レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 20111011
- 登録日時
- 2011/11/17 02:01
- 更新日時
- 2011/11/18 09:42
- 管理番号
- B2011口頭1011
- 質問
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解決
次亜塩素酸イオン(hypochlorite ion)(ClO-)のギブスエネルギーを知りたい。
- 回答
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ご照会の事項について以下のとおり回答します(【 】内は当館請求記号です)。
資料によって、ギブズエネルギーまたはギブスエネルギーと表記が異なりますが、『標準化学用語辞典』【PA2-H47】「ギブズエネルギー」(p.156)と『法則の辞典』【M2-H106】「ギブスエネルギー」(p.82)の項目名の英訳は、どちらもGibbs energyとあります。このことから、ギブズエネルギーとギブスエネルギーは同一のものであると考えられます。
また、『和英化学用語辞典』【PA2-J17】によると、ギブズエネルギー(Gibbs energy)の同義語として、ギブズの自由エネルギー(Gibbs free energy)、ギブズ関数(Gibbs function)または自由エンタルピー(free enthalpy)とあります。(p.109)
次亜塩素酸イオンのギブズエネルギー(ギブスエネルギー)または上記の別名について記載している資料(1)-(5)がありましたので、ご案内します。
(1)『化学便覧.基礎編 2』(改訂5版 丸善 2004.2 【PA2-H22】)
pp.II-313~II -314に、「表 10.139 水溶液中におけるイオンの標準生成エンタルピーおよび標準生成ギブズエネルギー(298.15K)」を掲載しています。
ClO-はp.II-314に記載しており、標準生成ギブズエネルギーは-36.8 kJ/molとあります。
(2)『化学熱力学選定データ集. 上巻』(堀越研究所 1976.7 【MC2-45】)
無機化合物と炭素原子2個以下の有機化合物について、298.15Kにおける生成エンタルピー、生成ギブスエネルギー、エンタルピー、エントロピー、熱容量と、0Kにおける生成エンタルピーを表にまとめた資料です。
ClO-はp.25に記載しており、生成ギブスエネルギー(ΔGf°)は、-8.8 kcal/mol(水溶液)とあります。
(3)『常用化学定数表』(第3版 広川書店 1989.5 【PA2-E29】)
pp.44-46に、「4.4 標準生成エンタルピーΔHf°および標準生成GibbsエネルギーΔGf°(298.15K)(水溶液中でのイオン)」を掲載しています。
ClO-はp.45に記載しており、標準生成Gibbsエネルギー(ΔGf°)は-36 kJ/molとあります。
(4)『CRC Handbook of Chemistry and Physics』(91st ed. CRC Press 【Z63-C694】)
「Thermodynamic Properties of Aqueous Ions(水溶液中におけるイオンの熱理学的性質)」(pp.5-66~5-67)では、25℃、100kPaにおける標準生成ギブズエネルギーなどを掲載しています。
次亜塩素酸イオンはp.5-67に記載しており、-36.8kJ/molとあります。
(5)『Lange's handbook of chemistry』(16th ed. McGraw-Hill c2005 【PA2-B22】)
pp.1.237~1.279に、「TABLE 1.56 Enthalpies and Gibbs Energies of Formation, Entropies, and Heat Capacities of the Elements and Inorganic Compounds(元素と無機化合物の生成エンタルピー、生成ギブズエネルギー、エントロピー、熱容量)」を掲載しています。
ClO-はp.1.246に記載しており、生成ギブズエネルギー(ΔfG°)は、-36.8 kJ/mol、(水溶液)とあります。
(6)『Gmelins Handbuch der anorganischen Chemie』(8. aufl. Springer-Verlag 1924- 【PA1-2】)
Nr.6, Erg.-Bd. Tl.B Lfg.2(Nr.6,Erg「E」anzungsband T.B,Lfg.2)のpp.395-406に、ClO-の物性値と参考文献などを掲載しています。物性値の一つとして、自由エンタルピー(ΔG)もあります。
『Gmelins Handbuch der anorganischen Chemie. Erganzungswerk』(8. aufl. Springer-Verlag 193u- 【PA1-2】)Nr.6, Erg.-Bd. Tl.B Lfg.1(T. B, Lfg. 1:Nr. 6)のp.38に、ΔG の説明として、"freie Enthalpie ΔG "とあります。
なお、資料によってギブズエネルギー(ギブズ自由エネルギー、自由エンタルピー)、生成ギブズエネルギー、標準生成ギブズエネルギーと表記が異なります。『標準化学用語辞典』【PA2-H47】によると、
「生成ギブズエネルギー」(p.355)
"ある物質が生成する化学反応で生じるギブズの自由エネルギー"
「標準生成ギブズエネルギー」(p.565)
"標準状態(1atmもしくは100kPa)で、ある物質1molがその成分元素の単体物質から生成する反応に伴われるギブズエネルギー変化"
とあることから、測定時の条件によって表記の仕方が変わるようです。
調査済資料・データベース
・『化学辞典』(第2版 森北出版 2009.12 【PA2-J31】)
・『化学大辞典』(東京化学同人 1989.10 【PA2-E25】)
・『化学大辞典』(縮刷版 共立出版 1963-1964 (第34刷:1993.6) 【PA2-G24】)
・『無機化合物・錯体辞典』(中原勝儼著 講談社 1997.6 【PA2-G23】)
・『電気化学便覧』(第5版 丸善 2000.6 【PA2-G65】)
「表2.21 水溶液の熱力学的性質」(pp.62-64)で、水溶液中のイオンおよび非解離分子の標準状態における生成ギブズエネルギーなどを掲載していますが、次亜塩素酸イオンは記載していません。
・『Dictionary of inorganic compounds』(1st ed. Chapman & Hall 1992- 【PA2-A100】)
・『Kirk-Othmer encyclopedia of chemical technology』(5th ed. Wiley-Interscience c2004-c2007 【PA2-B16】)
・『Handbook of inorganic chemicals』(McGraw-Hill c2003 【PA2-B9】)
・『Chemical properties handbook』(McGraw-Hill c1999 【PA2-A137】)
・『Thermochemical data of pure substances』(VCH c1989- 【PA2-A77】)
・『JANAF thermochemical tables』(3rd ed. American Chemical Society c1986 【PA2-A98】)
・『CODATA key values for thermodynamics』(Hemisphere Pub. Corp c1989 【PA54-A3】)
・『Thermodynamic data for pure compounds』(Elsevier 1986 【PA2-208】)
・『International critical tables of numerical data, physics, chemistry and technology』(Published for the National Research Council by McGraw-Hill 1926-1930 【530.83-N277i】)
・『Thermal constants of substances』(John Wiley c1999 【M213-A45】)
・『Landolt-Bornstein New Series』(Springer 1961- 【M5-B1】)
・理科年表プレミアム(当館契約データベース:館内限定)
「2011:物理/化学部:水溶液中のイオンの標準生成エンタルピー、標準生成ギブズエネルギーおよび標準エントロピー」を収録していますが、次亜塩素酸イオンは掲載していません。
・Reaxys(当館契約データベース:館内限定)
データベースの最終アクセス日は、2011年11月14日です。
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
-
- 無機化学 (435)
- 参考資料
- キーワード
-
- ギブズエネルギー
- ギブスエネルギー
- Gibbs energy
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000096755