レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2013年06月07日
- 登録日時
- 2013/06/07 14:31
- 更新日時
- 2018/11/22 18:21
- 管理番号
- 15076
- 質問
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図書館報に本の表紙写真を掲載する場合の許諾について
- 回答
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下記(1)(2)のような関連情報あり。
(1)大学図書館における著作権問題Q&A (第8版)2012.3.23
http://www.janul.jp/j/documents/coop/copyrightQA_v8.pdf
※p.49-50に次の記事あり。
「Q102:図書館報に新着図書の紹介をするため、表紙全体が写った写真を掲載したいのですが許諾が必要でしょうか。
A: 書名は、法的には「題号」と呼ばれています。著作者が題号の決定に際して相当の創意工夫を行うことは想像に難くありませんが、一般に、題号に財産権としての著作権は及ばないとされています。
また、多くの場合、表紙の書名や著者名などは、よりインパクトを与えるようにデザインされており、そのようなデザインが保護の対象にはならないと完全には言い切れないものの、相当の創作性がない限り活字のデザインや文章等のレイアウトも保護の対象にはならないとされています。
ただし、表紙にはイラストや写真が用いられていることが多く、これらのイラストや写真は、通常の絵画や写真と同様に保護の対象になりえます。そのような、保護の対象となるイラストや写真が用いられた表紙の写真を図書館報に掲載する場合、複製を行うことになりますが、図書館報での扱いが、単なる図書の紹介ではなく、貸出することを広報することが目的である場合、法 47 条の 2 に基づき、表紙に用いられているイラストや写真の著作権者の許諾を得ることなく複製することができます。
そもそも法 47 条の 2 は、絵画を販売する際の図録を著作権者の許諾を得ることなく作成することなどを意図した権利制限規定です。図書の場合、通常、本文部分が貸出対象であって、表紙に用いられているイラストや写真が本来の貸出対象ではありませんが、法 47 条の 2 により表紙のイラストや写真を複製することは範囲内と解釈されています。
なお、規則 4 条の 2 により、図書館報が紙媒体で刊行される場合、写真は 50 平方センチメートル以下、電子媒体で刊行される場合、32,400 画素以下(公衆送信される場合も同じ。ただし、複製防止措置が講じられている場合は 90,000 画素以下。)でなければなりません。」
(2)図書館と著作権 | 著作権Q&A | 公益社団法人著作権情報センター CRIC
http://www.cric.or.jp/qa/cs03/index.html (2013/06/10確認)
に次の情報あり。
「Q11当館では、「図書館だより」に絵本や本の表紙を写真に撮り、毎月新着図書の紹介として載せ、また、その図書館だよりをそのままホームページにも載せておりますがよろしいでしょうか?
A11 絵本や本の表紙には、画家や写真家、イラストレーター、装丁者の著作物が掲載されていることが多いと思います。本来的には、それらの著作者が著作権を持っているわけですが、出版社に権利が譲渡されているかも知れませんので、「図書館だより」に載せる場合には、取りあえず、出版社に問い合わせしたらいかがでしょうか?
