533-68-1881 Fax:0533-68-1880 ホームページ:http://www.city.gamagori.lg.jp/site/museum/
- ウィキペディア(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A1%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B8)2012.1.30確認
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 人物
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000127694