レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2019年10月8日
- 登録日時
- 2019/11/01 10:12
- 更新日時
- 2019/12/11 16:38
- 管理番号
- 県立長野-19-050
- 質問
-
解決
近世以前信濃国における流刑地は、現在のどこになるのか。流された人物も知りたい。
- 回答
-
長野県内の配流地については、一覧的に調べることができる資料を確認できなかった。流刑、流人に関係する資料から長野県分を探すことと、『信濃史料』や『長野県史』といった一般的な資料の索引から「配流」「流人」というキーワードで検索したため、悉皆的な調査ではない。
『長野県の地名』p.293に、延喜式で中流国に信濃国とあげられる以前のこととして、
「続日本紀」によれば、養老五年(七二一)六月に諏方国が信濃国から分かれて独立、天平三年(七三一)に再び信濃国に併合された。この間、諏方国は美濃の按察使の管理下におかれ、神亀元年(七二四)三月には中流国に定められた。
とある。この諏方国は、現在の諏訪市を含む諏訪郡周辺と思われる。
また、『続日本紀』p.148-149の巻第九 聖武天皇 神亀元年三月では
庚申、諸々の流配の遠近の程を定む。伊豆・安房・常陸・佐渡・隠岐・土佐の六国を遠とし、諏方・伊豫を中とし、越前・安藝を近とす。
となっている。
『日本流人島史 その多様性と刑罰の時代的特徴』p.94-100 に「福島正則」と「絵島」があげられている。
・福島正則(外様大名)
上高井郡小布施町
配流期間:元和元年(1615年)-寛永元年(1624年) 64歳没
・絵島(大奥 大年寄)
伊那市高遠
配流期間:正徳4年(1714)‐寛保元年(1741年) 61歳没
『信濃史料 3巻』p.23-25,28 p.537 に「源資賢」「琳學」が確認できた。
・源資賢
信濃
配流期間:応保2年(1162年)6月-長寛2年(1164年) 召喚
(出典:「公卿補任」応保2年,長寛3年, 「清獬眼抄」 凶事 一流人事, 「百錬抄」7, 「帝王編年記」21, 「平家物語」6嗄聲)
・僧 琳學(延暦寺宗徒)
信濃
配流期間:建保2年5月
(出典:皇帝紀抄 8 順徳院 5月22日)
また、『国史大辞典』では、「伊賀光宗」「松平忠輝」が、確認できた。
・伊賀光宗(鎌倉前期の武将)
信濃
配流期間:元仁元年(1224年)-嘉禄元年(1225) 許されて帰参
・松平忠輝(徳川家康の六男 松代城主)
諏訪郡高島藩 預かり
配流期間:寛永3年(1626年)4月-天和3年(1683年)92歳没
ウィキペディアで流罪【最終確認2019.11.1】をみると、信濃に配流された人物として挙げられていた8人のうち上記以外で『国史大辞典』で確認できた近世以前の人物は、次の2名。
・僧 日樹(日蓮宗)
伊那郡飯田藩脇坂氏 預かり
配流期間:寛永7年(1630年)-寛永8年(1631年)
・吉良義周(吉良家義央の養嗣子)
諏訪郡高島藩 預かり
配流期間:元禄16年(1703年)-宝永3年(1706年)22歳没
※ 『長野県歴史人物大事典』『国史大辞典』で確認できた人物については、出自、配流期間等を補記。「信濃」となっているものは、それ以上の記述はなく地域は不明。
なお、『信濃史料 6巻』信濃史料刊行会編・刊 1969【N208/28a/6】p.54-55(南朝正平4年8月 北朝貞和5年8月)には、
畠山大蔵少輔某(畠山直宗) 上杉弾正少弼(すけ)(上杉朝定)を配流すべし
(出典:「園太暦」13 8月15日)
とあるが、実際に配流したという文書は確認できなかった。
『同書』p.55-56(南朝正平4年8月 北朝貞和5年8月)にも、
僧 實尊(毘沙門堂僧正)配流を議す
(出典:「園太暦」13 8月15日)
とあるが、信濃には配流されていない。
- 回答プロセス
-
1 NDC分類322.1(日本の法制史)や326(刑法)の書架で「流罪」に言及している資料を探す。『日本流人島史 その多様性と刑罰の時代的特徴』に福島正則と絵島が紹介されていた。
2 一覧で調べることができる資料がないか、『国史大辞典』で調べたが配流先の詳細は分からなかった。ただ、信濃国が「中流」先とした法律が「延喜式」とわかった。また、延喜式より前は神亀元年(724年)の式には諏方国となっていた。『長野県の地名』で諏方(すわ)国を確認する。さらに、この記述の出典とされる『続日本紀』について当該箇所を確認した。
3 流刑、流人に関係する資料から長野県分を探すことと、『信濃史料』や『長野県史』といった一般的な資料の索引から「配流」「流人」というキーワードで検索する。『信濃史料』の索引では「流人宣下」があった。掲載個所を確認していく。
4 当館契約データベースJapan Knowleadge【最終確認2019.11.1】で『国史大辞典』を中心に「信濃」と「配流」で検索をする。
5 ウィキペディアで流罪【最終確認2019.11.1】をみると、信濃に配流されたとして挙げられていた人物を『国史大辞典』『長野県歴史人物大事典』で確認する。
- 事前調査事項
- NDC
-
- 法制史 (322 8版)
- 刑法.刑事法 (326 8版)
- 中部地方 (215 8版)
- 参考資料
-
-
平凡社 [編] , 平凡社 , 平凡社地方資料センター. 長野県の地名. 平凡社, 1979. (日本歴史地名大系 / 平凡社 [編], 20)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000096-I011315678-00 , ISBN 4582490204 (【N290.3/54】p.293) -
佐竹昭広 [ほか]編 , 藤原, 継縄, 727-806 , 青木, 和夫, 1926-2009. 新日本古典文学大系 13. 岩波書店, 1990.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002075435-00 , ISBN 4002400131 (【918/シケ/13】p.148-149) -
重松一義 著 , 重松, 一義, 1931-. 日本流人島史 : その多様性と刑罰の時代的特性. 不二出版, 2011.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I023159700-00 , ISBN 9784835070780 (【322.1/シカ】p.94-100) -
信濃史料刊行会 編. 信濃史料 第3巻 (自久寿2年8月至嘉禄2年11月). 信濃史料刊行会, 1953.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000000851894-00 (【N208/28a/3】) -
神津 良子/編 , 神津 良子 , 神津 良子. 長野県歴史人物大事典. 郷土出版社.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I059269886-00 , ISBN 4876631263 (【N283/13】)
-
平凡社 [編] , 平凡社 , 平凡社地方資料センター. 長野県の地名. 平凡社, 1979. (日本歴史地名大系 / 平凡社 [編], 20)
- キーワード
-
- 流人
- 中流
- 配流
- 流刑
- 諏方国
- 延喜式
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 郷土 人物
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000263283