レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2013/06/08
- 登録日時
- 2013/08/26 00:30
- 更新日時
- 2020/07/01 11:26
- 管理番号
- 0000000057
- 質問
-
未解決
岩手県には「わんこそば」というものがある。これは一口大ぐらいのそばを、お客の椀に次々給仕するというものである。
このことについて、『そば風土記』(植原路郎著)という本の中に「うしろから客の椀にそばを投げ込む方式は、能登半島にも残っている(郷土研究家、笠松一夫氏談=故人)」という記述がある。また『蕎麦辞典』(植原路郎著)の「わんこそば」の項目にも同様の記述がみられる。
このような風習が能登半島にあるのか、またあるとするならば、どのようなものなのか、前述したものより詳しく述べた資料を紹介してほしい。
- 回答
-
能登半島に「わんこそば」のようにそばを食べる風習があるという文献は見つけられなかった。輪島市立図書館等、能登地方の図書館にも問い合わせたが、知っているという館はなかった。
能登半島の麺類としては、『輪島市史 通史編・民俗文化財編』p275-285に「輪島素麺」に関する記事があった。
高桑守「〈ダンバライ〉と〈ソバオコウ〉-口能登漁村の講行事-」(「加能民俗研究」1(1972.10)p10-18)に、「蕎麦を食べる」ということは書かれていたが、食べ方は書かれていなかった。
「ソバ講はまず読経の後西念寺住職により御消息が読まれ、その後蓮如上人にちなみ手打蕎麦を食べ、参加者全員で酒を共飲して散会する。」(p17)
当館は所蔵していないので内容が確認できないが、Googleの書籍で「能登 岩手 そば」をキーワードに検索したところ、あんばいこう著『食文化あきた考』p64がヒットした。
「いわゆる庶民の知恵というやっで、肉食を禁止された農民がウサギを 1 羽 2 羽と数えて
「ウサそこで庶民は、そば粉をちぎって「 ... (小さないれもので何杯もお代わりする)では
なく、瀬戸内や能登地方でもみられたもののようで岩手のわんこそばにっいてはル?ッ ...」(原文ママ)
「サイメン(再麺)」について書かれているらしい。
北國新聞データベースで「わんこそば」をキーワードに検索したところ、以下の記事があった。(抜粋)
「北國新聞」2012年11月02日(金)朝刊25頁
見出し:白峰のおろしうどんを提供 雪だるまの里協議会 白山市
本文:…おろしうどんは、しょうゆであえた大根おろしと油揚げをのせた冷たいうどん。
白峰では冠婚葬祭の後、参列者へ感謝を表すため、わんこそばのように次々とお代わりを
注いで振る舞う風習がある。…
「北國新聞」2011年11月05日(土)朝刊37頁
見出し:郷土料理のおろしうどんを味わう 白山市白峰地区で「や~うま!」
本文:…観光客らはわんこそばのように次々とお代わりがつがれる白峰独特のおろしうど
んを味わった。…白峰のおろしうどんは、大根おろしをのせた冷やしうどんで、同地区の
冠婚葬祭などで振る舞われる。
また、「白峰雪だるまの里協議会ホームページ」に、「おろしうどん」について以下の解説があった。
「おろしうどんは、かつて冠婚葬祭の際には、
必ずと言ってもいいほど出されました。
お椀が空になると、お代わりが注がれ、そのやり取りは
「もうようござる」と手でふたをするか、お椀を隠すまで続くという
おもしろい風習があります。」
(http://homepage3.nifty.com/yukidaruma-club/yukidarumacafe.html 最終アクセス2013/6/8)
「うしろから客の椀にそばを投げ込む方式は、能登半島にも残っている」と述べた郷土研究家の笠松一夫氏は、国立国会図書館サーチで検索すると、『若越むかし絵ばなし』 等の著者で、福井県とゆかりのある人物ではないかと思われる。
- 回答プロセス
-
まず郷土資料の開架の「38*」「596」の棚を手当たりしだい見たが、蕎麦をわんこそばのように食べるという記述はなかった。
郷土雑誌の「能登」に何か載っていないかと思ったが、蕎麦屋や蕎麦を栽培している農家の記事しかなかった。
一般資料の開架と書庫の「383.8」辺りの蕎麦や麺類に関する資料を手当たりしだい見たが、やはり記述はなかった。
『蕎麦辞典』の「わんこそば」の項目に、「研究家・故新島繁氏」という名前があったので、新島氏の著書を見たが、やはり記述はなかった。
能登半島の麺類としては、『輪島市史 通史編・民俗文化財編』p275-285に「輪島素麺」に関する記事がある。
