レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2021年06月13日
- 登録日時
- 2021/06/17 15:53
- 更新日時
- 2021/06/24 12:21
- 管理番号
- 県立長野-21-040
- 質問
-
未解決
教育学者の澤柳政太郎(サワヤナギマサタロウ)(1865-1927)の教養主義教育について知りたい。
著書かもしれない。
- 回答
-
当館所蔵の澤柳政太郎に関する資料の中に、「教養主義教育」というタイトルの著書は確認できなかった。
国立国会図書館サーチ、CiNiiBooksでも検索するが、澤柳政太郎の著書としての「教養主義教育」というタイトルの著書は確認できなかった。
澤柳政太郎についての、当館所蔵資料を紹介する。
『ダルトンの谺 近代教育の先覚・澤柳政太郎の生涯』今田述著 文芸社 2012【N289/サワヤ】
『澤柳政太郎 随時随所楽シマザルナシ』新田義之著 ミネルヴァ書房 2006【289.1/サマ】
『吾父澤柳政太郎』沢柳礼次郎著 富士房 1937【N289/サワヤ】
『吾父澤柳政太郎 伝記・澤柳政太郎』沢柳礼次郎著 大空社 1987【N289/サワヤ】
『教育功労者列伝』信濃教育会編 信濃教育会 【N370/10】0
また、澤柳政太郎の教育に対する考え方について、以下を紹介する。
『世界教育学名著選 22』梅根悟 責任編集 明治図書 1974【370.8/セカ/】沢柳政太郎 実際的教育学
p198-p199 沢柳政太郎の人と業績(解説)
「一九二〇年四月、機関誌「教育問題研究」が創刊されると、沢柳は多忙のなかで没年に至るまで
ほとんど毎号執筆した。(中略)「学校は真理が行われ、道徳が通り、又美的なところでありた
い。」「学生は真理と道徳とをあくまで尊重し、その前には従順に頭を下げなければならぬ。」
「非理や不徳はあくまで之を斥けなければならぬ。」「虚偽は真理に反し道徳に反する。ウソは
最も斥くべきものである。我が成城学園にはウソイツハリは最大の禁物である。」これは、七年
制高校の創設にあたってかれの強調した教育信条であった。」
「沢柳の教育理念をさらに端的に示すものは、かれが没年(一九二七年)の六月十一日創立十周年
記念祝賀会の席上でおこなった講演「本当の教育」(注3)に見ることができよう。」
「「………友人が新しい教育をやって居る奇抜の事をやって居るさうだと申して呉れます。これも
称讃の意味で申して呉れる人があります。これに対しても私共は新教育ではない。真の教育、本
当の教育を為さうと思って居るのである。決して新しきを追ひ、又奇抜を念とするのではない、
真の教育、本当の教育こそ私共の目標であると申します。尤も本当の教育でありましたら、それ
は何時まで立っても古嗅くなるものでない。常に新しい教育でありましょう……」
「……普通児を収容して各児童の持って生れた天分を伸ばし発育させたいのである。伸びる子
どもは伸びるだけ、遅い子供はその歩みに伴れて進んで行かせる。それは最初の趣旨書にも児童
本位の教育と力説した。児童の持前に即して教育して行く。それに適々天才が交って居れば其恵
まれた天分は十分伸ばすのであるが、天才を集め天才教育を施すのではないのであります。」
「又成城小学校の教育を目して自由教育を為しつつあると申す者がありますが、この名称も私
共の自ら唱へる所ではありません。教育や学習の基調は児童の自由なる拘束されない自発的活動
にあると信じます。故に出来るだけ児童の自由な自然な教育を尊重します。」
「成城小学校の教室の有様は一見雑然としてゐます。児童は可なり盛に私語してゐます。世の
常の学校の如く静粛に行儀よく話す声も聞へず、秩序が見るからに正しくありません。併し三十
人を一学級としている点のみ見ても教育上に何等の差支へありません。若し喧しく教育をなすに
差支がありましたら、自動の注意を呼んで静かに申すこともありますが、必要なきに唯言不動の
態度を要求しないのであります。」
「大正十一年欧米の教育視察から帰りましてダルトンプランを余程加味する事にしました。尤
も其主意は創立よりやつていたのですが、唯プランの如く組織立たなかったままです。これは児
童に可なりの自由を認めるものです。かかる点から成城の教育を自由教育と申すものがあります
が、その名称は往々にして誤解を生みますし、自由を目標としての教育ではありません。」
「……本当の教育は人間の本性と申しませうか、児童の天分、更に六つかしく申しますれば、
各自の持って生れた特性才能を啓発して行く所にあらうと存じます。如何なる方向に伸ばして行
くか、茲に広く云へば国家社会の要求、適切には我が国の要求が指針を示しませう。或は学者哲
人の説く学説や理想を参考する必要がありませう、併し今日の教育は大人が大人の考を以て、之
を必要である、斯く為すべし、斯く為すべからずと極めたものを児童に要求し過ぎる嫌が極めて
多過ぎると存じます。」
「詰め込み教育は理論上可とするものなく、実際は皆之に堕しています。私共の教育は之に陥
らぬつもりであります。あくまで自発的に自学自修自律で行かうと指導せんと力めてゐます。試
験勉強、準備教育は極力排斥します。成城小学校は十年間試験を行はず又準備教育を少しもやり
ませんでした。成城小学校の特色は親と教師と児童とが一体となってゐる事です。……茲に十年
を経過しましたが、私共は多少の満足を感じますが、本当の教育を見出して之を実施するには一
層の努力を要することも切に感じてゐます。……」」
(注3)一九二十七年六月十一日、上野精養軒において成城小学校創立十周年記念祝賀会を開い
た。「朝野の名士、学校の父兄」を招待した席上の講演である。自ら手記した草稿によ
る。「吾父沢柳政太郎」(一九三七年富山房刊)一四七~一五一ページ所載
「本当の教育」は『沢柳政太郎全集 4』沢柳政太郎著 国土社 1975【370.8/32/4】p397-399にも所収している。
