レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2019年09月17日
- 登録日時
- 2020/06/06 11:08
- 更新日時
- 2021/02/19 12:52
- 管理番号
- 吹-70-2020-001
- 質問
-
解決
昔、秋になると、香川県出身の父が「サエラ」が食べたいとよく言っていたが、「サエラ」とは何の食べ物か。魚だった記憶はあるが定かではない。
- 回答
-
「サンマ」または「サヨリ」を指すと思われる。
調査の中で下記事項がわかったため上記のとおり回答した。
・質問者の父親の出身地である香川県と同じ四国地方にある高知県では、サヨリのことを「サイラ」「サエリ」「サイチ」と呼ぶこと、
・サンマには、「サイラ」という別称があること、
・西日本の一部ではサンマのことを「サエラ」と呼称されていたこと、
・サンマとサヨリは形状が似ており、また、旬はどちらも秋頃であることから、各地で混同されており、混称されていたこと、
・質問者が、「サエラ」と「サイラ」を聞き間違えていた可能性も否めないこと。
上記の回答をする際に根拠として、以下のインターネット情報と資料を提供した。
(1)ぼうずコンニャクの市場魚介類図鑑ホームページ(水産アドバイザーや本の執筆・出版を行っている「ぼうずコンニャク株式会社」が運営しているサイト)>魚類>サンマ(最終確認2020.6.18)
このページの地方名・市場名欄に、サンマのことを三重県、和歌山県、兵庫県の一部地域で「サエラ」と呼ぶという記載があった。
また、他にもサンマは様々な地方名があり、特に「サエラ」と似た響きのものとして、以下が記載されていた。
・サイラ、サイレ、サイ(三重県、和歌山県)
また、サンマの旬は「夏から秋」と記載されていた。
(2)『図説魚と貝の大事典』(望月賢二/監修 魚類文化研究会/編 柏書房 1997.5)p203~p204,p207~p209
索引から「サンマ」を引くと、サンマの地方名には、以下が記されていた。(p207から抜粋)
・ダンジョウ、バンジョ(新潟県)
・カド(三重県)
・サイレ(和歌山県)
・サイラ(西日本)
・セイラ(長崎県)
また、「サンマの歴史・文化」に以下のように記載されていた。(p208から抜粋)
「秋の味覚の代表ともいえるサンマも、江戸時代末期までは冷遇されていた。サンマという名前すら古典には見あたらず、外形が似るためか、各地でサヨリと混称されていたようである。『和漢三才図会』には、サンマはその脂を灯油に用い、また塩漬けにしてサヨリと偽って売られたとあり、伊賀、大和の人は好んで食べるが、魚中の下級品で、サヨリは「真佐与利」と称して区別しているとある。『魚鑑』にも、上流の人々は食べず、病人によくないとあり、京都ではサヨリと呼ぶとある。」
上記のことから、サンマとサヨリが混称されており、それに伴って地方名でも混称が発生している可能性もあることがわかった。
そこで、索引から「サヨリ」を引くと、サヨリの地方名として以下が記されていた。(p203から抜粋)
・サイラ(高知県)
このことから、西日本ではサンマもサヨリも「サイラ」と呼ぶことがあるということがわかった。
また、質問者の父は香川県出身であるとのことだったが、同じ四国地方の高知県ではサヨリを「サイラ」と呼ぶということがわかった。
さらに、旬の時期については以下のように記されていた。(p208,p203抜粋)
・サンマ:10月頃。
・サヨリ:1月~3月。
(3)『魚介類別名辞典』(日外アソシエーツ株式会社/編 日外アソシエーツ 2016.1)p157,P160
「さより」の項目を見ると、「サンマ(秋刀魚)の別名」という記載があり、「さんま」の項目を見ると、「別名:サイラ、サザ、サヨリ、バンジョ」という記載があった。こちらの資料からも、サンマとサヨリが混称されていることがわかる。
(4)『さかな異名抄』(内田恵太郎/著 朝日新聞社 1987.6)p166~p167
サンマの項目には地方名として、以下が記されていた。
・サイラ、サイリ、サイロ、サエラ(三重県から西の関西、四国、九州)
・サヨリ(京都や和歌山、北陸の一部)
また、「サヨリとサンマの地方名はとかくまぎらわしい。」と記載されていた。
旬の時期については、「晩秋に房総沖でとれる産卵前のものが、あぶらがのって一番うまい。」と記されていたことから、こちらでもサンマの旬が秋であることがわかる。
サヨリの項目も確認したところ、「関東、東海から関西でサエロ・セエロ・サイリ、高知でサエリ・サイチ(中略)この系統の名はサンマとの混称が見られる。和歌山の熊野ではオキサヨリというのがサヨリで、土地の名のサヨリはサンマのことだ。紀州や京都でいうサヨリは昔はサンマのことであった。」とあった。
サヨリの旬について、ぼうずコンニャクの市場魚介類図鑑ホームページ>魚類>サヨリ(最終確認2020.6.18)を調べたところ、「味わい」欄に「旬は秋、冬から春」とあった。
これらのことから、冒頭のように回答した。
- 回答プロセス
-
まず、インターネットで「香川県 サエラ 魚」と検索したが、該当する結果は見つからなかった。次に、「秋 魚 サエラ」というキーワードで検索した結果、(1)のホームページが見つかった。しかし、(1)では、質問者の父の出身地である香川県でのサンマの呼び方については記載されていなかったので、香川県やその属する地域でのサンマの地方名がないか調べるために、当館の検索機で「魚 別称」「魚 別名」と検索したところ、(2)(3)の資料が見つかった。次に、当館の検索機で件名を「魚類」として検索したところ、(4)が見つかった。最後に、サヨリの旬について調べるために、再度(1)を確認した。
- 事前調査事項
- NDC
-
- 脊椎動物 (487 10版)
- 衣食住の習俗 (383 10版)
- 参考資料
-
-
望月賢二 監修 , 魚類文化研究会 編 , 望月, 賢二, 1946- , 魚類文化研究会. 図説魚と貝の大事典. 柏書房, 1997.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002621372-00 , ISBN 4760114424 -
日外アソシエーツ株式会社 編集 , 日外アソシエーツ株式会社. 魚介類別名辞典. 日外アソシエーツ, 2016.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I027025169-00 , ISBN 9784816925771 -
内田恵太郎 著 , 内田, 恵太郎, 1896-1982. さかな異名抄. 朝日新聞社, 1987. (朝日文庫)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001867385-00 , ISBN 4022604506
-
望月賢二 監修 , 魚類文化研究会 編 , 望月, 賢二, 1946- , 魚類文化研究会. 図説魚と貝の大事典. 柏書房, 1997.
- キーワード
-
- サエラ
- サンマ
- サヨリ
- サイラ
- サイロ
- サイレ
- セイラ
- サイチ
- 秋刀魚(さんま)
- さんま
- さより
- サエリ
- サイリ
- サエロ
- セエロ
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000282832