レファレンス事例詳細(Detail of reference example)
提供館 (Library) | 高崎市立中央図書館 (2310031) | 管理番号 (Control number) | 0131225025 | |||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
事例作成日 (Creation date) | 2019年09月18日 | 登録日時 (Registration date) | 2020年10月29日 14時14分 | 更新日時 (Last update) | 2020年12月25日 11時12分 | |||||||||||
質問 (Question) | 孫が暗唱した宮沢賢治の『雨ニモマケズ』に、私が習った時と違う部分があった。今は違うのか。 孫は「ヒデリノトキハナミダヲナガシ」と暗唱していたが、私は「ヒドリノトキハ~」と習い、ヒドリとは日雇いの意味であると教わった覚えがある。 | |||||||||||||||
回答 (Answer) | 宮沢賢治(1896-1933)は岩手県花巻市出身の詩人であり童話作家です。 代表作のひとつである『雨ニモマケズ』は、没後に発見された手帳に書かれていたメモで、「雨ニモマケズ 風ニモマケズ」で始まり「サウイフモノニ ワタシハナリタイ」で終わる、漢字とカタカナで書かれた詩です。 手帳に書かれている文字は「ヒドリ」と読めますが、これが「ヒデリ」の誤記なのかという論争は現在も続いているようです。 主に次の3つの説があり、いまだはっきりしていないようですが、①日照りの誤記であるとするものが多いようです。 ①「ヒデリ」日照りの誤記 ②「ヒドリ」で良い。日雇い仕事のこと。 ③「ヒドリ」は「日照り」の方言であり、誤記ではない。 以下、当館所蔵の資料です。 宮沢賢治「雨ニモマケズ手帳」研究 p.135-142 17「雨ニモマケズ」 自筆原稿の写真と活字化されたものが上下に掲載されている。 文中に次の記述あり。 “「ヒドリノトキハ」の「ド」に注意しておきたい” “「ヒデリ」(日照り)を「ヒドリ」という地方語は、私の今までの調査ではどこにも無いらしいのである。” “私は賢治の不用意なミスであり、賢治がこの詩を余り重要視していなかったことを自らに示していると考えられるとも思う。” 石川九楊著作集 別巻3 宮沢賢治の筆蹟を読む(上)-「雨ニモマケズ」手帳 p.419-444 「雨ニモマケズ」の詩表紙 p.425-427 自筆原稿白黒写真あり 「ヒデリ」か「ヒドリ」か p.428-430 文中に次の記述あり。 “ここは訂正されずに書き残されている以上「ヒドリ」として「ヒデリ?」と註記する方がよいのではないかと思われる。” サライ 2016年6月号 p.56-57 『雨ニモマケズ』 山折哲雄著 自筆原稿カラー写真あり “「ヒドリ」は「ヒデリ」の誤記か”との記載あり。 雨ニモマケズ(画本宮沢賢治) パロル舎 1991.6 p.30 “ヒデリの誤記(とびら裏メモ参照)と思われるが、他に日取り(ヒドリ)-日雇いの意味であるという説と、一人(ヒトリ)の誤記であるとする説がある”との記載あり。 雨ニモマケズ 巻末 “誤記とされる「ヒドリ」は、英訳に合わせて「ヒデリ」と改めました”との記載あり。 雨ニモマケズ ポプラ社文庫 [解説]強くやさしくさびしい人の文学 堀尾青史著 p.182-189 “ヒデリノナツハをヒドリと書いて訂正もしていません。しつこいほど書き直しをしたひとなのに、そのままにしています。メモとして書き流したのでしょう”と文末に記述あり。 雨ニモマケズ ミキハウスの絵本 巻末 「行ッテ」という言葉こそが大事なんだよ、と賢治の弟である祖父が私に教えてくれました 宮沢和樹文 自筆原稿カラー写真あり “手帳に直筆で「ヒドリ」と記されている箇所については、その後の研究によってさまざまな説がとなえられているが、本書では、「ヒデリ」と記したかったのではないかという説を採用した”との記述あり。 宮澤賢治のことば 雨にもまけず p.164-170 “<ひでりのときは なみだをながし>の冒頭は、賢治の手帳では<ヒドリ>です。<ヒデリ>の書き間違いというとらえ方が有力で、この本もそれに合わせています”との記載あり。 資料「雨ニモマケズ」 p.190-193 賢治の自筆原稿が掲載されている。 宮沢賢治全集 10 ちくま文庫 雨ニモマケズ手帳 p.35-83 五七頁・五八頁 (p.52) 手帳の文字をそのまま活字化したもの 備考として“五七頁の「ヒドリ」は「ヒデリ」の誤記であろう”との記載あり。 ぼくはヒドリと書いた。宮沢賢治 宗教学者山折哲雄と思想史家綱澤満昭の宮沢賢治に関する対談。 第1章手帳の中の「雨ニモマケズ」の真実 「ヒドリ」と「ヒデリ」をめぐる和田文雄氏の論文から p.14-24 高村光太郎の墨書とナゾの罪業意識 p.25-41 校本宮澤賢治全集 第12巻上 雨ニモマケズ手帳 五七頁・五八頁 p.46 自筆原稿の写真と活字化されたものが上下に掲載されている。 “補説 五七頁の「ヒドリ」は「ヒデリ」の誤記か。”と記載あり。 「ヒドリ」か、「ヒデリ」か 「ヒドリ」、「ヒデリ」問題についてまとめられている1冊。 宮沢賢治が「ヒデリ」を「ヒドリ」と書き誤る傾向があったと、文献的根拠とともに解説し、他説についても検証している。 巻末に次の年表あり。 「〔雨ニモ負ケズ〕」発表関係略年表(一九四五年まで) p.122-123 「ヒドリ」-「ヒデリ」問題関係略年表 p.124-126 | |||||||||||||||
回答プロセス (Answering process) | 『雨ニモマケズ』自筆原稿の掲載されている資料を探し、問題の箇所が「ヒドリ」と読めることを確認。 次に『雨ニモマケズ』が収録されている資料を確認。 多くの資料が「ヒデリ」と記載されているが解説はなし。 「ヒドリ」について解説のある資料を探す。 以下の本には自筆原稿の写真はあるが解説はなし。 <新>校本宮澤賢治全集 第13巻上[2] 筑摩書房 1997.7 p.521-525 以下の本には「ヒデリ」と記載されているが解説はなし。 宮澤賢治(とんぼの本) 新潮社 2011.7 雨ニモマケズ あすなろ書房 2015.11 雨ニモマケズ パイインターナショナル 2012.7 かなしみはちからに 朝日新聞出版 2011.6 | |||||||||||||||
事前調査事項 (Preliminary research) | ||||||||||||||||
NDC |
| |||||||||||||||
参考資料 (Reference materials) |
| |||||||||||||||
キーワード (Keywords) |
| |||||||||||||||
照会先 (Institution or person inquired for advice) | ||||||||||||||||
寄与者 (Contributor) | ||||||||||||||||
備考 (Notes) | 2020.11.6:レファレンス協同データベース事務局よりコメントで回答の記載ミスについてご連絡いただき、これを修正。 2020.12.25:「「ヒドリ」か、「ヒデリ」か」を追加。 | |||||||||||||||
調査種別 (Type of search) | 文献紹介 | 内容種別 (Type of subject) | 質問者区分 (Category of questioner) | 社会人 | ||||||||||||
登録番号 (Registration number) | 1000288757 | 解決/未解決 (Resolved / Unresolved) | 解決 |