図書館としては、その本の宣伝をしてやるのだからとか、著作者のためにもなるのだからと、善意で載せている気持ちかも知れませんが、権利者の中には、無断で複製していてけしからんといってくる人がいるかも知れません。
しかし、最近は「図書館だより」などで新刊紹介の際に、表紙を使うことについて、無断でもよいのでは、という見解が示されており、筆者もほぼこの見解に賛成です。
例えば、出版ニュース社代表の清田義昭氏は「日本中で出版される新刊書の数は1年間で約8万点である。そのうち書評やブックガイドなどで紹介されるのはそれほど多くはない。表紙の写真が使われるのは、さらにその一部だ。著者、出版者、読者の三者にとってプラスになるのだから、本の紹介のために表紙の写真を利用することは自由であっていいと思うのだが、どうだろうか。」(「コピライト」559号)と述べています。
また、Q9で紹介しましたように、社団法人日本書籍出版協会児童書部会など児童書四者懇談会が、「読み聞かせ団体等による著作物の利用について」という手引きを作成して、公表しておりますが、その中で、表紙の使用について次のように記しています。
「ブックリスト、図書館内のお知らせ、書評等に、表紙をそのまま使用する場合は、商品を明示しているものとみなされ慣行上無許諾で使用できる。ただし、ホームページにのせる場合は、引用にあたる場合を除き出版社への確認が必要。」
この見解によれば、この四者に関係する書籍については、「図書館だより」で使用することは問題なさそうですが、HPに載せる場合は、確認が必要のようですが……。
また、新聞の書評欄のように、図書館においても、その書籍の書評を書いて、そこに、本の写真を載せるのは、著作権法第32条の「引用」の規定により、無断で行ってもかまわないものと思われます。」
【2013年6月27日・7月2日 追記】
コメントにより、以下の(1)、(2)を教えていただきました。
(1)『専門図書館と著作権Q&A 2012(2012.9)』(※小冊子)に、以下の設問があった。
※Q46(p.27)に、次の見解が紹介されている。
「「図書館だより」に余白がでると、本の紹介を兼ねて、本の表紙や中の挿絵などを縮小複写して掲載していますが、 これは許されますか。」という設問が設けられていて、「黙認されているようです」という見解が紹介されている。
本文は次の通り。
「デザイン化されている表紙には著作権が存在するので、「図書館だより」などへの掲載には著作権者の許諾が必要です。しかし、書評など書籍の紹介の文章の中で、表紙のごく小さい図を引用として使用することはしばしば行われており、出版社の利益を害するものではないことから、黙認されているようです。また、購入書籍をブックトラックにならべ、背表紙を撮影して社内ホームページで公開することは、カバーデザインの著作権を侵害することがほとんどないと考えられますので、ひとつの方法です。」
また、後ろについている付録の47条の2の解説のところでは、可能との解釈が示されていた。
(2)また、公式解釈に近い、文化庁著作権課またはその関係者が示した解釈として、直接、図書館のことに言及しているわけではないが、次の資料情報がある。
・池村聡. 別冊 著作権法コンメンタール 平成21年改正解説. 勁草書房. 2010.5.(※当館請求記号:0212/H1/9-4)
※p.63-64に、「2 音楽CD等のジャケット、書籍の表紙等の取扱い」という節があり、
音楽CDのジャケットや書籍の表紙画像は直接貸し出されるものではないものの、ジャケットや表紙のデザインが購買動機に大きく寄与していることがあること、ジャケットや表紙を含めてトータルで一つの作品として作られている実態があること、また、同一商品の重複購入の防止の観点から、
著作権法47条の2の対象として含めてもよいという見解が述べられている。
また、同書のp.66に、
「条文上、特に譲渡・貸与の態様は限定していないことから、いわゆるインターネットオークションに限られるものではなく、通常のショッピングサイトや、カタログオークション、通信販売等も広く対象となる。また、本条の文言からは、必ずしもこのような非対面取引に 限定されるものとは解されない。したがって、通常の美術商・画商がギャラリーで絵画を販売するにあたり、取扱商品を広告で紹介するといった、対面 取引についても、本条の要件をすべて満たす限り本条の適用を受け得るものと解される」
とも書かれている。
これらの見解も参考になるのではないかと思われる。
- 回答プロセス
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(参考)
・大学図書館における著作権問題Q&A (第7版)2009.3.27
http://www.janul.jp/j/documents/coop/copyrightQA_v7.pdf
「Q102:図書館報に新着図書の紹介をするため、表紙全体が写った写真を掲載したいのですが許諾が必要でしょうか。
A: 書名は、法的には「題号」と呼ばれています。著作者が題号の決定に際して相当の創意工夫を行うことは想像に難くありませんが、一般に、題号に財産権としての著作権は及ばないとされています。
また、多くの場合、表紙の書名や著者名などは、よりインパクトを与えるようにデザインされており、そのようなデザインが保護の対象にはならないと完全には言い切れないものの、相当の創作性がない限り活字のデザインや文章等のレイアウトも保護の対象にはならないとされています。
ただし、表紙にはイラストや写真が用いられていることが多く、これらのイラストや写真は、通常の絵画や写真と同様に保護の対象になりえます。
図書館における新着図書の紹介や書評などによって、より有効に著作物が利用され、結果として著作権者の利益になる可能性を含むような場合でも、このような場合の複製行為を認める権利制限規定はありませんし、書籍の紹介などに、必ずしも表紙の写真が必須とは考えられないので、引用(法32条)にもあたらないと考えるのが自然です。
したがって、許諾を得てから掲載するべきと考えられます。」
- 事前調査事項
- NDC
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- 図書館サービス.図書館活動 (015)
- 参考資料
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・大学図書館における著作権問題Q&A (第8版)2012.3.23
http://www.janul.jp/j/documents/coop/copyrightQA_v8.pdf -
・大学図書館における著作権問題Q&A (第7版)2009.3.27
http://www.janul.jp/j/documents/coop/copyrightQA_v7.pdf -
高校の司書部会でブックガイドを作成する際、ネット等の本の紹介文や、本の帯、カバーの紹介文等の一部をそのまま使用することは著作権の規定に違反するのか。(福井県立図書館).
