レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2016年08月13日
- 登録日時
- 2016/08/11 14:06
- 更新日時
- 2017/05/19 17:50
- 管理番号
- 長野市立長野-16-008
- 質問
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未解決
善光寺五重塔の建立と廃滅年を探している。出来たら当時の高さなども知りたい。
- 回答
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治承三年(一一七九)の火災で金堂・四面回廊など全部が焼ける
嘉禎三年(一二三七)十月十三日落慶、
文永五年(一ニ六八)三月十四日の火災で焼失、のち性定坊により再建
正和二年(一三一三)三月二十二日に焼失、
文明元年(一四六九)に慈観上人が本願(勧進)となってこれを供養したが同六年六月に焼失
高さなどは『善光寺史研究』p237に寛政八年(一七九六)諏訪の立川和四郎富棟筆の善光寺五重塔設計図(大勧進蔵)の写真があります。
再建しようとして建築不許可に終わりますが、再建しようとしていたものは、高さ十四丈余、方七間、工費見積もり一万六千両だったようです。
- 回答プロセス
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長野県史・市町村史目次情報データベース(http://misuzu-mokuji.net/)より検索。
『長野市誌 第四巻』に「まぼろしの五重塔」の項があるのが分かったので資料をあたる。
p607にて「善光寺五重塔は、史料上、嘉禎三年(一二三七)の落成をはじめとして、焼失、再建を繰り返したことが知られている」とある。
参照に『善光寺史研究』(小林 計一郎)があったことからそちらも確認する。
『善光寺史研究』(小林)p236~238 「七 境内諸堂」の項に「五重塔」あり。また、p973-1064に年表あり。
それによると、
・嘉禎三年(一二三七)十月十三日落慶、大勧進は浄定上人(十王堂造立者)、
・文永五年(一ニ六八)三月十四日の火災で焼失、のち性定坊により再建
・正和二年(一三一三)三月二十二日に焼失、
・文明元年(一四六九)に慈観上人が本願(勧進)となってこれを供養したが同六年六月に焼失
その後安永八年(一七七九)に大勧進香雲が五重塔の再建を出願したが、天明ニ年(一七八ニ)回国開帳(巡行開帳)の最中越後十日町で亡くなった。
同年十月に等順があとを継ぎ回国開帳を続行し、その収入で五重塔を再建することを出願して許可を得た。
諏訪の宮大工立川和四郎富棟に依頼して立川流の設計図が完成、大勧進に現存。高さ十四丈余、方七間、工費見積もり一万六千両。
しかし寛政十三年(一八〇一)三月、古礎不分明という理由で不許可になり資金は大勧進の祠堂金に繰り入れられた。徳川氏の時代になってから焼失した伽藍などは徳川氏の責任で復興するが、それ以前になくなっている建物などの再建は認めないという趣旨であったという。
p178-179で善光寺火災の一覧と、p168からそれぞれの火災の解説がある。
嘉禎以前の治承三年(一一七九)の火災で金堂・四面回廊など全部が焼けており、その後嘉禎年に塔が復興がされている記述があることから、塔は平安末期頃には存在したのではと考えられる。
p743、744には文書として建久ニ年(一一九一)~建長五年(一二五三)『吾妻鑑』にみえる善光寺造営記事の解説が載っている。
『善光寺大紀行』p45-56「中世善光寺の伽藍」では、p48に『善光寺縁起』巻四「文永炎上以後堂塔建立之次第」について書かれており、この「文永」は誤りで治承三年の火災後の造営記事が混入したとみられる、とある。
『善光寺に五重塔を!』p23-26にも、五重塔建立の歴史が整理されている。
『善光寺史研究』(善光寺史研究会)p55-56 五重塔の項あり。
「芋井三寶記・五重塔の條に曰く 書紀敏達天皇十四年に馬子大臣の塔を大野邸北に起られしことみえてその塔いかなる塔かはしらねどこれを造塔のはじめといふべし我寺皇極天皇創建ましましけるとき宝塔とのみみえて五重塔か又多宝塔か知るべきよしなし治承炎上の後は嘉永三年丁酉十月浄定上人大勧進にて五重塔供養のよし東鑑に云々(後略)」
『信濃史蹟 下』p23では、「常行堂、法華堂、五重塔の如きは上世の伽藍に付属したるものなること舊記に見えたれど、今以って猶重健の沙汰なきは遺憾と伝ふべし」と記しているが、この舊記がどのようなものかは記されていない。
これ以上の事が調べられなかったため、以上をもって案内とした。
<その他参考にした資料>
『新編 信濃史料叢書 第一巻』(信濃史料刊行会 1974)
「善光寺縁起」文永炎上以後堂塔建立之次第
『長野 第121号』(長野郷土史研究会 1985)
湯本軍一「北条氏と善光寺」史料209
- 事前調査事項
- NDC
- 参考資料
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- 『長野市誌 第四巻』長野市誌編さん委員会/編集 長野市 2004,01 <N213ナ4> (p606~(まぼろしの五重塔))
- 『善光寺史研究』小林 計一郎/著 信濃毎日新聞社 2000.05 <N181コ> , ISBN 4-7840-9856-9
- 『善光寺に五重塔を!』中村 仙之助/著 郁朋社 2011.09 <N180ナ> , ISBN 978-4-87302-491-2 (p23-26)
- 『善光寺史研究』善光寺史研究会/編 公友新報社 1922.04 (p55-56 五重塔)
- 『信濃史蹟 下』 福山 嘉久/著 信濃新聞 1912 <N292フ2> (p23 10行目に五重塔の記載)
- キーワード
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- 善光寺
- 五重塔
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000195754