NDLサーチで「能登 そば」をキーワードに検索したところ、高桑守「漁撈民俗の伝承主体に関する考察」(博士論文)がヒットした。目次の中に「ダンバライ講とソバ講」があり、これを更にGoogleで検索して、「加能民俗研究」1p10-18「〈ダンバライ〉と〈ソバオコウ〉-口能登漁村の講行事-」が出てきた。
論文を確認したが、「そばを食べる」ということは書かれていたが、食べ方は書かれていなかった。
「ソバ講はまず読経の後西念寺住職により御消息が読まれ、その後蓮如上人につなみ手打蕎麦を食べ、参加者全員で酒を共飲して散会する。」(p17)
Google書籍で「能登 岩手 そば」をキーワードに検索したところ、あんばいこう著『食文化あきた考』(当館未所蔵)p64がヒットした。
「いわゆる庶民の知恵というやっで、肉食を禁止された農民がウサギを 1 羽 2 羽と数えて
「ウサそこで庶民は、そば粉をちぎって「 ... (小さないれもので何杯もお代わりする)では
なく、瀬戸内や能登地方でもみられたもののようで岩手のわんこそばにっいてはル?ッ ...」(原文ママ)
更にキーワードを次々Google書籍で検索したところ、同じく『食文化あきた考』p64の以下の文章がヒットした。
「ひとわんの分量が少ないので給仕が客の肩越しに付き、なくなると肩越しからそばを投げ込む。このゴスンでそばを何杯もお代わりをする。このお代わりのことを「サイメン」(再?? )といい、たい容器である。変わっている。ゴスンと呼ばれる塗りの「大平わん」で、 ...」(原文ママ)
『日本国語大辞典 第5巻 第2版』p1341に「サイメン」の説明があった。
「さい-めん【再麺】〔名〕方言①蕎麦(そば)など、めん類のお代わり。また、それを次々に勧めること。青森県三戸郡083 秋田県鹿角郡132 ②食べ物のお代わり。岩手県気仙郡102 ◇さいめ 岩手県気仙郡100 102」
北國新聞データベースで「わんこそば」をキーワードに検索したところ、以下の記事があった。
「北國新聞」2012年11月02日(金)朝刊25頁
見出し:白峰のおろしうどんを提供 雪だるまの里協議会 白山市
本文:白峰雪だるまの里協議会のイベント「や~うま!しらみね」の「おろしうどん番・堅豆腐のおから番」は1日、白山市白峰地区の雪だるまカフェなど3店で始まった。
おろしうどんは、しょうゆであえた大根おろしと油揚げをのせた冷たいうどん。白峰では冠婚葬祭の後、参列者へ感謝を表すため、わんこそばのように次々とお代わりを注いで振る舞う風習がある。同カフェでは堅豆腐のおからとともに1人分900円で販売した。4日まで。
「北國新聞」2011年11月05日(土)朝刊37頁
見出し:郷土料理のおろしうどんを味わう 白山市白峰地区で「や~うま!」
本文:白山市白峰地区の飲食店などが郷土料理を期間限定で提供する「や~うま!しらみね」の「おろしうどん番」は3日、同地区で始まり、観光客らはわんこそばのように次々とお代わりがつがれる白峰独特のおろしうどんを味わった。白峰特産品販売施設「菜さい」など3店で提供する。6日まで。白峰のおろしうどんは、大根おろしをのせた冷やしうどんで、同地区の冠婚葬祭などで振る舞われる。
輪島等能登地方の図書館に問い合わせたところ、このような風習は確認できなかった。
笠松一夫氏は、福井県にゆかりのある人物ではないかと思われる。福井県は蕎麦が名物なので、福井県立図書館へ問い合わせたら何かわかるかもしれない。
- 事前調査事項
-
『そば風土記』植原路郎著
『そば物語』植原路郎著
『蕎麦辞典』植原路郎著
『日本料理技術選集 32 そばの本』植原路郎共著
『日本の食生活全集 聞き書 石川の食事』「日本の食生活全集 石川」編集委員会
『石川県史 現代篇 第3』石川県
- NDC
-
- 風俗習慣.民俗学.民族学 (38 9版)
- 参考資料
-
- 1 輪島市史 通史編・民俗文化財編 輪島市史編纂専門委員会∥編 輪島市 1976 K214/4/7 p275-285 「輪島素麺」
- 2 加能民俗研究 / 加能民俗の会 通巻1号 加能民俗の会 p10-18 高桑守「〈ダンバライ〉と〈ソバオコウ〉-口能登漁村の講行事-」
- 3 食文化あきた考 あんばい/こう?著 無明舎出版 2007.7 383.8124 p64 ※当館所蔵なし
- 4 北國新聞データベース 2012年11月02日(金)朝刊25頁、2011年11月05日(土)朝刊37頁 確認日:2013-06-08
- 5 白峰雪だるまの里協議会ホームページ(http://homepage3.nifty.com/yukidaruma-club/yukidarumacafe.html) 確認日:2013-06-08
- キーワード
-
- 岩手
- わんこそば
- 能登半島
- 蕎麦
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 図書館
- 登録番号
- 1000136311