http://iss.ndl.go.jp/books/R000000006-I000104323-00 -
文化庁長官官房著作権課. 著作権法の一部を改正する法律(平成21年改正)について. 2010-01. コピライト 49(585) p. 21~50
http://iss.ndl.go.jp/books/R000000004-I10550340-00 -
文化庁長官官房著作権課. 著作権法施行令の一部を改正する政令等について. 2010-10. コピライト 50(594) p. 21~38
http://iss.ndl.go.jp/books/R000000004-I10848255-00 -
池村聡 著. 著作権法コンメンタール 別冊 (平成21年改正解説). 勁草書房, 2010.
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000010860454-00 , ISBN 9784326402588 -
・「図書館だより」で本の紹介をするときに表紙の画像を載せているが、許可はとっているのか。(蒲郡市立図書館)
https://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=ref_view&id=1000135311
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・大学図書館における著作権問題Q&A (第8版)2012.3.23
- キーワード
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- 図書館奉仕
- 複写
- 著作権
- 国公私立大学図書館協力委員会
- 大学図書館著作権検討委員会
- 著作権法47条の2(美術の著作物等の譲渡等の申出に伴う複製等)
- 著作権関係事例
- 書評
- 引用
- 単なる図書の紹介ではなく、貸出することを広報することが目的
- 紙媒体
- 電子媒体
- 公衆送信
- 複製防止措置
- インターネット取引における美術品の紹介
- 著作権法-日本
- 照会先
- 寄与者
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- 福井県立図書館
- 蒲郡市立図書館
- 備考
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著作権関係事例。
(関連情報)
・著作権法の一部を改正する法律(平成21年改正)について 文化庁長官官房著作権課
コピライト., 49(585) 2010.1
※p.32に次の情報あり。
「(4)美術の著作物等の譲渡等の申出に伴う複製(第47の2)(新設)」
・著作権法施行令の一部を改正する政令等について 文化庁長官官房著作権課
コピライト., 50(594) 2010.10
※p.28-31に次の情報あり。
「(3)美術の著作物等の譲渡等の申出に伴う複製等について講ずべき措置(法第47条の2、令第7条の2、規則第4条の2関係))
a.美術の著作物等の譲渡等の申出に伴う複製等について講ずべき措置の内容(令第7条の2関係)
b.文部科学省令で定める規則(規則第4条の2関係)
①複製についての基準(規則第4条の2第1項)
②公衆送信についての基準(規則第4条の2第2項・第3項)」
・Q&A(著作権相談から)/インターネット取引における美術品の紹介(弁護士 早稲田裕美子)(p.68)
コピライト., 50(595) 2010.11
※「Q インターネットオークションやネット上で美術品のレンタル業務を行う場合、著作権法の改正により、対象となる作品を紹介・掲載できるようになったと聞きましたが、どのような内容なのでしょうか。」
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000132222