レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2020年09月02日
- 登録日時
- 2020/11/17 17:01
- 更新日時
- 2020/11/18 16:34
- 管理番号
- 0000110869
- 質問
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解決
詩吟のテキストと思われるものに、船曳大滋(フナビキ オオシキ(ダイジ))の歌として「しのびかね 打ちし 安宅の 一枝は 打たれしよりも 身にやこたえし」とあるが、「一枝」は「一杖」ではないか。正確な詩句を知りたい。
- 回答
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船曳大滋の「しのびかね…」の歌について、記載した資料は見あたらなかった。
なお、雑誌「能楽」第4巻3号(「能楽」発行所 1906.3)p19に、「古人謡曲詠歌」として、当該歌が収録されているが、作者は「村田春門」(ムラタ ハルカド)とある。また、該当部分は「一杖」とある。(引用にあたって、レイアウトを一部変更している。)
村田春門
(一首略)
安宅
しのひかねうちしあたかの一杖はうたれしよりも身にやこたえし
国立国会図書館デジタルコレクション:能楽4(3) (図書館送信資料、2020年11月17日最終確認、以下同)
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1519560
船曳大滋については、下記資料1(読みを「フナビキ オオシキ」とする。)と、『三百藩家臣人名辞典 第7巻』(調査済み、読みを「フナビキ ダイジ」とする。)で参考文献に挙げられている『久留米小史 巻20』、『稿本八女郡史』『久留米市誌 下篇』を国立国会図書館デジタルコレクションで確認したが、歌集等に関する記述がなく、彼の歌を探すことができなかった。また、「榴園集」については、国立国会図書館サーチ、新日本古典籍総目録で検索したが、該当する資料が見あたらなかった。
国立国会図書館デジタルコレクション:久留米小史 巻20(図書館送信資料)
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/9572846
国立国会図書館デジタルコレクション:稿本八女郡史(インターネット公開資料)
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/951645
国立国会図書館デジタルコレクション:久留米市誌 下篇(インターネット公開資料)
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1209642
なお、船曳の師である中島広足(ナカジマ ヒロタリ)の自選集に「橿園集」(カシゾノシュウ)があり、歌集である第1巻が以下の文献で翻刻されているが、通覧する限り該当の歌はなかった。
岡中正行「中島広足全歌集の研究-2-自筆本『橿園集』・翻刻と解題」(「帝京大学文学部紀要. 国語国文学」第29号 帝京大学文学部国文学科 [編] 1998.1 p.217-286 図書館送信資料)
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2302760
また、村田春門の歌集についても、新日本古典籍データベースによると、翻刻されているものは見あたらなかった。なお、以下の文献に関西大学所蔵「村田春門家集」の翻刻が掲載されているが、「しのびかね」の歌は収録されていなかった。
関西大学図書館手紙を読む会「関西大学所蔵「村田春門家集」(原題『藤門雑記 近代和歌』)」(「関西大学図書館フォーラム」第22号 関西大学図書館 2017.6)
関西大学図書館手紙を読む会「関西大学所蔵「村田春門家集」(原題『藤門雑記 近代和歌』)2」(「関西大学図書館フォーラム」第23号 関西大学図書館 2018.6)
「関西大学図書館フォーラム」は、第5号から以下のウェブページで公開されている。
関西大学図書館:図書館刊行物
https://opac.lib.kansai-u.ac.jp/?page_id=17322
なお、資料2『日本国語大辞典 第2版』の「えだ」の項(第2巻p641)によると、「薙刀」を数えるのに用いる、ともあるため、杖(錫杖)の数え方として「一枝」との表現はできなくもないと思われる。
- 回答プロセス
- 事前調査事項
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当該テキストは、網谷一才の詩吟「安宅の関」と思われる。「朗々 読み終わる 勧進帳 涙を呑で 君を打つ 金剛の杖」とあり、当該歌に続いて、「誰か忠臣の 心情に 動かざる 莫し この状 人をして 長く忘れ ざらしむ」とある。また、備考として、「※短歌の作者…船曳大滋…詳細なことは、不詳」とある。「一枝」の部分には「ひとえだ」との読みがながある。
質問者によると、弁慶が義経を杖で打つ場面なので、「枝」ではおかしいのではないか、とのこと。また、この歌は「榴園集」に収録されているのではないか、とのこと。
『新編 国歌大観』確認済み。国立国会図書館サーチをキーワード「船曳大滋」「榴園集」で検索、該当なし。
『三百藩家臣人名事典7』p110「船曳大滋」の項は確認済み。インターネットで「船曳大滋」を検索すると、例えば以下のページなどがヒットする。
黄虎洞:ギャラリー解説 書画 花亭船曳大滋、和歌(江戸時代、AD1819~1847)(中林史朗)
http://www.ic.daito.ac.jp/~oukodou/gallery/pic-1625.html
- NDC
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- 声楽 (767 9版)
- 詩歌 (911 9版)
- 参考資料
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1.西日本新聞社福岡県百科事典刊行本部 編 , 西日本新聞社. 福岡県百科事典 下. 西日本新聞社, 1982.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001805064-00 (p749) -
2.日本国語大辞典第二版編集委員会, 小学館国語辞典編集部 編 , 小学館. 日本国語大辞典 第2巻 第2版. 小学館, 2001.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002966612-00 , ISBN 4095210028 (p641)
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1.西日本新聞社福岡県百科事典刊行本部 編 , 西日本新聞社. 福岡県百科事典 下. 西日本新聞社, 1982.
- キーワード
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- 船曳, 大滋, 1819?-1847
- 村田, 春門, 1765-1836
- 詩吟
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 人物
- 質問者区分
- 図書館
- 登録番号
- 1000289605