国立国会図書館デジタルコレクションで「サワヤナギマサタロウ」をキーワードに検索したところ、64件ヒット。インターネット公開で閲覧可能。
CiNiiArticlesで「沢柳政太郎」「澤柳政太郎」をキーワードに検索したところ、論文が227件ヒット。
CiNiiBooksでは197件ヒット。
また、紹介した資料は相互貸借ができるものもある旨を伝える。
- 回答プロセス
-
1 当館OPACで「教養主義教育」をキーワードに検索。該当なし。
「サワヤナギマサタロウ」をキーワードに検索。ヒットした資料を確認する。
2 『沢柳政太郎全集』沢柳政太郎著 国土社 1975【370.8/32/】の10巻p517「澤柳政太郎著作目録」で
「教養主義教育」がないか探す。確認できなった。
『沢柳全集』沢柳政太郎著 沢柳全集刊行会 1925【370.8/10】で「教養主義教育」がないか探す。
確認できなかった。
『沢柳政太郎遺稿』沢柳政太郎著 冨山房 1931【370.4/104】で「教育主義教育」がないか探す。
確認できなかった。
『長野県歴史人物大辞典』神津良子編 郷土出版社 1989【N283/13】で調べる。
p342に「沢柳政太郎」の項目あり。「教養主義教育」がないか探す。確認できなかった。
3 国立国会サーチで「澤柳政太郎」「沢柳政太郎」「教養主義教育」「教養主義」などキーワードに検
索。該当なし。
CiNiiBooksで同キーワードで検索。ヒットした資料を確認するが、当該事項に関する資料は確認でき
なかった。
(最終確認2021年6月17日)
4 上記質問は質問者から調査相談を受けた機関からの調査依頼であったため、
質問内容について、調査相談を受けた機関に電話で確認したところ、必ずしも著名であるとは限らない
とのこと。
澤柳政太郎の教育に対する考え方について知りたい、という質問である可能性もある。
5 「教養主義」について『日本国語大辞典 第4巻』小学館国語大辞典編集部編集 小学館 2001
【813.1/シヨ/4】で調べる。
p500「教養主義」の項目に、「学問や知識を重んじる考え方」とある。
6 調査の方向を澤柳政太郎の教育に対する考え方に切り替え、調査を再開。
1で検索してヒットした資料を確認する。
『世界教育学名著選 22』梅根悟 責任編集 明治図書 1974【370.8/セカ/】沢柳政太郎 実際的教育学
p198 沢柳政太郎の人と業績(解説)を見つける。
7 国立国会図書館デジタルコレクションで「サワヤナギマサタロウ」をキーワードに検索。
64件ヒット。
インターネット公開で閲覧可能の旨伝える。
2で紹介した資料『沢柳全集』『沢柳政太郎遺稿』もインターネット公開されている。
(最終確認2021年6月17日)
8 調査資料は相互貸借ができるものもあるため、その旨を伝える。
- 事前調査事項
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レファレンス協同データベース、成城学園教育研究所ホームページ
- NDC
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- 個人伝記 (289 10版)
- 教育 (370 10版)
- 参考資料
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今田述著 , 今田, 述. ダルトンの谺 : 近代教育の先覚・澤柳政太郎の生涯. 文芸社, 2012.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000096-I007295800-00 , ISBN 9784286129068 -
新田義之 著 , 新田, 義之, 1933-. 澤柳政太郎 : 随時随所楽シマザルナシ. ミネルヴァ書房, 2006. (ミネルヴァ日本評伝選)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000008197145-00 , ISBN 4623046591 -
沢柳礼次郎 著 , 沢柳, 礼次郎. 吾父沢柳政太郎. 富山房, 1937.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000000726777-00 -
沢柳礼次郎 著 , 沢柳, 礼次郎. 吾父沢柳政太郎 : 伝記・沢柳政太郎. 大空社, 1987. (伝記叢書 ; 3)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001887704-00 -
信濃教育会 編 , 信濃教育会. 教育功労者列伝. 信濃教育会, 1935.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000000745274-00 -
沢柳, 政太郎, 1865-1927. 沢柳政太郎全集 第10巻 (随想・書簡・年譜・索引). 国土社, 1980.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001452796-00
-
今田述著 , 今田, 述. ダルトンの谺 : 近代教育の先覚・澤柳政太郎の生涯. 文芸社, 2012.
- キーワード
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- 澤柳政太郎
- 沢柳政太郎
- 教養主義教育
- 教育
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介 所蔵調査
- 内容種別
- 人物
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000300390