レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2007/08/15
- 登録日時
- 2009/07/10 02:10
- 更新日時
- 2011/01/11 10:05
- 管理番号
- 10-RE-200904-02
- 質問
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解決
「源氏八領」と呼ばれる鎧が、源義家の時代に作られて源氏に代々受け継がれたという。
現存するなら収蔵先を、現存しないのなら外見の特徴が分かる資料を教えてほしい。
- 回答
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「源氏八領(げんじはちりょう)」とは、清和源氏の宗家に重宝として相伝された八領の鎧。
月数(つきかず)、日数(ひかず)、薄金(うすがね)、源太産衣(げんたのうぶぎぬ)、沢瀉(おもだか)、膝丸(ひざまる)、八龍(はちりょう)、楯無(たてなし)の銘がある名甲の称。
(「日本国語大辞典」【源氏八領鎧】より)
「国史大辞典」や「日本国語大辞典」「大辞泉」では「現存しない」とされている。
一方、「日本美術作品レファレンス事典 工芸篇」「図解日本甲冑事典」によると、
山形県菅田天神社の「小桜革威鎧(こざくらがわおどしよろい)」が「楯無鎧」、
愛知県猿投神社蔵の「樫鳥絲威鎧(かしどりいとおどしよろい)」が「薄金鎧」との伝承があるとのこと。
「小桜韋威鎧(こざくらがわおどしよろい)(伝・楯無鎧)」、「樫鳥絲威鎧(かしどりいとおどしよろい)(伝・薄金鎧)」は、写真が収録されている美術図鑑を紹介。
残りの六領については現存についての記載は見つからず。
「大辞泉」・「日本国語大辞典」記載内容と、「保元物語」・「平治物語」に源氏八領の描写があることを案内。
他にも当館資料「甲冑と名将」「日本甲冑図鑑 上巻」に源氏八領についての記述があるので、これらを紹介。
- 回答プロセス
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1.「国史大事典」に“源氏の八甲”の項目あり。
「保元物語」から鎧の外見についての記述が引用されており、また伊勢貞丈「源氏八領鎧考」など参考図書の紹介もある。
1) 伊勢貞丈「源氏八領鎧考」は、「国書総目録」で調べたが、活字本なし。
2.商用DB「ジャパンナレッジ」を“源氏八領”をキーワードに検索
→「日本国語大辞典」・「デジタル大辞泉」に「源氏八領の鎧」の項あり。
由来・八領の名称が紹介。
「保元物語・平治物語に記述があるが、現存しない」
さらに、“源氏八領”をキーワードに全文検索すると、下記4件が見つかる。
1)うす‐がね【薄金】(デジタル大辞泉)
2)おも‐だか【沢瀉/面高】(デジタル大辞泉)
3)たて‐なし【楯無】(デジタル大辞泉)
4)おも‐だか【沢瀉・面高】(日本国語大辞典)
外見の描写もあり。
例)「沢瀉(おもだか)」 ~札(さね)は黒塗り、総萌黄(そうもえぎ)の糸で沢瀉威(おどし)にし、耳糸は白を用いたという。
(「大辞泉」より)
3.「日本美術作品レファレンス事典 工芸篇」を確認。
→「作品名索引」には“楯無”などの号ではなく“小桜韋威鎧(号楯無)”という名称で紹介されるので、
これを通覧し探すのは困難。
「事項名索引」で「鎧」→「武具(具足工芸)」となっており、「具足工芸」の章を通覧。
源氏八領のうち“楯無”が「小桜韋威鎧」の名称で山梨県の菅田天神社に所蔵されているとあり。国宝。
4.“楯無”以外も現存していれば、国宝や重要文化財の指定をうけている可能性が高い。
→「国指定文化財データベース」では“楯無”などの号では検索できず。
「小桜韋威鎧(こざくらがわおどしよろい)」の正式名称でないと検索できない。
正式名称の分からない他の七領については通覧するしかなし。収録点数が多すぎ、断念。
5.当館資料で鎧・甲冑の事典類を確認
「甲冑と名将」(雄山閣出版、1966)p28に「小桜威鎧」(管田天神社蔵)のモノクロ写真あり。
「源義家の巻」「源為朝の巻」などに源氏八領についての記述がある。
参考資料としておすすめするが、索引がないので通覧の必要あり。
「図解日本甲冑事典」(雄山閣出版、1996.2)に「名甲紹介」の章があるが、「小桜韋威鎧」などの正式名称で紹介されている。
「分類索引」に「薄金鎧」、「楯無鎧」、「八龍の鎧」の項あり。
うち「薄金鎧」は、愛知県猿投神社蔵の「樫鳥絲威鎧(かしどりいとおどしよろい)」が「伝・薄金」とされているが信憑性に欠けるとのこと。
「楯無鎧」は、山形県菅田天神社の「小桜革威鎧」が「楯無鎧」とされているとのこと。
「日本甲冑図鑑 上巻」索引なし。目次より「伝説上の初期大鎧」「源平争覇期の大鎧」の項を見つけ、内容確認。
源氏八領についての記述がある。参考資料としておすすめする。
6. 「樫鳥絲威鎧」(伝・薄金鎧)が「日本美術作品レファレンス事典 工芸篇」に収録されているか確認。
収録されているが、「伝・薄金」等の注釈はなし。
- 事前調査事項
- NDC
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- 金工芸 (756 9版)
- 参考資料
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「国史大辞典5 け-こほ」 国史大辞典編集委員会/編(吉川弘文館、1985.2、ISBN 4-642-00505-6、当館書誌ID:0000166995)
商用データベース「ジャパンナレッジ」 「デジタル大辞泉」「日本国語大事典」
「国指定文化財データベース」(http://www.bunka.go.jp/bsys/ )2009.4.3確認
「日本美術作品レファレンス事典 工芸篇」日外アソシエーツ株式会社/編集(日外アソシエーツ、2002、ISBN 4-8169-1707-1
当館書誌ID:0010260227)
「甲冑と名将」 笹間 良彦/著(雄山閣出版、1966、当館書誌ID:0080034999)
「図解日本甲冑事典」笹間 良彦/著(雄山閣出版、1996.2、ISBN 4-639-00779-5、当館書誌ID:0000524166)
「日本甲冑図鑑 上巻」笹間 良彦/著(雄山閣、1964、当館書誌ID:0080099116)
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「国史大辞典5 け-こほ」 国史大辞典編集委員会/編(吉川弘文館、1985.2、ISBN 4-642-00505-6、当館書誌ID:0000166995)
- キーワード
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- 源氏八領
- 源氏の八甲
- 楯無
- 鎧
- 胴丸
- 具足
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 質問者区分
- 学生
- 登録番号
- 1000056337